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ヒツジさんの執事さん  作者: 美琴
第二章
49/67

48・文化祭 前


 例の熊っ子による暗殺(笑)未遂事件の後、ちょいちょい暇を見ては行っていた妖精魔法鍛錬を、可能な限り常時行うようにしている。

 とりあえず、常に『ちょっと力持ちさん』くらいまでのレベルだが。

 強い魔法を何度も使った方が馴染みやすいし錬度も上がりやすいのだが、そうもいかないのだ。

 ちょっと力加減を間違えただけで、ガラスが角砂糖みたいに砕けますのでね…

 でも、メルルやレオンよりはマシだ。二人の妖精魔法は、第三者から見て発動が容易に知れてしまう。どんなに弱めても、気付かれる。

 室内でそよ風が吹いてたり、不自然な光源があれば気になるだろう。それで騒がれるのも面倒だし、授業妨害とみなされても困るし。

 その点、極々微弱になら常時発動をしても普通に過ごせるあたしは良い方だろう。

 消費魔力も微々たるモンだし。

 …あ、体育の時間とかは使ってませんよ。ズルはしません。


 その辺はさておいて。

 あれ以降は平和なもので、今年の夏休みも無事に皆で宿題を終えて。

 夏が過ぎ去り暫く、秋が近づくと一つのイベントがやってくる。

 ズバリ、文化祭である。体育祭はないのに、こういうのはある不思議。

 去年も勿論あったのだが、1年生は2・3年生の出し物?企画?の手伝いやパシリをさせられ、くっそ忙しかったという記憶しか残っていない訳だったりする。

 何したっけな。夏休みの宿題発表直後だったから、学者科の先輩方に引きずられて行って、所属しても居ない授業の生徒主催のアシスタントさせられた…ような…?

 ま、その辺はいいや。

 2・3年生になれば、自分の望む場所……例えば使用人科、あるいは選択している授業の生徒達で集まったグループの出し物のどれに参加するか選べる。だいたい、2つくらいかけもちをするようだ。

 今年は、きちんと自分のやりたい出し物のトコに所属して、やりたいことが出来る。


 ……と、思っていた時期があたしにもありました。


「マリヤ君は使用人科のトップタイですよ?! 科主催の出し物には、是非出て頂かなければならないと思います! 言っておきますがエルミン君もですよ!」

「それは覚悟してます! が、そこで独占されるのは否です否! 僕は彼の料理の腕前をよく知っています、それを発揮する時は今だと思うんです!」

「いくらマリヤ君でも2つかけもちが限界でしょう?! だったら、科主催以外は是非服飾授業の方に欲しいわ、彼のデザインて本当に素敵なの、絶対女性達に好評よ!」

「待て待て、文化祭は来年もある。ここは先輩たる俺達を立てるのが筋ではないか。剣技授業参加者で今年は剣舞をするのだ、参加を頼むと皆に乞われて来ているんだ」


 これだよ。

 背後で当事者そっちのけで喧々諤々やってる議論は、もう1時間は続いている。

 流石に席外すわけにいかないのでここに居るが、あたしが発言したら間違いなくもっと話がこじれて藪蛇だ。

 なので、もう諦めてあたしの身柄は議論勝者に委ねる事にして、秋の深まる校庭を眺めながらお茶など楽しむ今日この頃。

 まあ、この中にレオンが参加してないだけマシだ。彼が居たら、どうなる事か。

 彼はこの文化祭において、貴族科主催のダンスパーティの目玉景品……じゃなかったゲームの勝者とダンスするって大役(女性限定ですよ)があるのと、今更だが生徒会で副会長やってるので多忙なのである。

 本当は会長にって言われたんだが、先輩方の面目だとか、当人も未だ未熟者故ご指南ご鞭撻を、みたいな事で副会長に収まっている。

 イベント事での生徒会役員なんて大変だろうね。予算の計上だの何だの。

 あたしは生徒会、誘われたが以前クラスメイトに言った通りの理由で断っている。

 やってられるかこれ以上。

 ……あ、でも参加してたら使用人科主催の執事喫茶というかメイドカフェというか、と生徒会の雑務で済んだのか、……いや、別にそれが楽では決してあるまいな。


「誰も引かないのでしたら……、…もういっそ、クジで決めますか?」


 それで決められるなら最初からそうしてよ。

 ずずー、とお茶を啜りながらこっそり思う。めんどいので発言はしない。

 さりげなく先輩混じってるのに、誰も譲らないんだもんな。というか最初はエルミン君を含めた使用人科クラスメート4人くらいだったのに、いつの間にかヒトだかりになってるんだけどなんでだ。

