表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒツジさんの執事さん  作者: 美琴
第二章
56/67

54・再会




 年が明け、徐々に過ごしやすい気候になり、雪も融け始める。春の足音が聞こえつつある今日この頃。

 来年……というか今年はもう、3年生か。

 長いような短いような。若いうちの3年は長いのかもね。

 大人になるにつれて時間の経過は早く感じると言うが、あたしも頭の中身は若くなっているのだろうか。相応に、長くも感じた気がする。

 ……という考えを持っている時点で、脳内が若者では無いのは自覚している。


「もう、王都に来てから3年目になるのね」


 お嬢様も、同じ感情をお持ちのようだ。

 自室での夕食の後、紅茶を飲みながらふと、そんな事を口にした。


「そうね。最後の最後に油断して卒業し損ねる、なんて事にならないように頑張りましょ」

「本当にね! ……それは、解ってるのだけれど。ねえ、マリヤ」

「うん、なあに?」

「考えてみたら、わたしほとんど王都の観光、してないわ」


 ……。そういえば、そうか?

 日常の買い物はあたしがしてるし、休日は殆どサンセさんやポーラ様、時には他のお嬢様がたとお茶をしているのは確か。

 とはいえ、夏の長い休みの時は課題がたっぷり出るし、そもそも暑い時にメルルは外に出たがらない。

 思えば、何故秋休みの時に遊びに行こうと言わなかったのか。

 ……下手に外に出ると、お菓子が食べられなくなるから、ではないと思いたい。


「言われてみればそうね」

「でしょう! 別に都会へのあこがれがそんなにある訳でもないけれど、綺麗な場所だってあるのよね? 帰る前に、一度は見ておきたいわ!」

「解ったわ、じゃあ今度のお休みに観光に行きましょう。サンセさんも誘うわよね?」

「もちろん! あ、あとエルミンもね、王都育ちだから案内してくれそうだし」

「ええ。……レオンやポーラ様も誘っても?」

「大騒ぎになっちゃいそうだけど、だからって退け者にはしたくないわよね」

「……まあ、レオンは大丈夫だろうけど」

「そうなの?」


 もう、自身の毛皮の色替えについては、数時間くらいなら持続できるそうだ。さすが王子様、努力家でいらっしゃる。

 時折、ヒトの目のない所で解除し、休息を取れば大丈夫だろう。

 問題は、同じレベルで目立つであろうポーラ様だが……

 彼女もまた、『普通』に憧れるご令嬢である。こっそり変装して友達とお忍びなんて、魅力的過ぎてどうにかしてしまいそうだ。レオンよりは変装のハードルも低い。だってシロクマは白いモンだからな!

 ……ただ、当然のようにこっそり護衛はつくだろうが、そこは仕方ないので、気にしないでおこう。安全には代えられないし。

 あたしはどーしてもいざという時は、メルルを優先しちゃうからね。


「じゃ、どこへ行くか、明日にでも相談しましょうね」

「ええ! 他のコ達にはナイショで、ね」


 特にご令嬢達に漏れると、激しく面倒だろうからね!







 観光というものは、そもそもある程度の身分のヒトがするものだ。

 金や時間が余ってなければ、気軽に遠出なんて出来るモンじゃないからね。

 勿論、中には見聞を広める為だか単なる趣味だか、出たとこ勝負の着の身着のまま旅をするヒトだって居るし、街を点々とする吟遊詩人だって存在しているが、それは観光とは違うだろう。

