四話 現象
一瞬にして怪しい影は宙に溶け、
博麗神社には静かな空気が流れていた。
(な、何なんだよこれは・・・)
ユウトは声すら出せずにいた。
やはり先ほどまで話をしていた少女達が
普通の人間ではないことは感じ取ってはいたが、
これほどまでとは思ってもいなかった。
もう既に日は落ち、あたりは暗く静かになっていた。
あの後、巫女服の少女から部屋を借りたユウトは、すぐさま
布団に潜り込み、目を瞑った。
(僕は悪い夢を見ているんだ・・・きっとそうだ・・・。)
そう言い聞かせ、次の日を静かに待つのであった・・・。
「・・・さすがにやりすぎたかな?」
あの“ちょっとした”騒動の次の日。
魔理沙と霊夢は居間でお茶を飲んでいた。
「でも仕方ないんじゃない?あの影からは確実に何かを感じたわ。」
霊夢は横目で少年の寝ている部屋の扉を見た。
もうお昼時だが、いまだに彼は姿を見せない。
おそらく部屋にはいるはずだが、
異性の部屋の扉を開ける勇気は彼女にはなかった。
そもそも彼女達はほとんど異性と関わったことがないのだ。
そのため、魔理沙は大丈夫だが、霊夢は昨日もユウトには
ほとんど話しかけることができなかった。
「大丈夫かな・・・・。」
彼女は手の前で両手を合わせ神頼みをした。
一方少年は既に博麗神社を後にしていた。
理由は既に言うまでもなく昨日の一件からだ。
彼女達は明らかに自分とは違う。
それに、いくら記憶を無くしているとはいえ
いつまでも他人に頼るのは嫌だったのだ。
「でもなぁ・・・」
既に3時間以上歩き続けているが、周りは
畑やなんやらで民家を一軒も見つけられていない。
こんなとき空を飛べたら、と太陽を見るがすぐに首を横に振る。
(いや、もう超常現象とはおさらばだな。)
既に彼の頭の中ではトラウマになりかけている
昨日の記憶を忘れようと意識を他の事に向けてみる。
(なぜ、俺は幻想郷にいるんだろう・・・?)
いや、ダメだ。気持ちがブルーになっていく・・・。
(なぜ、彼女らは空を飛べるのだろう・・・?)
いや、ダメだ。考えてもきりがない。
(なぜ、自分は記憶を無くしているのだろう・・・?)
いや、ダメだ。記憶をなくしているから美味く考えられない・・・。
(結局、なんだったんだこれは・・・・・・。)