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決意 ~九話~

お久しぶりです。

やっと時間ができたので投稿します。

少し長めになってしまいました。

あと、セリフが恥ずかしいです。

AM 6:30


ふと、目が開いた。

別に意識していた訳でもないのに目が覚める。

そして、眩しい朝日に顔をしかめた。


体を起こすと、段々と意識が覚醒してくる。

辺りを見回すと寝ている結衣やたき火の跡などが直樹の視界に入ってきた。

立ち上がって体を伸ばす。

血行が良くなってきたのか、眠気はもう消えていた。

代わりにとある事に気付く。


「ニ海堂?」


そう、ニ海堂がいないのだ。

自分達が寝ている時に何かあったのかと焦る。

結衣を起こそうか考えた瞬間、


ドスンと、鈍い音が森の奥から聞こえた。

思わず体を構えるが、しばらく経っても何も起きない。

それどころか鈍い音はドン、ドドン、と連続して鳴っている。

銃声ではない、それよりもっと低く、腹の底に響くような音だった。

(そんな遠くない)

そう考えた直樹は音の鳴る方へと歩き出す。


歩けば歩く程、音は大きくなっていく。

さらに、段々と他の音も聞こえるようになってきた。

それは息遣い、草を踏む音、それから鈍い音は少し間を開けて鳴っている。


ドスン!と、一際大きい音が鳴り、それ以降音が聞こえなくなる。

そして遂に音源の場所へとたどり着いた、そこには、


「あれ?直樹もう起きてたんか」


上着を脱いで、大樹に向かって回し蹴りを放っているニ海堂と目が合った。

「おう。そっちは眠れたか?」

ニ海堂は振り向きながら答える。

「おう、ばっちりだぜ。昨日は何もなかったしな」

「そうか」

「・・・」

「・・・」

と、一旦ここで会話が途切れる。

少し気まずい気がしたので慌てて話題を振ってみた。

「そういえば、こんな朝早くから何やってんだ?」

最初にニ海堂を見たときから感じていた事を聞いてみた。

「ああ」

そう言ってニ海堂は大樹と再び向かい合い、掌打を放つ。


ドスン!という音と共に大樹が大きく揺れる。

「いや、最近体なまってるからな」

掌打を放った体勢のままニ海堂はそう言った。

「それに」

そして今度は蹴りを放つ。

またもや大樹が揺れる。

「銃だけで倒せるとも限らないしな」

「・・・そうか」

 そう言われ、心が痛む。

 ニ海堂を戦わせているのは紛れもない、俺達だからだ。

 そんな俺を見てニ海堂はニヤリと笑い、

 「どうした直樹?もしかして俺の事心配――」

 「うにゃぁぁあああああ!!!」

 「!?」

 ニ海堂は直樹をからかおうとしたが、この叫び声のせいで言葉は遮られた。

 何事かと音の方向に目を向けると、ブウウン、と羽音を立てる昆虫に追いかけられている人影がこちらに走ってきた。

 しかもかなり全力。

 「虫っ!虫がいるっ!!!」

 と、そこにいたのは涙目となってこちらに駆けてくる結衣だった。

 相当焦っているのか、速度を緩める事なくそのまま――

 「ちょっ、お前止まれ――」

 

 そんな呼びかけも結衣には届かず、ズドーン!という派手な音と共に直樹は結衣に跳ね飛ばされた、目算で5m。ラグビーかよ。

 ズザザァ、と音を立ててようやく体が止まる。

 「いててて・・・」

 尻餅をついたまま思わず唸った。

 それを見た結衣が

 「大丈夫・・・?」

 と心配そうに聞いてきた。

 その顔を見ていると怒る気にもなれなかったので、とりあえず言う事だけ言っておいた。

 「あのなぁ・・・なら突っ込んでくるなよ・・・」

「・・・ごめんなさぃ~・・・」

 弱々しく結衣が誤ってきた。

 「ふ・・・ハハハ!」

 そんなやりとりを見ていたニ海堂がいきなり笑い出した。

 それを見た横口もつられる様に、

 「・・・えへへへ」

 と笑い出す。

 「ったくよー・・・はは」

 直樹もつられて笑い出す。

 そしてしばらくの間、森の中に軽快な笑い声が響いた。

 