 しまいには後輩まで混ざって、自分の所属授業に誘えるように応援してるし。

 ああ、うん、まあ、好意を持って接して下さるならば、嬉しいですよ。とても。

 ちょっと大変だとは思うが、背後から蹴り落とされるよりは何万倍も良い。


「…公平かつ、迅速に決められるのは確かだ」

「ちょっと、それだとほぼ確定だった使用人科の茶店にマリヤ君が入らなくなる可能性が出てくるじゃないですか…」

「ここまで希望者が溢れたんですから、諦めてください。そもそもエルミン君は確定してるじゃないですか、トップを二人も抱えるのはずるいです!」


 尚、そのエルミン君は調理授業代表として議論に参加していらっしゃいます。

 いろいろやりたいのはあたしもそうなんだけど、体は一つしかないし、メルルのお世話もあるので2つまで、というのだけは話を通させて貰って、そこを違反するつもりは無いようなので、口は挟まない。

 そんな訳で、裁縫授業の子がひとっ走りしてもう使わない端切れを持ってきて、ハサミで切って当たりクジ二つにインクを染み込ませた。

 恨みっこなし、そして不正がないようにと、という事であたしが誰にもわからないように机の下でクジをシャッフルし、端っこを皆様に差し出す。

 皆、目が怖いです。

 もうすっかり慣れてたけど、鬼気迫るオーラを背負った等身大動物たちに囲まれるってかなりの恐怖を掻き立てるよ。いや多分これ人間だったとしても怖いけど。

 順番に、クジが引かれていくが、10を超す数のうちの2つだ。なかなか当たりは出てこない。

 そして。


「……っ! 来た! 来ました!! 当たりですー!!」


 一番に当たりクジをかかげて吠えたのは、エルミン君だった。即ち調理授業グループってことですね。

 どうでもいいのだが、今年一番の男らしいエルミン君を見た。インク染み込んだ端切れクジを高々と掲げて雄々しく吠えるオコジョ君。笑える。笑わないけど。

 そして隣で一生懸命拍手しているサンセさん。そうか、君も調理授業グループか、そうだろうねエルミン君と一緒だもんね。

 というかいつからいたのか。紅葉見てて気づかんかった。


「ふ、不正はないんだろうな!」

「ありません。というか、しようがありません」

「ううー…。マリヤ先輩に執事服で給仕して貰う夢が遠のきましたぁ…」


 そもそも、君はきっと手伝いに翻弄されてお客さんにはなれないと思うぞ、狸少女。ってそうだ、誰かと思ったら前に告白してきたあの子か。シヤンちゃんだったっけ?

 彼女もなかなかの根性の持ち主だなあ。まだあたしの事追ってたのか?

 特に周辺をうろついてる感覚は無かったので、邪魔にならないようにそっと、みたいな方向に落ち着いたんだろうか。うん、そういう子好きだよ、恋愛感情じゃないけど。


「む、当たったぞ。どうやら知の神は今回も僕に味方をしてくれたようだ」


 ちょっとの間思考をずらしていたら、続いていたクジの結果が出ていたようだ。

 視線を戻すと、エルミン君のようにテンション上げるではないが、インクの染み込んだクジを右手に、そして左手で喜びを表すように机をぺん、と叩いたペンギンさんがそこには居た。

 ペンギン…………


「…いつから参加してらっしゃったんですか、グイノス先輩」

「つい先ほどからだな。例のモーターの試作がそろそろ実用段階目前でね、この文化祭で試用運転を兼ねた発表をしようと思い、君にその手伝いを頼みに来た」


 そしてクジ当てた、と……

 ぱたりぱたりとクジを持った平たい羽、…どうやって持ってるのか気にしたら負け、……をあたしに振るグイノス先輩である。

 相変わらず、なんというか、『持ってる』ヒトだなあ。

 そして相変わらずいちいち仕草が可愛いな! くっそ! 和む!!