 つまり、きゃっきゃと子供達が観光気分でそういうスポットに馬車で乗り付けても、大して目立つ訳ではないのだ。

 春が近づいてきた昨今、そういう貴族も多いのだから。


「凄いわ、王都は教会も豪華なのね! ステンドグラス、綺麗だったわ!」

「そうでしょう。わたくしも家族も皆あの美しさが気に入っておりますの。礼拝の際は必ずここと決めておりますのよ」

「す、すてき、でした…! あんな凄いもの、アイルリーデ領では、見られません、もの…!」


 今しがた、美しく色とりどりのガラスで彩られたステンドグラス、そこから降り注ぐ光を堪能してきたお嬢様がたはきゃっきゃとはしゃいでいる。

 結局、王都観光ツアーはポーラ様のおうちの馬車(お忍び?用なのだろう、公爵家にしては地味なほうの馬車である)でめぐる事になった。

 服装は全員制服。下手に地味な服で変装するより、たぶん貴族であろう学生を装った方が、目立たないし周囲も察してくれるので気が楽だ。

 もちろん、身バレしたら心底大騒ぎになるレオンだけは、白から黒へのカラー変更を行っているが。馬車の内部では解除し、休憩して。

 …茶ライオンにすればもっと目立たないのかもだが、バッタリオルミガさんやユトゥスさんに会った場合を考えれば、黒が最も安全であろう。


「やはり、女性はああいった物を好むのだな」

「おや、レオンはお好みではありませんか?」

「嫌いではないぞ、美しいとも思う。…ただ、どうしても単純な美しさよりも、その職人の腕や、作業の工程の想像に行ってしまってな」

「ああ、解ります解ります。綺麗だなーの次に、どうやって作ってるんだろう、になりますよね」


 その辺は、男の子ゆえなんだろうな。

 レオンもエルミン君も、美しさへの感動もそこそこに、そこに至るまでの経緯や作ったヒトへの敬意と興味になってしまう。解らないでもない。

 ……ん? 同じ思考をしているあたしは、やっぱり脳内が女性では、……いや、やめよう。


「というか、こういう観光案内は、僕よりもポーラ様のほうが向いてますね」

「ここの教会はご存じなかったのですか?」

「いえ、知ってはいましたけど……。こういう厳かだったり華やかだったりする場所って、どうも気後れするというか……礼拝の時も、家の近くの教会でしたし」


 あー、そうか、ここは身分の高い貴族向けの教会なんだね。別に観光として公開も、してはいるようなんだけど。地元のヒトは逆に入りづらいのかな。

 メルル向けの観光としては、ポーラ様のほうが適しているのは確かかも。

 一応観光案内にって名目で誘った手前、ちょっと申し訳ないようだ。

 それがなくたって、一緒に皆で遊びたいってのはあるんだけどね。


「そういえば、そろそろお昼よね、マリヤ?」


 しばしキャッキャとステンドグラスの話をしていたメルルが、パっと思い出したようにこちらを見る。

 確かに言う通り、お日様はすっかり真上に来ている。

 そろそろ、昼食時だろう。

 どこかのお店で食べるという提案もあったのだが、あたしのお弁当、とデザートが食べたいという希望が多かったため、今日もお弁当持参になった。今は馬車の中に置いてもらっている。


「どこに致しましょうか。あまり、ヒト目のない場所が良いですわね」

「そうだな。そうして貰えると、助かる」


 食事時くらい、レオンも色替え解除して落ち着きたいわよね。

 うーん、街中でも人目のつかない場所か。


「エルミン君、そんな感じの公園のようなものって、ありませんかね?」

「あ、でしたらここから少し行った場所に、広い緑の公園がありますよ。周辺に木もあって程よい目隠しになっていますし、ベンチもあった筈です」


 それこそ、そういう足で訪れる場所はエルミン君の方が詳しい。

 お嬢様の移動は、基本馬車だからな。緑を楽しむ散策だって、ポーラ様の場合はご自宅内に広い庭とかありそうだ。

 敷物があるとはいえ、やんごとない身分の皆を地面に座らせるのはアレだし、……いや、日常的にそうしてるけど学園内でのコトだからそれはそれとして。

 座れる場所もあるなら、それがいい。


「でしたら、そこに行ってみましょうか。宜しいですか?」

「ええ、エルミンさんの紹介でしたら、安心出来ます」

「……おーい」

「そうね、なんだかんだで、エルミンは物知りだし、しっかりしてるもの」

「は、はい、そうです、よねっ」

「あ、ありがとうございます。そう褒められると、その、恐縮です……」

「おーい、…おーいってばー!」

「もっと自信もって良いと思いますよ。では、案内お願いしますね、エルミン君」

「おおおおいいってばーーーー!! こっちむけーーー! まーーりーーやーーーー!!!」


 ……、うん?