AM 7:30



 ひとしきり笑いあった三人は、そのあとに朝食を食べ、今後の予定について話し合う事にした。

 もちろん仕切るのはニ海堂。

 「まず、今日この後の行動についてだ」

 と言ってニ海堂はスマートフォンに地図を表示させてこちらに見せてきた。

 丸いこの島の中心には大きな火山があり、それを囲うようにジャングルが広がっている。

 だが、地図をしばらく見ると所々にポッカリと穴が開いたかのように森が無い場所がある事に気が付いた。詳しくは分からないが、そこには「何か」があるのだろう。

 そんな俺の考えを察したのかの様にニ海堂はこう話す。

 「この五日間、こんな広い島を全部回る気は無いが、それでも最低限の地形を把握しておきたい」

 そういうとニ海堂はつーわけで、と付け足した。

 「今日はこの森が無い場所を回りたいと思う」

 言いながらニ海堂は地図上のある一点を指さした。

 そこにはもちろん詳細などは書かれていない部分だった。

 「そんでここから一番近いここに今日は向かう」

 「分かった」

 「うん」

 「そこでだ」

 そう言ってニ海堂は自分のポーチからある物を取り出した。

 それは、

 「手榴弾?」

 ぼんやりとした感じで結衣が呟く。

 「だけじゃないぜ」

 二海堂はニヤっとしながら再びポーチに手を入れる。

 そこから出てきたのは先ほどの手榴弾よりも長くて細いものだった。

 「?」

 横口はそんなものとは縁がないのだろう、また不思議そうな顔をしてそれを見ている。

対して俺は何かの映画で見たことがある。あれは――

「閃光弾・・・か?」

少し自信なさげに呟く。

「正解」

二海堂は再び笑いながらそう言った。

「煙幕を出すタイプもある」

そしてこれで合計三種類の手榴弾が並べられた。

「いつこんなもの手に入れたんだ?」

「もちろん答えるさ」

そう言うと二海堂は自らのスマートフォンを見せてくる。

そこに表示されているのは一通のメール。



◆ランキング上位者へのご通達◆



このメールは一日目を終えた時点でランキング上位数名の方々のみにご通達されているものです。

唐突ですが、日付が変わる時点でのランキング上位者には我々からの「アイテム」が送られます。

本日は「手榴弾」ということになっております。

今回は上位者全員同じ「アイテム」ですが、二日目からはランキングが上位になればなるほど良い「アイテム」が支給されます。



「アイテム」はあなた様の周囲五メートル以内に配布しました。

ゲーム攻略に役立ててくださいませ。



――「という訳だな」

そう言いつスマートフォンを仕舞う二海堂。

そして、口を開く。

「これは直樹、お前が持っていてくれ」

そう言いながら三つの手榴弾の内一つを手渡す。

それは煙幕を放出するタイプの手榴弾だった。

しかし、手渡された直樹にとっては戸惑いと驚きでしかない。

「は!?何で俺がこんなの持たなくちゃならないんだ・・・?」

思わず疑問を発した直樹に二海堂は冷静に答える。

「もしもの時・・・例えば俺が死ぬ時のことを考えてくれ」

「「・・・!」」

 いきなり発せられた言葉に直樹と結衣は黙り込む。

 しかし、二海堂は変わらずに続ける。

 「この三つの手榴弾はかなり使えるアイテムだ、直接的な攻撃だけじゃなく、敵の不意を突くことだってできるし、逃げることにも使える」

 二海堂はそこまで言い、だから、と付け足す。

 「俺一人が全てを持つことは流石にリスクが大きい」

 二海堂はそう言い放った。

 しかし、直樹の中にはまだ疑問があった。

 「けど・・・何でお前が全部の手榴弾を持つことでリスクが大きくなるんだ?一番強いお前が持っていて悪いことなんてない、そうじゃないのか?」

 直樹がそこまで言うと、二海堂は変わらない調子で続ける。

 「最初に、俺が死んだ時のことを考えてくれって言ったよな」

 そこまで言われて、ようやく二海堂が伝えたかったことを直樹は理解することができた。

 「直樹はもう分かったか、そうだ、俺が気にしているのはコレを使いこなせるかどうかなんかじゃない」

 (ひと)呼吸置いて二海堂は言う。

 「もし俺が死んだ時、この三つの手榴弾が他の奴らに奪われることを気にしているんだ」

 「・・・」

 「さっきも言ったが、コイツはかなり役に立つ、それを全部持った俺が死ぬっつーことはコイツらが一気に全部奪われるってことだ」

 

