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ヒツジさんの執事さん  作者: 美琴
第二章
27/67

27・学生生活開始


 割と先の思いやられる学院生活のスタートを切った訳なんだけど。

 思いの外、いきなり頭を抱える事態にはなっていない。


 貴族の皆様と、使用人や学者・役人志望の生徒達は基本それぞれクラスが違う。

 そういう訳で、先ずあたしは比較的平和だ。…まあ強いて言うなら、他の生徒達に若干敬遠されてる感はあるが、嫌がらせや悪意といった感情は無い。

 多分『絶滅危惧種の人間である』というのと、『王子様の友人である』というのが相乗効果を発揮して、近寄りがたくなったんだろう。

 そのうち打ちとける事もあるだろう。あたし達の学校生活は、まだ始まったばかりなのだ。打ち切りじゃないよ。

 さて貴族な皆様の方だが、例年より数が多いせいか、2クラスに分かれた。

 メルルはサンセさんとポーラ嬢と同じで、レオンは別。

 レオンが見ていた方が嫌がらせは減るだろうが、その分周囲が感情を溜め込んでしまう、という意味ではこれで良かったと思う。

 何も、貴族の子達全てがメルルを目の仇にしてる訳でもない。

 少なくともサンセさんはメルルと仲良しで、ポーラ嬢は……明らかにレオン目当てで入ってきただろうに、例の一件に大して気にした様子もないのだ。

 それが公爵家令嬢の余裕なのか、それとも実はそんなにレオンに拘ってはいないのか…彼女をよく知らないので、まだ解らない。

 メルルを睨む令嬢達は、おおよそ貴族女子全体の7割。残り3割は同情の視線。

 男子はあまりメルルを嫌っては居ない。勿論好いても居ないが、目くじらを立てる程ではない。そっちはあたしに向いてる。


 貴族組とこちらで、同じになる授業もあるし、別の授業もある。

 HRや別授業は少し心配だが、……授業中は、誰も何もしない。

 何せ、学院内では先生の方が生徒より強いのだ。

 どんな生徒も、校舎内においては特別扱いされない。王太子であろうが、公爵令嬢であろうが、だ。

 授業はきっちりとして厳しいし、その中でふざけたり居眠りしたり、誰かの勉強を妨害しよう物なら、即刻叱責、悪ければ退場。当然その授業の単位は貰えない。

 この学院は、真面目に勉強しない生徒には全く優しくない。

 『レオンが居る』という目的でのみ入学した貴族達は、その事に驚きすら感じているようだ。下調べくらいしろよ。

 というわけで、先生の目がある所では、嫌味も嫌がらせも全て自分へのデメリットにしかならず、1日目にして早々に無くなったそうだ。

 多分この分だと、来年の今頃には貴族組の生徒は半分くらいが進級できず、普段の人数比率に戻るんじゃないかな。

 真面目に勉学に打ち込まない生徒を簡単に進級させるほど、甘くないのだ。

 個人的には、本気で真面目で厳格な学校で、助かっているし嬉しい。


 で、授業外なのだが。

 昼食の時間になると、あたしはメルルのクラスに彼女を迎えに行く。

 周囲は貴族の子達だらけで、視線は痛いしぼそぼそ嫌味も聞こえるが、全く気にせず真っ直ぐに立って待機したままだ。


「お待たせ、マリヤ」

「お、お待たせしました」

「お疲れ様です、お嬢様、サンセさん。では、参りましょうか」


 お昼は学院内の食堂を使う。

 笑顔で教室から出て来てあたしに合流するメルルと、周囲の視線が怖いのか、若干引き攣った笑顔のサンセさん。

 あたし達の傍に居ると危ないかも、と言ったのだが。

 サンセさん曰く、『メルルさんもマリヤさんも、唯一…いえ唯二のお友達なんです! 怖いくらいで、それをやめたりなんて、しません!』とのこと。

 ……なんだろう。貴族の子って、友達難民なの?

