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一日目② ~七話~

ニ海堂純は茂みを飛び出し、ひとまず木の陰に隠れた。

(弾が来たのはあっち、そんで銃声の数と音からすると・・・)

たった一回の不意打ちでここまで見抜く。

それがニ海堂の実力である。直樹達が自身を弱いと思ってしまうほどにニ海堂の実力は高かった。

敵は三人。

だが、伏兵の存在も頭に入れておく。

それぐらいの警戒心が無ければ、直樹達を守る事もできない。

一呼吸置き、ニ海堂は一気に木の陰から姿を現した。


「!?」

敵の一人がこちらに気付く。

急いで照準を合わせようとするが、圧倒的に初動の差が違う。

ニ海堂は右手の銃で狙いを合わせ、


ドォン!


そして、発砲。

銃口から放たれた銃弾は音速の速さで敵の額に近づき、


そして、貫く。


撃たれた男はただ呆然とした表情で額から血を流して倒れる。

(残りは二人)

ニ海堂は達成感の欠片も感じない。

何故なら彼にとってこんなことは序の口に過ぎないからだ。

「な!?」

「テメェ、よくも石崎を!」

ニ海堂の銃から鳴った銃声で残る二人もこちらに気付く。

敵はそれぞれ離れて右と左に居た。

ニ海堂から離れた位置にいるため、さっきのような不意打ちは通用しない。

(だったら)

ニ海堂は威勢が良い左の男をターゲットにする。


ダンッ!!!


すさまじい脚力で敵に迫るが、距離はまだ数メートル空いている。

それを好機と見た男が慎重に照準を定め、発砲した。


ダァン!


二度目の銃声。

銃弾は吸い込まれるようにニ海堂の顔面に迫り、そして――



当たらなかった。



「な・・・」

驚愕する男はニ海堂を睨み付ける。そこであることに気付く。


ニ海堂の首が右に傾いていた。


(まさか・・・こいつ・・・!)

男はひとつの答えに辿り着く。


ニ海堂は首の動きだけで銃弾を躱したのだ。

もちろん誰にもできるような芸当ではなく、実際に弾を見て躱した訳でもない。

この動きは銃口から射撃位置を予測し、引き金を引くタイミングで体を動かすというニ海堂の経験と技術によるものだ。

だが、撃った側の男はそんなこと知る由もない。

彼から見れば自分が撃った銃弾を目で見て躱した風にしか見えなかっただろう。

そして、そんな不安が彼の追撃を鈍らせた。

気がつけばもうニ海堂は男の懐までたどり着いていた。

「クソが!」

男は慌てて銃口を向ける。

だが、ニ海堂はその銃口を右手でガスッ!という音と共に自分から逸らした。

そしてすかさず左手の銃を男の心臓に突きつけ、発砲。


パァン!という銃声と共に男の支えが無くなり、鮮血が飛び散った。

そして男の体はズルリ、と音を立ててニ海堂の足元に滑り落ちた。


「う、うわぁぁぁぁ!!!」


最後の一人がそんな情けない声を上げて走り出した。

ニ海堂はその男に銃を向け、心の中で「ゴメンな」、と呟いた。

(でも、)

そしてニ海堂はトリガーに指を掛け、狙いを定める。

「自業自得って知ってるか?」

その言葉を言い終わるとニ海堂はトリガーを引いた。

右腕に衝撃、そして死を告げる銃弾が飛び出す。

音速の速さで飛来する物体から逃げ切れる訳も無く、

最後の一人も命を散らせ、その場に倒れた。





――直樹と横口はニ海堂の指示通りに茂みに隠れていた。

戦闘音はまだ続いている。

(今ので・・・二発目か?)

姿を現す訳にもいかないので、このように音で状況を把握するしかなかった。

(いくらニ海堂でも一人はキツいよな・・・)

けれど、迂闊に援護なんてできない。

そんなことは素人の直樹にも分かる。

いくらプロの人間でも素人を守りながらでは生存率は極めて低くなってしまうだろう。

頭ではそう理解している。

だが、友人を危険にさらしておいて何もできない自分が許せなかった。

「純・・・大丈夫かな・・・」

横口が不安そうに呟いた。

その瞬間、四度目の銃声が鳴り響いた。

思わず体が縮こまってしまう。

そして、それっきり戦闘音は途絶えてしまった。

(え・・・?)

戦闘が途切れると同時にとてつもない不安感がこみ上げた。

頭に浮かぶのは、先程自分達を襲った襲撃者。

そして想像してしまうのは、同じように血まみれになって倒れているニ海堂の姿。

そんなことはないと切り捨てても、頭は考えるのをやめない。

だが、思考は止まった。

ガサリ、と


落ち葉を踏む音が聞こえたからだ。


一定のリズムで刻まれるそれは、段々と大きくなっていく。

つまりは近づいているということだ。

敵かニ海堂かも分からない。

そのため迂闊に顔も出せない。

そんな中、直樹はふと、この前見た夢を思い出した。

念のため、直樹はポーチから銃を取り出す。

まだ足音は大きくなる。

銃を握る手は汗ばんでいた。

ガサリ、という音が止まった。

次に聞こえた声は――


「いやー、ごめん!てこずったわー!」


ズコッ!と。

一度聞いたような言葉で俺と横口は思わず、ずっこけた。




――「さて」

ニ海堂が口を開いた。

本日二回目の襲撃の後、俺達はジャングルのさらに深い所まで潜っていっていた。

「湖に行こうと思ったけど、今思うとかなり見通しがいい場所だからな。狙われるかもしれん」

そして、少しの間を空けて、ニ海堂は言う。

「だからここで今夜は過ごすぞ」

「それはいいけど・・・何で狙われるんだ?湖も相当広いだろうし、他にも人がいるだろ?」

ニ海堂はチッ、チッ、としたを鳴らして言った。

「甘いなぁ、あらちん。さすがの俺でも飛んできた弾をどうこうはできねぇんだよ。その分ここは、遮蔽物はあるし、落ち葉で足音も分かる。一石二鳥ってわけよ」

「なるほど」

予想以上の完璧な回答に俺は何も返せない。

「それに理由はもう一個あるけどな」

そう言ってニ海堂はスマホの画面をこちらに見せてくる。

画面にはランキングが表示されていた。

画面に目を向けると、



ランキング


一位 ニ海堂 純  6p

     ・

     ・

     ・



「あらら・・・」

横口が呆れたように呟く、確かにその通りだ。

「随分有名人なっちまったな・・・」

俺が心底残念そうに告げるとニ海堂も笑って返してくる。

「まったくだ」

だが、そんなことは気にも留めてないと言わんばかりに、話を続ける。

「つまりそういうこと、俺の命に価値が出来た以上、狙ってくるような輩は多いだろうからな。サーチって機能がある以上、気は抜けない」

そして急にニ海堂は真剣な顔つきになった。

「じゃあ・・・今から・・・」

あまりの急激な変化に、汗が流れた。

そしてニ海堂は言葉を告げる。

「飯食おう!」

ズコォッ!

本日二度目のずっこけだった。


バトルシーンにやっとこさ漕ぎ着けた・・・

初めてなので感想もらえると嬉しいです。

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