夢 ~一話~
二話
人混みを抜け、歩道に抜ける。
しばらく歩いて行くと、俺の通う大学が見えた。
国立 星村大学
まぁ、国立だからそれなりにレベルも高かったりする。
だからそれなりに努力しないと正直無理だ。俺は終盤にスパートをかけるタイプだから結構苦労したりもした。
そんな事を考えている俺に背中から声がかかる。
「グッドモーニン、あらちーん!」
と、同時にバシン!と背中に張り手をもらう。
「いってーな・・・もう少し普通にあいさつできねーのかよ・・・」
「フハハハハ!俺を普通の奴等にあてはめようなんてそいつは無理な注文だな!」
と言い、俺に合わせながら隣を歩く。
ちなみにこいつは、ニ(に)海堂 純。
大学からの付き合いでまさかの四年間クラスが一緒という事で嫌でもつるむようになった。
先ほどの会話から分かるように、国立の大学に入る程の頭はあるのだが、どこか頭のおかしい奴だ。
「ったく、春休みも終わったってのに相変わらず騒がしい野郎だ・・・」
「まぁ、俺のこの性格が春休みごときに変えられるわけねーもんなぁ!」
「少しは大人になれよ・・・」
本当にこいつの思考回路は分からない、講義の途中で「アァーッ!」って叫んだかと思えば、いきなり超ド級のおならを噴射したり、飯食ってる時に「スプーンってエロくね?」とか言い出したりする・・・これ本当にやばくね?
だけどこんな性格とは裏腹に勉強も運動もかなりできる。なのでさっきみたいな変態行動をしても嫌われたりはしない。まぁ性格もこの通り明るくてムードメーカーだからな。
そこで俺はニ海堂のある趣味を思い出す。
「そういえば春休み中もアレやってたのか?」
「もちコースだぜあらちん。この前は全国大会団体戦で優勝したぜ~!」
まぁアレと言っても分からないだろう。
アレとはサバイバルゲーム、つまりはサバゲーだ。
こいつは大のサバゲー好きで、(こいつ曰く)小学校高学年の時から銃を握って戦場(主に森の中)を駆け回っていたらしい。
「すげぇな。よくそんなに優勝とかできるよな。あれ当たったらアウトだろ?よく当たんねぇよな。」
「チッチッチ、俺を甘く見すぎだぜあらちん。ああいうのは当たる前に弾道を予測しつつ、木の陰とかに隠れるんだよ。」
「だからそんなこと普通はできねぇっての・・・」
呆れながら俺が呟く。
何度も言うようだが現在の日本技術は発達している。だから当然サバゲー用の銃だったりしても弾が速かったり、連射速度が速くなったりしているのだから、どっちにしろこいつのサバゲー能力はハンパない。
「お褒めの言葉ありがとうっ。なんならあらちんもやるか?超楽しいぜ?」
「断る。当たったら痛そうだしな。」
「だから避ければいいんだって~!」
なおも食い下がるニ海堂を無視していると校門が見えた。
「何か随分久しぶりな感じがするな。たったの数週間なのに」
と、俺がぼやくと、
「あぁ、実は俺も随分懐かしい感じがするぜい」
と、ニ海堂も口を挟む。コイツがまとも事言うなんてな・・・。
そんな事を俺が考えているのも露知らずに、ニ海堂が右眼を抑えている。かすかに「クッ、封印が・・・」とか聞こえるがスルースルー。前言撤回、やっぱこいつ頭おかしい。
そんな頭のおかしいニ海堂と同時に校門をくぐった。
この星村大学は日本の中でもかなり校舎面積がある方だ。
地理に詳しくない人ではすぐに迷ってしまうほどに広い。
そんな広い大学で俺たちが目指しているのは第ニ校舎の三階だ。
第二校舎は正門からそこまで遠い位置にあるわけではないが、それでも少し距離がある。
俺たちの周りにいた同級生達も段々と減っていった。
すると突然ニ海堂が、
「そういや俺今朝少し変な夢見たんだよ」
夢?そういえば確か俺も今朝・・・
つい数時間前の事を思い出していると、ニ海堂は続ける
「サバゲーの夢・・・かニャ?なんかやけにリアルな銃だったり血だったりが出てきた夢だったんだけどよ」
「・・・」
「まぁ詳しくは覚えてねーんだけど結構楽しかった夢だったぜ。サバゲーよりも命のやりとりをしてるっつうか」
話し続けるニ海堂をさえぎる様に俺は言う
「俺も似たような夢を見た・・・」
しばらくの沈黙。
ニ海堂もしばらく黙っていたがすぐに口を開く。
「おー!似たような夢見るとかすげー不思議体験じゃね?ハッ!もしかして俺ら相思相愛・・・?」
「死ね」
せっかくのシリアスな雰囲気が台無しだな。ニ海堂に振り返りもせずに俺は歩き続ける。
ニ海堂は少し焦ったように
「あ、ちょっと待てよあらちん。軽いジャパニーズジョークだろ?」
そんなジョークはしらねぇと、心の中で一蹴。こんなジョークがジャパニーズならこの先の日本はどうなってしまうんだろう?少なくとも誰も喜ば・・・腐女子の方は知りませんけどね。
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「どんな夢だった?俺とまったく一緒って事はないだろ?」
いきなりの真剣な声音に思わず俺は振り向く。
「で?どんな夢だったん?」
だがそこにはいつも通りのニ海堂がいた。
しばらくして俺が口を開く。
「森の中で倒れてる夢だったな。俺の・・・腹辺りから血が出てて、身動きもとれなかったんだけど、しばらくしてからでっかい銃を持った奴が来て、そいつに打たれて目が覚めたな・・・」
「そうか・・・」
ニ海堂はしばらく考えるような仕草をするとふと腕時計を見た。
「あ!やべーあらちん!もうすぐ一限目だ!」
「え?本当だやばい!急ぐぞニ海堂!」
二人同時に走りだす。
結局ニ海堂は何を気にしていたのだろうか?
心に少しのモヤモヤを抱えながら俺は走った。
二人共似たような夢を見る。
これは普通に考えればかなり珍しいことだ。だが、「偶然」の一言で片付いてしまう。
今回の件でも同じ事だ。
. . .. . ... . .... . ... .. . . . . .. . ... . . ..
だが、日本の人口の約四割の若者が無自覚とはいえ同じ夢を見るなんて事が果たして「偶然」といった言葉で片付くものなのか?
二人の少年はまだ知らない。
自分達の身に何が起きているのかを・・・
えー、第一話です。
ようやく展開が動き始めます。
本当は傍点をつけたかったですが、やり方がわからず、ゴリ押しです(笑)
ぜひ次も見てください。
よろしくお願いします。