 いやそんな気がしないでもないけどさ。メルルが珍しいんだよね。


「今日の日替わりは何かしら。昨日のお野菜のスープは美味しかったわよね」

「は、はい、そうですねっ」

「朝に食堂の黒板を見ましたが、どうやら本日の日替わりは魚料理のようです」

「う。お魚かあ。…んーでもお肉よりはマシかな」


 サンセさんは固いが、メルルは普段通りの通常運転、むしろ上機嫌な方。

 廊下を歩いている間も、敵意と悪意の視線を浴びているし、ぼそぼそ何か言われているのだが、完全にスルーである。

 あたしとメルルの共通認識として、『面と向かって挑んでこないヤツは、相手をする価値もない』というのがあるからだ。

 ぼそぼそ嫌味を言って、何の事態の好転を望んでいるのだろうか?

 故に、聞こえる音量で言っているにも関わらず、歯牙にもかけないあたしとメルルに、言っている方はイライラを募らせているようである。

 勝手にストレスためてりゃ世話は無い。あたし達は、君達程度でストレスを感じるほど親切ではないのだ。

 ただ、ああいう手合いの方が、多分ご自分達の為になっている。


「お嬢様、失礼します」


 廊下の途中、貴族のお嬢様が3人ほど立っていた。

 無論あたし達の方が避けたのだが、すれ違う瞬間にあたしはメルルの手を取ってダンスのエスコートのように引き寄せる。

 メルルも驚く事無くそれに従ってくれて。

 果たして、あたし達の真横には、会心のドヤ顔で片足を空中に伸ばす、インパラのお嬢様が居た。

 ここでこちらから嫌味の一つも言えば烈火のごとく怒り狂うだろうが、あたし達はそれすらもしない。

 ろくに視線も向けないまま、彼女を通り過ぎた。

 ……ただ、サンセさんが耐え切れなかったのだろう、軽く噴き出して笑ったが。

 それに釣られたのか、周囲に居た貴族男子達も何人か噴き出した。

 振り返るつもりはないが、今頃インパラさんは顔真っ赤じゃないかな。どうせ毛並みでよう見えんが。

 という訳で、睨みや陰口を通り越し、物理的な嫌がらせが来た場合は、それを全て空振りさせる。

 アクションが伴う以上、それが決まらなかった場合はこれ以上なく間抜けだ。

 故に物理行使をすればするほど、相手は恥を掻いて行く。

 あたし達は、それにハマらないばかりか、目もくれなければ何も言わない。

 怒り狂って突っかかれば、更なる恥の上塗りだ。してきても、丁寧にかわすつもりでいる。

 さーて、それらを理解するまでに、どれだけのお嬢さんお坊ちゃんがバカさ加減を見せてくれるかな。

 もう、むしろ楽しみですらある。

 いじめっ子は嫌いだ。自分からやり返すつもりはないが、自分で自分の墓穴を掘っておちて行く様は、指差してざまあと言いたいタイプである。

 突っかかってこなきゃ、何もしませんよ?


