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12 【五人目】


【五人目】




「そうだ・・・見せてよ・・・アル君の竜をさ・・・」

「・・・」



アルは焦点を無くしたような目となった。

不幸中の幸いと言うべきか、リオンがアルに抱きついているため彼女からはアルの汗いっぱいの顔は死角となっている。

リオンの後ろでアイラが必死に腕を使って罰の字を作って、「言っちゃダメ」とサインを出している。

最初その腕の形が十の字に見えたので、アルの頭は更に真っ白になり困惑したように首を捻り続けていた。

アイラは腕の組み方の間違いに気付き、慌てふためいた後ようやく×の字の形に直した。

絶えずリオンの腕はアルに密着したままなので、アルが首を動かす様子もリオンには見えない。


「なんで教えてくれないの・・・?」

「いや・・・別にぃ・・・ほらぁ・・・。秘密主義者なんだ、僕・・・」


見苦しい言い訳だったが今のアルにはこの一言が精一杯のようだった。

アイラも首を横に振りながら腕を上に挙げたり横に振ったりして取り乱している。

アルはアイラを見ずにリオンの返事を待つことに決めた。


「へぇ・・・そうなんだ。いるもんなんだね、珍しい人って。私だったらいつでも見せるってのに。竜って格好良いじゃん? 見せるのが普通でしょ」


リオンはしらけた顔をしてアルの体から離れた。

アルもアイラも安堵のため息を一斉に吐き、崩れるように腰をおろした。


「“マルシア”ならいつでもどこでも竜になるってのにね」

「え?“マルシア”?」


アルは初めて聞く名前に首をかしげた。

でも何故かアルはその“マルシア”という人物が想像できた。

きっとこの人も、竜の子供なのだと。

そしてこれで、竜の未成年者の生き残りの全員となるのだ・・・と。

「アルー? マルシアはね、私たちと同じ未成年なんだよ!」

案の定。アルの表情に笑みが浮かんだ。

アイラ、レイラ、フレイ、リオン、マルシア。

これで未成年者が 五人目 となる。

アルと同世代の《仲間》に全員と会うことになるのだ。


「たぶん今頃、マルシアは“カマトル”さんのところにいるのかなー」


“カマトル”という名前は聞いたことがあった。

紛争に生き残った幼き五人をたった一人で育てたという、恩師。


「アルくんもいることだし、行くことにする? いや、行こう!」

「そうだね、この山の案内も含めて!」

「・・・うんッ・・・!ありがとぉ・・・!楽しみだぁ・・・!」




外に出ると、やはり豊かな自然が広がっていた。

名所や絶景を幾つもアイラとリオンに教えてもらったが、どれも絶景に見えるからアルは興奮したままだった。

そして着いたところは、大きな湖であった。

湖は円の形をしていて、円の中心を通る一本の路があった。

その道をアイラとアルは歩き、リオンは面倒くさいからと竜になって飛んでいった。

道の行き止まりは円の中心部。

そこには一軒の建設物。

家というよりは施設のようである。


「やっと着いた」


リオンはまだ歩いているアルとアイラを差し置いてドアをノックした。

反応は無し。

もう一度ノックをする。

またもや反応無し。


「あれ?おかしいな。今日はマルシアがカマトルさんのところに行くって言っていたのになぁ」

「いつ聞いたの?それ」

「アイラちゃんの家に行く途中でマルシアに会ったのよ、『今日は手伝うんだー』って張り切ってた」

「どうするのぉ・・・?」

「アル君、じゃぁ中に入ってきてよ」

「えぇ・・・!?どうやって・・・?」

「見てよ。定番じゃない。ノックしても反応が無い家といったらさ」


リオンはアルの背中を押した。

恐る恐るアルの手がドアノブに近付き、そして握った。


キュゥッ・・・


「鍵が閉まってないぃッ・・・!」

「私の記憶だと、カマトルさんはいつもこう言ってたわ。【絶対に鍵と心の扉は閉めなさい】って」

「じゃぁ・・・おかしいじゃない・・・」

「は・・・入るのぉ・・・?」

アルの震えた声が、この空気に緊張感を与えたように思えた。

しかしリオンの声は明るく、興奮に満ちていた。そして・・・


「入るしかないじゃない」

「そうだね!うんっ!」


アイラも軽い気持ちで同意したようだった。

不法侵入だけど入るしかないな、とアルも渋々諦めた。


「じゃぁアル君から入ってよ」

「えぇっ!?」




キィ・・・・




アルを先頭に3人は顔を覗かせた。




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