上陸~五話~
いきなりだが、みんなはスカイダイビングをしたことはあるだろうか?
テレビとかでたまに見たりもするだろう。その名の通り、飛行機でスカイしてダイビングするあれだ。まぁ、普通は無いと思う。
俺は基本的に絶叫系のマシンが苦手な人間である。
なので遊園地のジェットコースター等もあまり乗らない、いや、乗れない。
仮に乗った(無理やり)としても固定バーにしがみついて、「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくないぃぃぃぃ!!!」といった感じになる。
だから絶叫系は嫌いだ。
うん。大嫌い!
「嫌いだっつってんだろうがぁぁぁ!!!」
そんな声は空へと消えていく。
なぜなら、足場を失くした俺、横口、ニ海堂は目算で百メートルは優に超える上空からまさにスカイしてダイビング中だからだ。
しかし、ビビっている暇なんてない。早く何とかしないと、
「うおっ!」
乱気流に飲まれたのか、体がグルグルと回る。
(ヤバい!このままじゃ離れ離れになる!)
手を伸ばしながら叫んだ。
「横口!」
俺の声に気付いた横口も必死に手を伸ばすが、あと少し届かない。
(どうすれば・・・)
その時ふと背中に何かが当たっているような気がして振り向くと、そこにはニ海堂がいた。
「そっちは任せたっ!」
そう言ってニ海堂は俺の背中を蹴り飛ばした。
「ぐ・・・おぉっ!」
パシ!と、二人の手が届いた。
だが安心はできない。
「ニ海堂!」
自分を蹴り飛ばした張本人に顔を向け、手を伸ばすが、届かない。
「大丈夫だ!後で合流する!」
そう叫んでニ海堂は落ちていった。
「ニ海堂!!!」
「な、直樹・・・」
横口に名前を呼ばれたので、顔を見た、すると指は地表を示している。
「ど、どうすんのこれ・・・」
確かにこんな高さから落ちたら百パー死ぬ。
もう一度横口の指の向きに顔を向けると、
「でっか・・・」
眼下には巨大な島があった。
(あそこがステージか?つーか、このまま落ちたらゲームもクソもねぇだろ!)
ああ、なんでこんな怖い目に・・・と、自分の運命を呪っていると、服がピーッ!と鳴った。
「自動開傘装置、起動」
機械的な声と共に俺の服からパラシュートが飛び出した。
「うおおおお!!」
(なんだこれ?こんなハイテクな服俺持ってたっけ?)
考える間もなく落下速度が減速。隣を見ると、横口の服からもパラシュートが出ている。
「な、何とかなりそうだな・・・」
「だ、だねー・・・」
そんな事を言いながら、横口とフワフワ落ちていくと、あることに気付いた。
(飛行機が・・・全部で五台?)
俺達が乗っていたのを引いたら、四台余る。
(俺達の飛行機に百人ぐらいいたから、全部で五百人ぐらいいるって事か)
かなり、多い。
つまり、プレイヤーとの遭遇率も上がるってことだ。
「あ、直樹!そろそろ地面!」
「地面っていうか・・・木じゃね?」
そんな事をボヤきながら俺と横口はジャングルに突っ込んだ。
――直樹と横口のパラシュートが開く少し前の事。
(ちっ、いきなりはぐれちまったか)
ニ海堂もまた地上へと落下していた。
(宮本の奴・・・本当にこんなことを始めるなんてな・・・)
落下中にこんなにリラックスできるのは彼以外ではかなり稀であろう。なぜなら、彼はまだパラシュートの事について知らされていないからだ。
ニ海堂は右腕に付いている腕時計に手を伸ばし、ノルマを確認するため、右上のボタンを押した。
そこに表示されたのは、
『0/50』
圧倒的な戦闘力。この数字が示しているのはそれだけのことだった。
この数値は直樹の約八倍にも及ぶ。
それを見たニ海堂は、
「ハハッ!」
笑っていた。
(面白いじゃねーか。直樹たちを守りつつ、このノルマを達成ねぇ。とんだムリゲーだな)
それでもニ海堂は笑う。
「まぁ、せいぜい楽しむとするか!」
その言葉が合図だったかのようにパラシュートが開いた。
そしてニ海堂もまたステージへと降り立った。
――ガサガサ!ドシャーッ!