「そうそう、マリヤの作るお料理ってね、凄く美味しいのよ! サンセさん、今度お部屋に来ない? ご馳走するわ!」

「本当ですかっ? はいっ、是非お伺いさせて下さい!」


 メルルとサンセさんは、相変わらずの和気藹々っぷりだ。

 さっきのお間抜けインパラお嬢様で緊張がほぐれたのか、サンセさんも随分気を楽に話している。

 あたしはそんな様子に和みながらも、周囲への警戒を怠らない。

 ……おや、向かい側からご令嬢2人が歩いてきた。

 そちらも楽しく談笑しているようで、あたし達に気を払っている様子もない。

 真っ直ぐ食堂へ向かうあたし達は、当然彼女達とすれ違うのだが。


「失礼します」


 ひょいっとメルルを抱きかかえ、ちょっと姿勢を下げる。

 その瞬間、3歩分ほど前に居たご令嬢2人のうちの片方が、後ろ手に隠していたコップに入っていた何かを、一瞬前までメルルの顔面があった場所にぶちまけた。

 勿論余波を食らうのもイヤなので、姿勢を下げた後くぐる様に位置移動。

 泥水かな。色水かな。

 なかなか物凄い事をしでかすが、物凄いだけにリスクも巨大だった。


「マリヤ、やっと見つけたぞ。食堂へなら俺も……っぶ?!」


 あろうことか、たった今通り過ぎたT字路の向こうから、あたしを見つけて走ってきたのだろう。

 素晴らしいタイミングであたし達の背後に現れたレオンに、ご令嬢達がメルルにひかっけようとした……恐らくインク水溶液がぶちまけられた。

 メルルの顔面をめがけていたので、レオンの口元から首、襟元あたりにまだらに黒い染みができる。

 ……狙ってないよ? 誰かにあたるかもな、とは思ったけど、こっちに走り寄ってきてる気配に敵意がなかったから、気にしてなかった。


「ひっ、……れ、レオン殿下っ?!」


 これも決まったと思ったろう、数秒前までまたも会心のドヤ顔をしていたご令嬢二人組が、悲鳴じみた声を上げ、真っ青になる……毛並みで見えないが。

 その間にあたしはメルルを下ろす。他の人だったら放置して先に行くが、レオンとなると置いて行く訳にもいかないので、見守る。

 当然、あのご令嬢達をかばう気など一切無い。


「……これは、どういうつもりだ?」

「い、いえその、あの…」

「そ、そんなつもり、では…」

「…確か、2人とも伯爵家の者だったな。…この学院内において、我々は身分の差なく、同じ生徒だ。…が、この事はしかと覚えておく」


 それは、最早死刑宣告に近い。

 片方の令嬢はガタガタと震え、インク水溶液をぶちまけた当人は腰を抜かしたのか、がくりとその場に崩れ落ちた。

 まあ、ある種無礼講(?)の場とは言え、一国の王太子にインク液を能動的にぶちまけたのだ。普通に考えて、終わったと思っていいだろう。

 ……多分、明日から来ないな、あの2人。知った事ではないが。


「災難を押し付けたようで、すみません、レオン」

「いや、構わない。お前達には何の非もないだろう」


 流石にほっとく訳にもいかないので、ハンカチでレオンの口元と、襟元を拭う。

 うーん、やっぱりインク水溶液だな。染みになっちゃってる。


「これは、落ちなさそうですね」

「後で着替えてくる、問題ないさ。女性の毛並みに染みを作るよりは、ずっと良かった、ぐっ」


 極自然にたらしかお前はって発言をするレオンの足を、自然に見えるように軽く蹴った。

 普通にそれ不敬罪じゃないかという話だが、ちらりと視線を向けるあたしに、レオンはむしろ謝罪に近い表情になる。

 ただでさえ、初日のレオンの発言で、メルルの立場が危ういのだ。

 後で当人も気がついて謝罪してきたのだが、なるべくメルル個人を気にかける発言は慎め、と言ってある。

 これが本当に恋仲とかなら別だが、そうじゃないのだ。

 あくまでも、メルルとレオンはあたしを介した知り合いである、と周囲に認識して貰わないといけない。

 その方が、楽だしね。回避とかが。

 この一件で、ヘタに派手に手を出すと身を滅ぼすって理解してくれたらいいんだけどなあ。




――――――




「やっぱり、お魚って苦手…」

「そうか? 美味いぞ、流石に良い料理人が居るようだな、生臭さもないし味付けも丁度良い」


 相変わらず、肉や魚が苦手なメルルと、肉や魚の方が好きなレオン。

 サンセさんはどちらもほどほど好きなようだ。…ただ、隣に王太子殿下が居るという事実に、がっちがちで味を感じているか解らんが。