 まさか、街中の、しかも貴族率100%のこの集まりを、『おーい』で呼ぶ人もいないだろうと思ってスルーしてたが、名指しで呼ばれたのはあたしだった。

 というか街中であたし達を呼び止めるのなんて、オルミガさん・ユトゥスさん・グイノス先輩、くらいしか思いつかなかったし、その人らも『おーい』では呼ばないだろう。

 最大考えて、あるとしたらリシッツァ先生くらいか。

 それはさておき、呼ばれたので振り返ると、大きく手を振りながら、人の流れに逆らってこっちに来ているヒトがいた。

 一度首を傾げて考えて……それから、友人に該当者が居るのだとやっと解って、頭の位置を正してあたしからも歩み寄った。


「クルウ!」

「や、やーっと気づきやがったな、こいつ、もう…」


 あたしを呼び止めたのは、懐かしい故郷の友人。牧場のネズミっ子、クルウだった。

 都会の人波に慣れてないのか、大声を出しまくったからなのか。すぐ傍に来たときには、ぜえはあと息を切らしていた。

 人の密集率はカルネイロ領の収穫祭には遠く及ばないので、後者が原因かな。


「どうしたの、なんでこ……、…ごほん、どうして王都に?」


 いかん、思わぬ相手の登場に、危うくというか、ほぼアウトレベルで素が出た。

 言い直した事に、一瞬クルウは不思議そうな顔をしたが、なんとなく察したのか、…察したかな? とりあえず、追及はしなかった。


「今年から、父ちゃんの手伝いで荷運びを一緒にする事になってさ! 折角だから観光してたら、マリヤが居たからな、挨拶くらいしとくべきだろ?」

「てことは、去年はクルウのトコの牧場が優勝だったん、…ごほん、だったのですね」

「おう! いやあ、なかなかの接戦だったぜ! でも、決め手は新作のベーコンでさ、チップにすっげぇ拘ってみたんだ! オレが発案したんだぜ!」

「へえ、すごいじゃな、……、…………」

「……マリヤ、どうしたさっきから」


 あかん。

 なんていうか、自覚できる程にどうしようもないという事実に、とうとうあたしは自らの顔を両手で覆った。

 うつむいたあたしを心配したのか、離れた場所にいたメルル達まで寄ってくる。


「どうしたのマリヤ?! ちょっとクルウ! 突然出て来たと思ったら、いったい何をしたのよ!!」

「ちょ、なんでオレのせいになるんだよ?! なんもしてねーし!!」

「ちが、違うの、…じゃない、違うんです。クルウのせいではなく」


 久々だぜ、君らの喧嘩ップルっぷり。

 顔を覆ったままで、別にクルウのせいではない、と首を振る。


「だめ…。クルウ相手だと、深刻に敬語にならない……」


 気安すぎた。

 メルル相手だと、お嬢様だ! という意識がどこかにあるので、普段は普通に話していたとしても、きちんとスイッチを入れられる。

 レオン達相手も同様だ。むしろ、普段から敬語で対して居て、意識的に気を抜いて素を出している部分がある。

 だが、相手がクルウになると、素の状態で知り合って仲良くなって、何年も気の置けない遊び相手として接してきたせいなのか、敬語を使うのがむずむずするというか、むしろ素で受け答えするのが相応しいというか……

 だいたい、クルウ相手に敬語使うって何?! なんか違う!!

 執事的にはそれでいいんだけど。


「ああ……。いいんじゃない、コイツ相手に敬語なんて使わなくても」

「…いや、オレだって別にいらねぇけどさ、そういわれると腹立つぞ」

「あの、たぶんマリヤ君が問題に思っているのは、敬語を使えないという事ではなく、素の状態…女性の言葉を、街中で使う事になる、というのを躊躇っているのでは……」


 それ!! エルミン君、それなの!!

 あたしが通常の男の子っぽく喋れればそれでいいんだけど、出来ないから困ってる!!