二海堂の口調がだんだんと真剣になっていく、そのため直樹と結衣も思わず黙り込んでいた。


 そんな二人に二海堂は淡々と事実を述べていく。

 「もう一度言う」

 続けて二海堂は強く言い放つ。

 「直樹、これはお前が持っていなくちゃならないんだ」

 そして、続ける。

 「俺が死んだら、コイツを使って、俺を見捨てて逃げ出してもいい・・・俺の代わりに結衣を守ってくれ」


 最後の言葉には今までとは違う真剣さが宿っていた。

 二海堂は自分達を守るために己の命を捨てることすら想定(そうてい)していたというのだ。

 思わず直樹は叫ぶ。


「ッ・・・二海」




「なら、私死んだ方がいい!!!」




一瞬、直樹は誰が発した言葉なのか分からなかった。

だが、思わず口を閉じてしまった。

隣を見ると、目に涙を溜めた結衣が(うつむ)きながら立っていた。

そして意を決したように顔を上げ、言葉を放つ。

「純が・・・純がそんな風に考えてるなら私、死んだほうがいいよ!」

二海堂は黙ってその言葉を聞いている。

「確かに私は足でまといだよ?鉄砲なんて撃てないし、直樹と純がいなかったらもう死んでた!・・・今ここに私がいるのは二人が居たから」


そして結衣は泣きながら声を出す。

「寝てる時だって・・・起きたら純と直樹が死んでるんじゃないか、ってすごく不安になって・・・怖かった・・・だからッ」

「・・・」



「思ってたとしても・・・死ぬなんて言わないで・・・」



「・・・」

結衣の言葉にはこの島に来てからの強い不安が込められていた。

二海堂はそんな結衣の言葉を静かに聞いていた。


噛み締めるように、胸に刻み込むように。

いつの間にか静寂が訪れ、結衣の嗚咽(おえつ)だけが辺りに響いていく。

しかし、


「泣くなよ、結衣」

直樹がその静寂を破った。

そして、結衣の肩に手を置く。

「大丈夫だ、俺も二海堂も簡単には死なねぇからよ」

結衣は顔を上げ、直樹の顔を見つめる。

「でも・・・」

「大丈夫だ、信じろ」

希望的な考え――。

直樹が言った言葉は根拠も確証も保証も無い、至極普通の励みの言葉だった。


冷静で冷徹な者ならこう言うはずだ、下らない、と。

しかし、その言葉には。

「・・・うん」

目の前の少女を助けたいと願う者の言葉には。


「・・・信じるよ」

不思議と信じたくなる様な「何か」が込められていた。

そして直樹は二海堂へと向き直った。

「コイツは俺が預かるよ」

手にあるのは先ほどの手榴弾だった。


「けど、」

直樹は続ける。

「コレはお前を見捨てる為じゃない、俺達が生きるために使うんだ・・・だろ?」

「・・・」

二海堂は黙って聞いている。

しかし、ふぅ、と息を吐くと諦めたかのように口を開いた。

「ったくよー、これじゃあ俺が悪役みたいじゃねぇかよ」

そして笑いながら告げる。

「分かったよ、全員で生き残る・・・けど、足でまといになるなよ?直樹」

そこまで言ったところで結衣が一歩踏み出しながら口を開く。

「私もがんばるよ!」

そう言いながら二海堂と結衣は二人で直樹を見つめた。

そして直樹も口を開く。


「もちろんだ」



「行こうぜ」



次回はバトルですね・・・多分。

新作の方もなるべく出そうと思っているのでそのときはよろしくお願いします。

ではまた。

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