 4人テーブルという席の都合上、あたしとメルル、レオンとサンセさんにわかれてしまったので。ごめんね、メルルから離れる訳にいかないんだ。


「でも、サラダは美味しいわ! このドレッシング好き!」

「それは良うございました」

「こういうの、作れたりしない? マリヤ」

「そうですね、…お時間を頂ければ、近い物は再現出来るかと」

「じゃあよろしく!」

「かしこまりました」


 全く同じには出来ないが、近い物ならなんとかなるだろう。

 いわゆる、ゴマ風味のドレッシングだ。前の世界でも、似た味の物を食べた事がある。

 相変わらず周囲から敵意的な物を感じるが、レオンも一緒だからか、そんなに強烈ではない。

 下手な口を聞いて、見咎められればさっきのお嬢様達の二の舞だからね。

 懸命な紳士淑女は、タイミングは今ではないとわかる。

 が、残念ながら何処の世界にも馬鹿はいる。


「お嬢様、紅茶のお代わりは如何ですか?」

「うーん、そうね。もう一杯欲しいかな」

「では」


 言いながら、あたしは席を立たない。

 代わりに、メルルの頭上辺りにひょいと手を伸ばした。

 視線をそちらに向ける事もなく、想像通りの物が落っこちてきたので持ち手の部分を掴み、中の液体を零さぬように保持、手元に持ってくる。


「わざわざ、有難う御座います。お気遣い感謝致します」

「えっ、あっ、」

「ほう、面白い給仕の仕方をするな。お前は曲芸師か何かか?」

「し、ししししし失礼致しますっ!!」


 あたしが目線を上げてメルルの背後に立っていたお嬢様に笑顔で礼を言うと、思いっきりキョドった。

 そしてレオンがジト目を向けると、全力でドモりながら走り去っていく。

 ほんと、レオンの目の前でなんてやんなきゃいいのに。顔覚えられたな。


「あら、丁度わたしの好きな銘柄ね。彼女の心遣いを有難く頂こうかしら」

「……あの、…よく気付きますね、マリヤさん…」


 けろりと頭上からやってきた紅茶を受け取るメルルである。この空ぶった悪意も美味しく頂くくらいじゃないとね。

 平然とするあたし達に、というかあたしに、サンセさんは感心なんだか呆れなんだかよく解らない目をこちらに向ける。


「気付かないのが不思議なくらい、悪意と敵意に満ちていますからね」

「さっきのインク液だって、直前まで私、解らなかったです…」

「あの時は、あからさまに背後に何か隠していましたし、視線はちらちらとお嬢様の顔付近を狙っていましたから」


 その矛先当人は、何か狙っている事くらいは気付くだろうけど。

 メルルがアクションを起こさないのは、あたしがそれに気付いていて、なんとかするだろうと思っているからだ。

 あたしが居なければ、メルルは自分で回避をするだろう。…と言ってもお嬢様あんまり身体能力は良くないので、避け切れないかもしれないけど。


「マリヤの目を盗むつもりなら、悪意と敵意を全て殺して、気配を完全に断ってから出直しなさいって感じよね」

「そうですね」

「そんな達人はこの学院には居ないだろうな」

「悪意がないと、随分無防備だけどなあ?」


 ぽむ、っと突然背後から頭に手を乗せられた。

 ……おう。…本当に驚いた。顔には出さないけど。


「よ。随分騒がしくしてるらしいなぁ、新入生」


 そのヒトはがたごとと音を立てて別のテーブルから椅子を持ってくると、背もたれに腕と顎を乗せ、跨ぐように座ってにかっと笑う。

 黄色い毛並み、大きな耳、犬よりもふさふさとした大きな尻尾。

 人懐こい笑顔を浮かべる彼は、生徒ではない。どこか和風を思わせる衣装に身を包んでいて、大人…というか声はオッサンだ。

 見覚えがある。もう随分前になるけれど。


「……リシッツァさん?」

「おお。なんだ、知ってたのか?」

「前に一度だけ、カルネイロ領の収穫祭にいらした所を見た事があります」

「…よっく覚えてんなあ、もう4年前だろ。一回だけしか行ってねーのに」

「お陰で助かりましたので」

「ん? …俺なんかやったか? …あー、そういやなんかやったらしいとか言われたよーな言われんよーな」


 やっぱり、前に収穫祭で拉致られかけた時、ウルガさんと一緒に居て、あのトカゲが蹴躓いた狐さんだ。

 …学院に居たのか。完全に予想外。

 当人は寝てただけだから、案の定認識は無いようだ。多分、彼からあたしの事は知らなかっただろう……いや、知ってたのかな?