 繰り返すが、ただでさえ目立つってのに、これ以上目立つ属性を付与したくないのだ。

 もう手遅れかもしれないが、色々な意味で。


「ところで、そちらはマリヤとメルル殿の、友人なのか?」


 ひょいと出てくる王子様。

 パっと顔を上げるクルウ君。

 たぶんだが、大声で呼びとめて駆け寄ってきた時点で、クルウはあたし……と、メルルしか目に入っていなかったのだろう。

 そしてハっと気が付くと、周囲に明らかに育ちの良さそうな少年少女がたっぷりと。

 右見て、左見て。クルウはあたし……がまだ遠い目をしているのを見ると、メルルの方を向いて、こそっと話しかける。


「……えーと。もしかして、全員、その……貴族の家の子?」

「そうね、だいたいわたしと同じ貴族科の生徒よ。マリヤとエルミンは使用人科だけど」


 貴族の家の子、という意味ではおんなじことだ。

 家の後を継ぐために学院に入ったメルルの、ご学友なのだから、まあ大抵は貴族の子になるのは自然な事だろう。

 そうじゃない友人も勿論居るが、今のこのグループはそうだ。

 果たして、その毛並みの下の地肌は青ざめでもしただろうか。パっとかぶっていた帽子を外して胸の辺りで握りしめ、がっちがちになるクルウ少年。


「しっ、しし、失礼、いたし、ましたっ! えっと、オレ、じゃない、わたしは、えっと」

「ああ、いや恐縮する必要は無い。今は単に、気楽な観光をしている所であるし、君は俺の友であるマリヤの友人であるのだろう? 楽にしてくれ」

「あっ、ありがとうっ、ございますっ」


 どの程度の貴族の子かは解らないと思うが、がっちがちになったのは間違いなく、レオンの王子様オーラと、ポーラ様の淑女オーラだろう。

 田舎の平民にだって、相手にどれだけ教養と品があるかくらいは、そこそこ解る。


「ここでお会いできたのも、何かの縁ですわ。わたくし達、これから近くの庭園で昼食をと思っておりましたの。クルウさんも、ご一緒にいかがです?」

「ぅえ!? あ、いえ、そんなまさか」

「折角久方ぶりにマリヤさんやメルルさんとお会いできたのですもの、積もる話もおありでしょう? わたくしも、是非故郷でのマリヤさんのお話を聞きたく思いますわ」


 にこにこ顔のポーラ様である。

 こういう時、フレンドリーで優しい貴族って、残酷だな……

 あたしの感覚ではよう解らんが、ポーラ様は高位貴族にして絶世の美少女だ。今でこそエルミン君もだいぶ慣れたが、初期はがっちがちで食事もままならんかった。

 ある程度貴族耐性のある彼でさえそうだったのだ。貴族耐性どころか、女性耐性もないであろう田舎の平民のクルウがどうかは……さもありなん。


「ね、お出でくださいませ。ああいえ、急なご用事がおありでしたら、無理にとは申しませんけれど……」

「い、いえ! 用事とかないですめっちゃ暇です、その、喜ん……いっでええぇぇ?!!」


 美少女のお誘いに、見事にホイホイされたクルウの足が、かなり力を込めて踏まれた。

 踏んだのは勿論。


「な、なにしやがんだ、この暴力女!!」

「うるさいわね、ポーラ様に鼻の下伸ばしてるあんたが悪いんでしょ!!」

「伸ばしてねーし!!」

「伸びてたわよ、あんなだらしない顔、わたしのお友達に見せないで貰える?!」


 始まったよ。

 ああ、あれくらい街中でも平気で自分を解放出来たら、どんなに楽だろうか。







 という訳で、ポーラ様の馬車にクルウも乗せて、お昼ご飯場所である公園にやって来た。

 涼しげな木陰に設置された、石製のベンチとテーブルについて、お弁当を広げる。

 多めに作ってきたからクルウが増えても問題ないと思うし、周辺はポーラ様の護衛が見張ってくれているだろう。よし、もう大丈夫だ。


「…マリヤ、前より飯美味くなってねえ?」

「あー、今は毎日作ってるからね。あと、色々工夫し甲斐のある食材や調味料もあるし」


 味噌とか醤油とか出汁とか。

 クルウは元々なんでも食べるいい子だから、野菜が良いとか肉がいいとかの選り好みをしない。いっぱい食べて、美味しいと言ってくれる。うん、食べさせ甲斐のある子だ。

 が、今はだいぶ大人しいというか、岩石とは言わずとも硬くなっている。

 上品にお食事をなさっているポーラ様をちらりと見ては、その隣に居るメルルにガンを飛ばされてパっと視線を逸らす、を繰り返している。

 はて、メルルのアレは、どういう意図でやってんのかな。

 クルウが可愛い子に目を奪われて腹が立つのか、それともポーラ様を変な目で見るな的な感情なのか。

 そういえばクルウはあからさまだけど、メルルの方はよう解らないな……


「マリヤ、その、ちょっと良いか」

「なあにレオン?」

「なんだ、……メルル殿とクルウ殿は、…なんがしかの、関係であるのか?」


 あ、レオンから見ても、ちょっと違う雰囲気だなとは思うようだ。