 かくして、あたしの学院2年生における文化祭は、調理授業グループとグイノス先輩の助手に決定したのであった。

 いやまあ、楽しそうだからいいか。

 一部女子が執事服給仕を希望していて、ちょっとでも手伝いに来てくれないかーみたいに言ってたけど、中途半端になるのもイヤだったので断った。

 廊下でそんな話してたら、普段から主人であるが故に給仕されてるメルルと、一度だけだがそれそのままを体験したことのあるポーラ様がなんかドヤ顔してたのがちょっと微笑ましかった。

 また来年の機会にね。




――――――




 基本、学院内は図書館以外は部外者立ち入り禁止だ。

 が、年に一度、この文化祭の時だけは、身分の差なく学院内に入れる。いや、正確にはきちんとした身分証明を求められるので、誰でもではないんだろうけど。

 こういう時に、この学院を目指す前途有望な子供達が見学に来たり、将来を見越して予約というか見込みのある子のスカウトしに来る貴族さんの使いのヒトとか、そういうヒトも結構来る。

 そういう小難しい事考えず、普段入れない場所のお祭りを楽しむヒトも沢山居る。

 そこで恥を掻かないように、常日頃学んでいる事を発揮するのが、生徒達の役目なのだ。僕らきっちり頑張ってますよーという発表の場だよね。

 ……まあグイノス先輩の助手に関してはあたしだけじゃないし、彼が作っている電気式モーターは最早あたしが口出せない程の完成度だったので、当日まで発表の段取りやら見せ方やらの会議がメインなので割愛。

 気張りたいのは、調理授業の企画である。

 調理授業グループなのだから、当然のように何か食べ物を作って売る方式になるのはほぼ確定。

 何を作るか、が問題なわけだ。


「マリヤ君のお菓子、…はダメですよね」

「ダメですね。あれは、私達が個人的に楽しむ少量だからこそ用意出来るんですよ。まだまだ砂糖というのは高価です、売る程に準備するのはほぼ不可能でしょう」


 売れる自信はあるけど、この世界の一般的な砂糖菓子よりは安価に作れるけど、それでも売るほどの量となると話は別だし、かなり費用がかかってしまう。

 取り戻せるかもしれないけど、予算の申請通るかどうか。

 …いや、生徒会にレオンが居る以上話を聞けば通させてくれそうな気がするが、そんなコネは今使うべきではない。またあたしへの男子のヘイトが上がる。


「そもそも、二日間で大量のヒトが来るのですから、あまり手の込んだ物を用意するのは難しいと思います」

「そうね。去年はこだわりすぎて、すぐに完売になってしまったし」


 去年も調理グループに携わっていたキリンの先輩も難しい顔で腕を組む。

 去年はあたしは主に学者科の助手に駆り出されてこっちの方あまり見て無いのだが、そういう事があったんだな。


「けれど、単純過ぎても沽券に係わります」


 ある程度、期待して皆来る筈だからね。

 他と比べて見劣りするようなものは、皆この調理授業に真剣に取り組む生徒達のプライドという物が許さない。

 それで来年選択する生徒が減るのも、先生の信用問題というかそれこそ沽券に係わる訳だし。


「あまり複雑な手順でない、けれども目新しく美味しい料理…ですか」


 うーん、と皆で考え込む。

 折角だから、やりすぎない程度で美味しくて皆を驚かせるようなの作りたいなあ。

 あたし個人でやるなら目立たないのが一番なのだが、皆でやる企画だ。これはこれで成績にも関わる。真面目にやらいでか。

 大量に作れて、美味しいもの……

 脳裏を屋台系料理が過ぎる。たこ焼きとかお好み焼きとか……

 材料的に出来ないではないんだが。いや、タコはないけど。

 この王都自体がかなり内陸だから、冷蔵庫はあるけど冷凍技術は無い以上、新鮮な海産物というのは結構難しい。

 お肉は熟成期間という物があるからいいんだが。野菜は少なくとも海よりは近いし、結構保存方法研究されてるようで、物にもよるがいいのは多い。

 今回はお金取る物なので、カルネイロ領のもの使う気ないし。そこにこだわらなきゃ安くて新鮮なお野菜もある。要は調理しだいだ。

 ……そこで簡単というと、バーベキューというか、串焼き的な…?

