START ~四話~
「では、話の続きといこうか」
俺達はまだ重い沈黙を続けている。
「少し時間が押しているのでね。私からの説明はこれで最後だ。詳しい事はバッグの中にある端末に書いてあるからね」
そう言われつつバッグをあさると・・・お、あった。
タッチパネル式のいわゆるスマートフォンだな。
起動してみるが、そこには四つのアプリケーションしかなかった。
・地図
・サーチ
・ランキング
・ゲーム詳細
この四つだ。
これまた意味不明なモノがあるが、確認はあとでいいだろう。
それより先にこいつの話を聞かねば。
「では、話させてもらうよ。最後のルールは」
一気に緊張が高まる。
「チームだ」
チーム?そのままの意味だろうか?
「まぁ、そのままの意味なんだけどね。腕時計の左上のボタンを押して、チームを組みたいプレイヤーの名前を入力して相手がそれを認証すれば完了だ」
言い終わった途端、周りの空気が少し和らいだ気がした。
ここにいるやつらは全員独りになってこのゲームをやるんだとでも考えていたんだろう。
確かに仲間がいればかなり心強いと思う。
たとえ・・・このゲームで人を殺してしまっても、慰めあい、「仕方ないよな」と、励まし合える。
(だがそんなものは仲間なんかじゃない・・・ただの共犯者だ)
このチームというルールで人の死に対する危機感を失くすのがこいつの一番の目的かもしれない・・・ゲームをスムーズに進めるために。
「あー、少し喜んでいるようだが、それはちょっとおかしいかな」
何?と俺が目を細めると、
「このチームという団体、いや、グループかな?これらはノルマが全員分揃わないといけない。5+4=9みたいにね」
なんだその程度かと胸をなでおろしたのも束の間、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「さらに言うと、メンバーが死んでも、ノルマは変わらない、つまり5ポイントのプレイヤーと4ポイントのプレイヤーがチームを組み、片方のプレイヤーが死んでも、もう片方のプレイヤーは9ポイントのノルマをクリアしなくてはならないということだ」
意味が分からない・・・だからなんだ?
隣にいる横口も同じような感じでパネルを見上げている。
しかし、ニ海堂は険しい顔をしていた。
そしてすぐに思考を再開する。
(なんだ?何かあるのか・・・なにか――)
そこでとある記憶が蘇る。
――「/の後に数字があるだろう?その数字は男女や運動神経によって分けられているが、平均は5が妥当だな」――
そうか・・・分かった・・・
このチームというルール、一見なんのリスクもなさそうだが、さっきの宮本の説明でわかる事がある。
ノルマは身体能力で分けられる。
ようするに・・・言いたくはないが、どれだけ殺すのがうまいかという事であろう。
そうなると、出てくる答えは――
(つまり、弱い奴とも、強い奴ともチームを組みにくくなる・・・ッ)
宮本はさっきチームでのノルマはメンバーの合計点数と言っていた。
さらにはメンバーが死んでもノルマは減らないとも言った。
(つまり弱い奴と組んでそいつが死んだら、こっちの負担がでかくなるし、強い奴と組んだら、一気にノルマが上がる!)
「かなりエグイな・・・」
そうなると、ニ海堂はかなりノルマが高いはず・・・
ニ海堂がいた方向を振り向くと、目の前までニ海堂は移動していた。
「気づいたみてーだな。あらちん」
「ああ」
そう言って俺は目を少し伏せた。
「俺と横口は迷惑になるだろうからな。俺達とは別れて・・・」
言葉はそこで途切れた。
足元がふらつく。
気づいたら俺は座り込んでいた。
なぜなら、
「ったく、こんな頭突きも食らってるようじゃ即死だよ」
そう、ニ海堂は俺に頭突きを放ったのだ。
「で、でもそれじゃあお前が・・・」
ニ海堂は呆れたように、はぁーと、ため息吐いてこう言った。
「俺はそんな事するような奴だって思われてたのか?だったら悲しいな。まぁ、そんなの関係ない。チームってのはかなりラッキーだぜ、直樹」
初めて名前を呼ばれたことを感動する間もなく、二海堂は口を開いた。
「俺が全部ノルマクリアしてやれば済む話だしな」
目を見開いて驚愕した。
ニ海堂は俺達のために命を背負おうとしているのだ。
「そ、そんなこと――」
だめに決まってる!
そう言おうとしたが言葉は遮られた。
「さぁ、時間だ!君達若者の力を見せてくれ!そして・・・」
宮本は笑う。ショーウインドウのおもちゃを見る子供の様に。
「生き延びて、こんなことをさせた私を殺してみせろ!!!」
その言葉を合図にホールの床が収納されていった。
中心にいた奴から次々に空へと飛びだしている。
そして俺、横口、ニ海堂の足場も徐々に無くなっていき・・・
ついには、俺達も空へと放り出された。
四月二十五日 午前十二時
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