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一日目~六話~

葉をかき分け、大木を飛び越え、枝をかわし、落ち葉を踏みしめる。

そして、走る。

ただ走る。

そんな動作を直樹と横口は続けていた。

「ハァ・・・ハァ・・・!」

「ハッ・・・ハッ・・・!」

襲撃を受けてからもうすでに5分が経とうとしていた。

(しっつけーな・・・!)

後ろを振り返ると、銃を片手にこちらを追いかける襲撃者が見える。

その距離、約十数メートル。

発砲すれば十分に届く距離だが、襲撃者はそんな事は思いもつかないらしく、ただひたすらに直樹達を追いかけていた。

(つー事はこれ以上近づかれたら撃たれるかもってことだよな)

ならば速度を上げなくてはいけないが、それができない理由が直樹にはあった。

無論、横口の存在である。

(確かに横口を置いて行けば、逃げられる)

横口は元々体力があるほうではない、だが横口は直樹に追いつくように必死に走っている。

「そんな事できるか・・・!」

思わず声に出ていた。

(ニ海堂とも約束したんだ)

決意と共に直樹は拳を握りしめる。

ふと、顔を上げるとジャングルのものではない景色が見えた。

ジャングルを抜けて、差し込む光の中に飛び出す。

そこは――


ザザァ、ザザァーン

ビーチだった。

無人島だからか砂浜には一切のゴミは無く、広い、横を見回しても終わりが見えない。

今が普通の状況ならひと泳ぎくらいしたかもしれない。

だが、今は普通の状況じゃないことは誰にでも分かる。

状況を整理して導かれる答えは、

(遮蔽物がない・・・!)

今まで襲撃者は一度も発砲しなかったが、それは単に木が邪魔だっただけなのかもしれない。

そう考えると嫌でも焦ってしまう。

「横口!もう一回森の中に入るぞ!」

そう言って横口の手を強く引っ張った、するとビーチに意識が向いていた横口はそれに気づかずに、

「きゃあ!」

転倒してしまった。

急いで立ち上がらせようとするが、

チャキ、という音が頭のすぐ後ろから聞こえた。

振り返ると、俺の頭に銃口を向けた襲撃者が目の前に立っていた。

その顔は歓喜に満ち溢れて(あふれて)いる。

全てを悟った直樹はすかさず横口の体を守るように覆いかぶさった。

直樹は甘く見ていた。本当に殺しをするやつなんていないと心の中で勝手に思い込んでいた。

だが現実は違う。殺らなきゃ殺られる、まるで野獣のような理論だった。

脳裏に浮かぶのは、いつも能天気な青年の顔。

(悪いニ海堂・・・約束・・・守れそうにない)

襲い掛かるであろう激痛に備えて、目を固く閉じ、歯を食いしばった。

ドォン!

そして、美しすぎるビーチに終わりを告げる銃声が響いた。





――荒澤直樹は死を覚悟した。

自分が覆いかぶさっているクラスメイトだけは必ず守ろうと、全身に力を込め、その時を待った。

ドォン!

といった銃声がビーチに響く。

そして、痛いくらいの沈黙が訪れる。

その沈黙の中であることに気付いた。

(生きて・・・る?)

信じられないがそういう事だ。しかし、素人でもこの距離は外すまいと、恐る恐る顔を上げた。

するとそこには、


「な・・・」

んだこれは、と言葉は続かなかった。何故なら、

額に穴を空けた襲撃者が立っていからだ。

「ァ・・・ガッ・・・」

声にならないうめき声を出して襲撃者は、ドサリ、その場に崩れ落ちた。

その向こうには、


「よぉ直樹、生きてるか?」


いつもの笑顔を張りつけたニ海堂純が立っていた。

「ハハッ」

思わず笑ってしまう。

「うん?随分余裕だな。今から奇襲しに行くか?」

「断る。しかも全然余裕じゃねぇし、死ぬかと思ったわ」

それもそうかと、ニ海堂もうなずく。

俺達の会話を聞いて、横口が立ち上がった。

「純!生きてたの!?」

「勝手に殺すなよ」

ハハハ!と、笑い声が響く。こんなに笑ったのは久しぶりな気がする。

「そういえばさっき追っかけて来た人は・・・え・・・?」

そこで横口の言葉は止まった。

もちろんその見開かれた両目は、もう動くことはない襲撃者に向けられている。

掠れる声で横口は声を紡ぎ(つむぎ)だす。

「こ・・・これを純がやったの?」

「そうだ」

間髪いれずにニ海堂は答えた。

これが現実がと言わんばかりに。

「な・・・何でこんなこと・・・」

「仕方ないでしょ?世界は残酷なんだかr痛い!」

某マンガの名台詞を言おうとしたニ海堂にゲンコツをかます。

いや、パクリはだめだろ?