 ソースとかタレを工夫すれば、かなり美味しくできるし、前日から漬け込んで準備も出来るし、皆で出来るし味が染みて美味しくな―――


「あ」

「? 何か思いつきました?」


 声と共にぽん、と手を打ったあたしに、エルミン君がこちらを見る。

 いやエルミン君だけじゃなくて皆があたしを見たが、あたしはちょっと待ってて下さいねーとだけ言って、一度調理室から出て行く。

 ダッシュで寮まで戻って(鍛錬ついでに強化魔法使ったので速攻だ)、部屋の食品棚から瓶を一本掴み、踵を返して皆の元に戻る。


「これ、使ってみませんか」

「何かしら、真っ黒の……ソース?」

「去年買ったビンテのソースですか?」

「あ…、…いつも、お弁当に、使っている…?」

「そうです。尤も、これは春に買い足した物ですけれど」


 エルミン君は一緒にいたし、サンセさんは日常的にお弁当に使っている存在として知っているが、これは去年の秋にアリクイの行商人さんから買ったお醤油である。

 春と秋だけ来るアリクイさんにお願いして、この春にも持ってきてもらって買った。

 ちなみにお味噌は今年の秋に持ってきてくれる予定になっている。そろそろだね。

 春に約束通り試食用レシピを渡して、それと共に売り出した時に気にいってくれたお客も居たので少しだけ王都でも知っているヒトはいるが、それでもまだごく僅か。

 そこで、この文化祭で醤油の力というのを広く知って貰えれば、どうなるか?

 アレを扱っているのは、今の所アリクイさんだけだ。美味しさが解れば、間違いなく売れて毎回しょんぼり気味のアリクイさんも儲けて、商売の幅が広がるかもしれない。

 そして流通ルートが確実に出来れば、あたしも醤油や味噌を手に入れやすくなる。引いては再来年、カルネイロ領に戻った後も容易に食材確保が出来る。

 まさにウィンウィンの関係である。


「凄い色ね…。本当に食べ物なの?」

「食べ物ですよ。ちょっとソースを作ってみるので、食べてみて下さい」


 先ずは単純な出汁醤油。本当はおにぎりに塗って焼いたら美味しいんだろうけど、お米はないので野菜に塗る。

 …そのうち味噌パンくらいなら作れそうだが、まあ今はおいといて。

 もう一つ、醤油ベースに蜂蜜やマスタードを入れた、甘辛系のバーベキューソース。

 本当は野菜や香辛料を入れて漬け込みたい所だが、それは時間がかかるのでこの案が通った後にすればいい。

 バーベキューと言えば直火だ。網を出してきて、火を起こす。室内でやるモンじゃないけど、そこはまあ換気とか簡単に出来るから気にしない。

 当日屋内か屋外か、まだ決まってないけどどっちだって問題無い。

 適当にざくざく木串に刺したお肉や玉ねぎ、キノコなんかを焼いていく。

 ソースの方はたっぷり塗って、出汁醤油の方は焼きながら塗り重ねる。

 醤油の凄いところは、焼きながらもこの香ばしい匂いが食欲をそそるところだ。

 料理は味と見た目、そして香りも大事。特に見知らぬ食べ物を食べる気にさせる一番の要因は香りと言って良いと思う。

 エルミン君とサンセさんは何度も醤油を使った料理をもう食べているから、美味を疑ってはいないが、他のメンバーはそうじゃない。

 それでも、調理室に漂う香ばしい醤油の香りに皆鼻をひくひくさせて、興味津々の顔で焼けて行くお野菜たちを見守っている。


「どうぞ」


 程よく火が通ったところで、網から櫛を上げて、お皿に乗せて渡す。

 ソースをつけて焼いただけ、という非常にシンプルな品だ。本当はもっと手間をかけられるけど、試作品だし先ずは醤油の味を理解してもらうためだから仕方ない。

 当然、エルミン君は迷わずきれいな焦げ目のついた玉ねぎに噛り付く。想像に違わぬ味だったのだろう、美味しそうに尻尾をゆらゆらと振る。

 獣人の皆様は、尻尾や耳や髭に感情が如実に表れて、見ていると楽しい。オコジョが嬉しい時に尻尾振るとは知らなかったが。いや、元のあたしの世界の動物知識と同じな事ばかりではないのは、もう解ってるけどね。それだったら玉ねぎとか犬に食べさせちゃだめだし。