浮遊感が消え、地面への着地の衝撃が足に響いた。
「いてて・・・」
(何とか着地できたみてーだけど、枝とかで色々ひっかかっちまったな)
パラシュートを外しながら自分の体を見る。
服を見ると、少し切れている箇所もあるようだ。
(っと、それより・・・)
「おーい、横口ー、無事かー?」
今気づいたのだが、一緒に落ちたはずの横口がどこにもいない。
まさか違う場所に飛ばされた?と、少し不安になっていると、
「た、助けて~・・・」
パラシュートが木に引っ掛かり、見事にぶら下がっている横口がそこには居た。
――木から横口を降ろし、二人で話し合った結果、とりあえずスマートフォンについて見てみようという事になった。
「何から見てみる?」
横口に聞かれて俺は少し考える。
「うーん、ここは普通にゲーム詳細でいいんじゃないか?分からない事があっても困るしな」
ということでゲームの詳細について調べる事にした。
四つあるアイコンの内、『ゲーム詳細』と書かれてあるアイコンをタッチしてみた。
そしてしばらく経つと、文章が目に入ってきた。
「ゲーム詳細」
まず始めに、スマートフォンにあるアイコンについて説明します。
・ランキング
これはその名の通りにプレイヤー内でのランキングを表示します。
ランキングで表示されるのは、そのプレイヤーの所持しているポイントです。
名前と所持しているポイントが表示され、順位が分かるようになっています。
なぜ順位をつけているかと言うと、殺害したプレイヤーがポイントを持っていた場合、そのポイントがボーナスとして自分のポイントに加算されるからです。
なので、ポイントの高いプレイヤーを狙うのもありかもしれませんね。けれど、ポイントが高い=強いプレイヤー、ということなので十分に注意してください。さらに、殺害したプレイヤーがチームを組んでいた場合、そのチームメンバー全員を殺害しない限りボーナスはありません。しかし、チームメンバーを全員殺害した場合は、そのチームのポイントが全て加算されます。
・サーチ
次はサーチについての説明です。
先程のランキングの説明で、ポイントの高いプレイヤーを殺害すればサービスがあると言いましたが、どうやって見つけんだよ!!!と、考えたのではないのでしょうか?その心配は無用です。
このサーチも名前の通りにプレイヤーを探す事ができます。しかし、一回の探査にポイントが1ポイント消費するので、使用する時は十分にお気をつけ下さい。
ちなみにサーチを使用すると五分間地図が表示され、プレイヤーの名前、ランキング順位、ポイントと共に居場所が特定できます。
・地図
次は地図の説明です。
まぁこれは地図ですね。回数制限などはないので、存分に利用して下さい。
次が最後の説明となります。
・エクストラBOX
このエクストラBOXと言うのは、GAME主催者からのささいなプレゼントです。
通常は入手できない、ゲームを有効に進められるアイテムが入っております。
それらは全て種類が異なり、島に約10個ほどありますので、存分に探し、有効活用してくださいませ。
これでゲーム詳細は終了です。
――その言葉を最後にアプリケーションが終了した。
「ルールが増えたね」
「ああ、そうだな」
軽い口調で返したが、頭はまだ動いている。
(ランキング・・・か、このルールで力関係は相当変化するだろうな・・・)
このルールが今後自分達に関わってくるかは分からないが、マメにチェックしておいて損はないだろうと、直樹は頭の中で整理しておいた。
「ねぇ?直樹聞いてる?」
いきなり話かけられて肩がビクッ!となる。
多分言葉的に、今まで無視していたんだと気づき、慌てて返答する。
「あ、あぁ。ごめん、聞いてなかった」
「だから~、純はどうするの?」
そういえばそうだ。ルールの追加とパラシュートですっかり忘れていた。
(ニ海堂の事だから無事だと思うが・・・どこにいるかはまったく見当がつかないな)
頭を抱えているとふと、あることに気がついた。
「あ、地図見てみようぜ」
そう言いながらさっきのスマホを起動させた。
(とりあえず地形を把握してからどこに行くか考えてみるか。そういえば俺の携帯どうしたっけ・・・ん?)
自分達が今いるのはジャングルだ。無数にある木の陰から何か黒光りするものが見える。
「?」
少し目を凝らすと、あるものが浮かんできた。
キャップを被った頭、服装は半袖・半ズボン、腰にはウエストポーチのようなバッグ、そして震える両の手、目は限界まで見開き、こちらを見据えているがどこか焦点が定まっていない。
――そして震える両手が持つ黒光りする何か――
答えが出るのに時間はかからなかった。
「ッッッ!!?」
とっさの判断で横口を背中から押し倒す。「キャア!」と横口が悲鳴を上げるが、そんなものいちいち気にしていられない。
バァン!!!
渇いた空気に銃声が響き渡る。
間一髪の所で倒れこんだため弾が当たることは無かったがそれでも、「二発目が来る!」と、考えてしまい、気持ちが焦り、鼓動が速くなる。
横口の手を取り、立ち上がりながら叫ぶ。
「走れッ!!!」
横口は動揺を隠せない顔でなんとかうなずき、立ち上がった。
警戒しながら、直樹は襲撃者を横目でチラリと見た。
襲撃者は銃の反動と音で少しひるんでいた、その隙に横口と共に全力で走りだす。
だが、襲撃者は止まらない―――
次こそはですね!
絶対に!絶対にバトルんで安心してください!
お楽しみに!