 流石ににぶい王子様でも、自分の想い人相手だと敏感になるね。


「さあ…。少なくとも、あたしが知っている限りでは2人は学校の同級生で幼馴染、以外の関係ではないと思うけど」

「そ、そうか」


 ほっとしたのか、もやっとしたのか。

 さりげなーくあたしの隣にしてメルルの隣、という座り場所をキープした王子様は複雑でいらっしゃるようだ。

 レオンが顔をあたしから離したのを見計らったのか、今度は逆隣のクルウに脇腹を肘で突かれる。


「なあに、クルウ?」

「あ、あのさ。…そっち側に居る、レオンだっけ? なんか、めっちゃイケメンじゃんか。大丈夫か? 来年、メルルちゃんとこっちに帰って来るよな?」


 エルミン君がその心配に組み込まれないのは、そっちの方で明らかにサンセさんとフラグバリ3で話しながらおべんと食べてるからだろう。

 小声でひそひそ問うてくるクルウに、腹抱えて笑いたくなったよ。


「…とりあえず、現時点で学友である、以外の関係ではないと思うし、メルルはちゃんとお父さんの後継ぎに帰ってくるわよ」

「そ、そっか。そうだよな。ちゃんとやる時はやるヤツだもんな」


 こっちは、あからさまにほっとしたようだ。

 どっちの返答にも、お互いのベクトルについては言わないけどね。言ったら途端にドロドロしそうというか、レオンとクルウだと勝ち目が……いや、うん。

 …どうかな、意外と良い勝負しちゃうかな??

 ……とりあえずまだ健全にやってるから、ほっとこう。

 相変わらず、あたし自身については棚上げです。


「ムッカ達は、どう? 元気?」

「おー、ムッカはそろそろ親方さんの助手を始めてる。全然槌を持たせて貰えないーって悔しそうにしてたけど、そんなもんだよな」

「ああ、鍛冶は完全なる専門職だもんね。料理人が皿洗いから始めるようなもんじゃない?」

「ミミィは?」

「あいつな、なんか今度は自分も王都に勉強に行く! とか言ってたぜ? なんかさ、服というか、ドレス作りたいんだってさ。自分で作った」

「デザイナー志望なのね! そうね、ミミィは小さい頃から凄くオシャレだったもの」

「だったっけか…? ……あ、そうそうそうだ、大ニュースあんだよ!!」

「え、なに?」

「オウリア先生と、ウルガさんが!!」

「?! 先生とウルガさんが?!」

「こないだ婚約したらしいんだよ!!!」

「まじでーーーーー?!」

「本当っ?! やった、ウルガさんやったじゃない!!」


 やった! やったよ師匠、頑張ったね!!

 一途な草食系狼さんは、報われたのだ……!!

 まさかの朗報に、大盛り上がりになるあたしとメルルだが、…そしてはたと気づく。


「……あ、ごめん、こっちで盛り上がっちゃって」


 地元トークは、こっちの友だちを置き去りにする。

 しかも、見事にレオン挟んでやっちまった。本当にすまない。


「いえ、お気になさらず! わたくしはマリヤさん達の故郷のお話が聞けて、とても楽しいですわ! どうぞ続けて下さいませ」

「ああ。本当に、久々な訳だしな、手紙では語り尽くせぬことも多いだろう」


 二人の人徳者の言葉が有難い。

 確かに、ちょいちょい手紙を出してたりはするけど、そう頻繁じゃないしな…。ウルガさんの話なんて最近みたいだから、手紙に書いてたとしてもまだ届いてないんじゃないか。

 やっぱり、久しぶりに会った友達ってのは特別だ。地元も大事だから、気になるし。


「んー、じゃあ王都の話するか?」

「あら、今回初めてこっちに来たんでしょ? 楽しい話題なんて持ってるの?」

「ナメんなよ! これなんか昨日聞いたばっかりの新鮮な話だぜ!! 最近な、王都の北にある墓地で、夜な夜な死んだヤツが歩き回ってるって噂が……」

「!? ちょ、待ってそれ、それはやめましょう!! ねねね根も葉もない話でしょう?!」

「いやそれがさ、見たって言うのがオレが止まってる宿の主人で……」

「やめてくださーーい!! そういうの! なしで!!」


 突如始まった、季節の早い怪談に悲鳴を上げるエルミン君。

 にやにやしているクルウは完全に話を盛ってる感があるが……まあ、怪談なんてそんなもんだよね。頑張れエルミン君。

 …ていうかクルウや、エルミン君には緊張感ないのかね……




 



 エルミン君には、おののく貴族オーラがないようである。(あるいは反応が楽し過ぎてその辺を遠くへ追いやった)


 というわけで、久々の投稿で、久々のクルウ君でした。

 クルウの牧場は家族経営でやってるので、色々お手伝いをしています。一般の子はこの年から一応一人前に数えられ始める頃。学生たちはあと一年お勉強します。

 運搬担当に名乗り出たのは、上手く行けばマリヤ達に会えるかなってのは、あったかもしれませんね。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