 サンセさんも、おしとやかにお肉をもぐもぐ。そんな二人を見て、興味半分、未知への恐怖半分と言った様子のキリン先輩も恐る恐るピーマンを口にする。

 基本、この世界でソースと言えば茶色い系のソース…ドミソースによく似た物が一般的だ。マヨネーズに近いものもある。

 まあそれ以前にシンプルな塩とかで焼いた物や、そもそも煮込み料理なんかが結構多かったりするのだが…

 相変わらず見た目は真っ黒なインクのような醤油は、そうと知らなければ食べ物だと判別さえされそうにないレベルで、それを口にするのは勇気のいる事だろう。

 …いろいろ入れたから、もう真っ黒ではないんだけどね。

 はたして、醤油ソースのかかったピーマンをもぐもぐしたキリンさんの反応は。


「食べたことのない味…、……けれど香ばしくて、美味しい!」


 断言を頂いた。

 メルルは重度の野菜好きで肉嫌いな訳だが、やっぱり草食系の獣人の皆様はお野菜が好きで、豆から作った調味料である醤油とは相性が良いようだ。

 各種野菜から作ったウスターソースとか再現できればそれも相性が良いのだろうけれど、流石にそれを作るほどの知識は無いからなあ…

 グループのリーダー格であるキリン先輩が笑顔で絶賛すれば、他のメンバーも恐る恐るだが手を伸ばし始める。

 程なくして、焼いたお醤油の美味しさに目覚めた皆が、目を輝かせて串焼きを頬張るちょっとしたバーベキュー大会と相成った。

 よし、やはり醤油最強。

 おおよそだが、草食系のヒトは出汁醤油、肉食系のヒトは濃い目の味のバーベキューソースがお好みなようだ。

 これなら、後者にはお肉系の出汁を混ぜても良いかもしれない。


「これは、もっとじっくり漬け込んだ方が、味も染みるし美味しいでしょうね」

「そうですね、本来はそうする料理です。寝かせた方が肉も柔らかくなりますし」

「私はこれなら充分文化祭でお披露目できる味だと思うわ。…けれど、この国では見たことも無い調味料を使うとなると、砂糖よりも調達が難しくないかしら」

「それなら大丈夫です。近日中に、このソースを運んできてくれる商人さんがいらっしゃいますから、彼に相談すれば二日分のソースは確保出来るでしょう」


 前回、試食を試してあたし以外にもちょっとだけお醤油が売れたアリクイさんはホクホク顔で、次回はもう少し量を増やすなんて言っていた。

 それはいいんだが、彼の事だからまーたさばききれない量持ってきそうで怖い。

 が、この話が上手くいけば王都中にお醤油の美味しさと用途がある程度知られるようになるだろうし、売れ行きも良くなるだろう。

 アリクイさん以外にもペイシェ産調味料の扱いが始まるかもしれないが、最初から確保しているルートがあるんだからしばらくは強みになる。

 …つかそれでシェアを奪われるようなら、本気で商才ないから将来考えた方が良い。

 大事なものを教えて貰った恩人であるし、ちょっとだけ贔屓にはするけど。


「……それじゃあ、その商人さんとの交渉はお任せ出来る?」

「はい」

「なら、それまでレシピの研究をもっとしなきゃね!」

「こっちの濃いソースの方、漬け込むときにお野菜も刻んで入れてみない? もっと味が深くなると思うの!」

「でしたら、香辛料も試してみませんか? 漬け込むことが前提でしたら、いくつか味のバリエーションを用意出来ると思うのですが…」


 そうと決まれば、と即座に始まるレシピ研究。

 美味しい物の開発研究には余念がない、本来生徒達主導で助けを求められない限りは見守る筈の先生まで、興味津々と混ざってきた。

 …とりあえず、アリクイさんが来るまでに、ストックしてある醤油瓶をあと2・3本は開ける事になりそうだ。

 まあいいけどね、初期投資だと思えば。

 これでもっと簡単にお醤油手に入るようになればいい、……けど、場合によっては、需要過多で値上がりするかな。しまった。

 ……行商が一つの状態の方が不便だから、少しの辛抱か。売れると見れば、扱い始める商人は増えるだろうしね。需要と供給が安定するまでの我慢我慢。





 お醤油つけて焼くだけで、大抵のものは美味しいです。お醤油最強。


 というわけで、バーベキュー売りさばく文化祭。

 ポテチとかリンゴ飴とかいろいろ考えたんですが、結局焼き物。

 関係ありませんが、お祭り屋台ものならば、バナナチョコが一番好きです。

 1回のお祭りにつき3本は食べます。バナナチョコうまし。




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