頭を殴られたニ海堂は顔を上げ、横口の顔を見つめた。

「これがこのゲームだ、仕方ないだろ」

「だからって・・・」

「こいつはお前らを殺そうとしたろ?」

「ッ・・・」

俺と横口は揃って何も言えなくなる。

それもそうだ、この倒れている男は俺達を殺そうとした。

(だったら仕方無いじゃないか)

そんな事を考えてしまう。

けれど横口は口を開いた。

「そんな事を言ってるんじゃないよ」

ニ海堂は少しだけ意外そうな顔をした。

「なんで・・・私たちのせいで純が人を殺さなくちゃいけないの?」

俺は少なからず驚いた。

つい数分前に殺されかけて、今は生きているというのに横口の目には少し悲しみの色が浮かんでいた。

ニ海堂も少しの間口を閉じていたが、やがて口を開き、こう言った。

「結衣は優しいな」

その言葉を聞くと、横口はみるみる顔を赤くして俯いて(うつむいて)しまった。

え、何このラブコメ展開。こういうのほんと苦手なんだけど・・・

「でも俺は止めない」

ニ海堂の両目は決意した男の目になっていた。

「このゲームをクリアして、帰って、そんでお前ら二人とまたバカ騒ぎがしたい。そのためならなんだってやるよ」

そして笑いながらこう告げる。

「俺は止まらねぇぜ?」




――とりあえず俺達はこの場を離れ、また森の中に入っていった。

もちろん、襲撃に合わないように。

草をかき分けながら歩いていると、ふと一つの疑問が浮かんだ。

「なぁニ海堂」

「ん?なんだ?」

「お前どうやって俺達見つけたの?」

あぁ、とニ海堂は頷いた。

「その説明はチーム組んでからの方がしやすいな、今やっちまおう」

立ち止まったニ海堂はそう言いつつ、自分の腕時計を操作していく、ピッ、ピ、と短い電子音が数回続くと、俺と横口の腕時計が同時にピッ、と鳴った。


『チーム申請が来ています。 FROM NIKAIDO』

OKorNO?


デジタルに表示された名前を見て、俺はニ海堂に話しかける。

「本当にいいんだな?」

そう聞くと、ニ海堂はやれやれと首を横に振った。

「しつけーぞあらちん、大丈夫だっての」

意を決してOKを選択した。

横口は最後までためらっていたが、やがてOKを選択した。

すると腕時計の表示が変わった。


YOUR POINT     『0/6』


TEAM POINT     『3/59』


ノルマの表示が変わった。

英語を見る限り、上が俺のポイント、下がチームのポイントってところだろう。

「つーか・・・はぁぁ!?」

チームポイントと表示された数字は59これはいくらなんでも高すぎる。

「横口ってノルマいくつだっけ!?」

「え?え~っと、3かな?」

つまりニ海堂のノルマは50という事だ。

「高すぎんだろ・・・」

驚きがおさまらない俺にニ海堂は話しかける。

「いや、そこじゃなくて他に」

「他?」

うーんと唸りつつまた腕時計を見つめた、すると、

「何で3?」

横口が呟いた。

確かにその通りだ。ポイントはニ海堂が倒した一人だけ、つまりは1ポイントの筈だ。

「それがお前たちを見つけた方法だよ」

そう言ってニ海堂はウエストポーチをガサゴソ探りだした。

「ほれ」

出てきた物は、

「鉄砲だ・・・」

横口が少し驚きながら言った。

それもそのはず、ニ海堂の手には自分のを抜いた四丁の銃が握られていた。

「お前たちに会う前に三人のプレイヤーと遭遇してな、いきなり襲い掛かってきたから、返り討ちにして銃は奪っといた、ちなみにさっきの奴のも。元々俺らの銃は全部同じ奴だから使い勝手も変わらんだろうしな」

淡々とした口調に俺はまた驚いた。

(つーか強すぎんだろこいつ・・・)

随分頼もしくなったものだと感心していると、

「結局なんで見つけられたの?」

横口がニ海堂に問う。

「奪った銃が四丁なのにポイントは3って事だろ?」

すかさず俺が答えた。

ご名答、といったニ海堂の声と、なるほどー、といった横口の声が同時に上がる。

「つまりそういう事。サーチでポイントを使ってお前らの場所を見つけて、そっちに進んでたら銃声が聞こえたから急いでみたらお前らが襲われてた訳」

「なるほどな」

これで納得がいった。するとつまりサーチって機能はかなり便利だな。

「じゃあ今から地図にある湖に行こうと思・・・伏せろ!」

ニ海堂が吠えながら俺達の頭を下げさせた。

「痛っ・・・」

思わず声が出る。それほどの勢いだった。

その瞬間、

バリバリバリッ!!!

と銃声が響き、さっきまで俺達の頭があった場所に無数の銃弾が飛び交う。

頭が状況を把握する前にニ海堂が話しかけてきた。

「いいか、ここを動くな。やばかったら逃げるなり反撃するなりしていいけど隠れてろ!」

そう言うとニ海堂は立ち上がって両手に銃を持って茂みから飛び出した。

直樹は頷く事しかできなかった。

隣で伏せている横口も手を伸ばそうとしたが、すぐに引き戻した。

(俺達は・・・弱い)

直樹は悔しさで歯を噛みしめた。


また、戦いが始まる――


次回から投稿の間隔がかなりあくと思いますが、みなさんまた見に来てくださいね!

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