 まあ人間だって知らされれば解るか。


「えーと、お前がマリヤだな。そっちの白いコがメルメルで、…そっちの2人は、王子様とあと誰だ?」

「さ、サンセと申します!」

「そうかそうか。俺はリシッツァ、この学院で薬学とか教えてんよ。お嬢様方とは授業がかち合わんだろうが、てきとーに宜しく頼むわ」


 学院にいる大人って時点でそうなのかとは思ったけど、先生なのか…

 今日まで何人かお会いした先生方は皆ピシっとしていて厳しそうだったのだが、なんというかこの狐さんにはゆるさしか感じない。

 ウルガさんを更にゆるゆるにした感じだ。王子様にさえヘラヘラ笑っている。

 特にレオンが気を害した感じはしないが。


「ところで、どうして私達の所へ?」

「あー、それがな。アレだ、お前のお師匠さんから、弟子が学院に入るって言うから、特別扱いしなくてもいいが、ちょっと気にしてやってくれって言われてよ」


 お師匠さんて……ウルガさんか。

 そうか、ウルガさんとリシッツァさんは友達だもんね。わざわざ手紙か何かで声をかけてくれたのか…

 師匠、意外と甘いです。


「アイツが『弟子』とか呼ぶなんて、ついぞ聞いた事がなくてな。どんな豪傑だよと思って、ちょっと見に来た」


 ウルガ、と名前を呼ばないのは何かあるんだろうか?

 王都でなんがしか有名人だったみたいだし、あんまり呼ばない方がいいのかな。

 なんとなくそんな気がして、それに習うことにした。


「……豪傑でしたか?」

「んーまあ80点てトコだな。俺やアイツから見りゃまだまだだが、その年だと思えば及第点どころか合格点だ」

「有難う御座います」

「生徒達でお前に察知されずに何かすんのは無理だろうが、世の中広いんだぜ? 無理じゃない程度で、敵意以外にも気ィ配っとけ。気配を殺す程の手合いは、お嬢様じゃなくてお前を狙うだろうからな」

「……はい。気をつけます」

「まっ、学院内は俺や先生達が目を光らせてっから、安全だけどな!」


 …リシッツァさんに関しては、近付いてくる気配にすら気付かなかった。

 うん、やっぱり世界は広いし、あたしはまだまだ未熟者だ。

 生徒くらいでは問題ないけど、上には上がいる。そのつもりで、今まで通り驕らず真剣に頑張ろう。


「つーわけで、授業的に特別扱いはしねーが、なんか本当にどうしようもなくて、先生クラスの力が必要な時は声かけてみ。内容によるが、なんとかしてやんよ」

「はい。…なるべくお手を煩わせないよう、努力はしますが、もしもの時は宜しくお願いします」

「うん、本気で困ったら大人を頼れよ。そんじゃな」


 よいしょと席を立つと使った椅子を元に戻し、手と尻尾をふりふり狐さんはあたし達のテーブルから去っていく。

 うーん、相変わらずあたしは甘やかされてるなあ。

 普通に頼もしい味方が出来て、ちょっと安堵する。


「おーい、オッサーン! こっち来て遊ばねー?」

「お、いいねいいねー! 今日の勝負は何にするよ?」

「新作の双六でもどうよ!」

「いや、今日こそ丁半でオッサンを素寒貧にさせてやろうぜ!」

「おおっと、出来るとお思い? 受けて立っちゃうよー?」


 ……。

 上級生と思しき一団に声をかけられ、意気揚々と輪に入っていくオッサ…もといリシッツァさん。

 え、なに? 素寒貧て、学院内で賭博してる訳じゃないわよね?

 先生として、どうなの? つーか、ナチュラルにオッサン呼ばわりなんですか、あのヒト?


「あ、ああいう…、親しみやすい先生も、いるんですね…」

「そのようだ…。…まあ、彼は見た目以上の実力派だからな…」

「いいんじゃない? あれも一つのバリエーションよ」


 だらだらしてるように見せかけて、全く持って動きに隙がないしね…

 あの先生の授業、薬学だっけ? どんなんなんだろう。

 凄く興味がある。…そのうち選択してみよう。





 授業は必修項目以外は選択制、そして単位制。

 ちなみに奨学金制度もあります。


 という訳で、お貴族様達からの嫌味いじめを全て無効化する2人でした。

 口だけの嫌がらせなんて、そよ風とも感じていません。

 徹底的に無視です。話しかける形での嫌味は、全く怯みもせず笑顔で応対し、むしろ上げてくれるので気分がよくなって去っていき、後で何の目的も達せられなかったと気付くだけ。

 物理行使になるとマリヤに全て受け流され、間抜け姿を晒し恥をかく。

 運が悪いとレオンに気付かれ、最悪の場合は大変な事に。


 結論:関わってもデメリットしかない。


 正面から叩き潰すのではなく、自滅を誘う墓穴方式。



(7/27 一部加筆修正)

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