ある日少年は夢を見た ~プロローグ~
冷たい。
何もかもが冷たい。
どこかの樹海の中でそんな事を思っていた。
雨が降っている、ザァーザァーと耳障りな音が聞こえる。
倒れている俺の体温を急速に奪っていく。
雨が俺を中心とした血だまりを流していく。
その中で音が一つ増えた。
落ち葉を踏む音。
段々と大きくなっていく音。
音が消えて、顔を上げると一人の男が立っていた。
男は一メートルを超える銃を持っていた。
男が照準をこちらに向ける。
どこかに雷が落ちた。 一瞬辺りが明るくなるがフードを被ったこの男の表情はこの位置からでは分からない。
「クソったれ」
もう誰にも届かない声を出した。
そして轟音、暗転
というところで俺は目を覚ました。
「夢オチかよ・・・」
自分の掌を見つめる。
「嫌な夢だ」
明るい日差しの中でげんなりと俺は呟いた。
一階のリビングに降りてカーテンを開ける、やはり朝日はいいもんだな、と心の中で呟く。
キッチンに立ち、朝食の準備をする。
独り暮らし四年目の料理スキルを発揮し、次々と料理を作っていく。
俺は朝には白米派なので、もちろん海苔や味噌汁も忘れない。
なんだよ「朝はパン♪」って、どう考えても「朝は白米♪」だろ!絶対このフレーズを世の中に広めてやると密かに野望を抱きつつ、俺は椅子に座る。
「いただきます」
今日も朝が始まる。 朝は白米♪!
朝食を終えた俺は、食器を片づけて制服に着替える。そして戸閉まりをしてから家を出る。
俺の愛車であるイエローマウンテンにまたがり・・・いややっぱりかっこいいでしょ?イエローマウンテンは?やぁやぁ持ち主の僕も照れっちゃうなぁ!と、無駄に高いテンションで家を出る。
住宅街を抜け、ながーーーい大通りに出る。何故こんなに長く伸ばしたのかというと、本当に長いから、それ以外に理由なんてない。いや、本当に長い。キ●グ・●●●●ンしたいレベルに長い。まぁさすがに毎日通えばさすがに慣れるので、難なく俺は通りを進む。
なんでこんなに説明口調なんだろう?しかも名前言ってないし。
じゃあ自己紹介にしよう。
荒澤 直樹。それが俺の名前だ。
年は23歳の大学生だ。19歳に大学入学と同時に独り暮らしを始めた。
家族は母親、妹、父親の4人家族・・・だった。俺が中学に入学した時に親父が謎の失踪をとげて消えた。失踪をする理由なんて微塵も心当たりがないと家族全員で思ったが、時が経てばそんなものは忘れてしまう。母さんは普通に仕事をするOLだったのが幸いして、特に生活にも苦しまなかった。と、そこまで考えるといつの間にか駅に着いていた。
改札、いや正確には駅員が立っている学生用の改札を軽く会釈をして通る。ピピッ、と小さな電子音がすると、改札を通り抜けた。本当に通り抜けただけだ、ほかに何もしていない。ICカードを使ったりもしていない。
2516年の日本では、そんなものは必要ない・・・学生は。
7~8年ぐらい前に日本政府は学生へのさまざまな特権を与えた。その一つがこれと言うわけだ。ちなみにピピッと鳴ったのは制服だ。今の時代はそのくらいに発達している。
そのような考え事をしていると電車が来た。この電車も100%電気で動いているらしい。
車内に乗り込むと、電車内のテレビに目を向ける。そこには現在の首相、宮本 修造が演説をしていた。
「皆様!若者の力ほど無限の可能性はありません!もっと若者達が力を発揮できるような社会を!」
ワァーッ!と歓声が上がる。歓声を上げている人々は明らかに若者といった雰囲気ではない。若者でない人達がなぜ若者達が住みやすい社会を望むのかは分からないが、かなり異常だ。と、思っていた。
そんな考えは頭から消えて、車内の扉が開く。
ドッと、学生達が流れ出る流れに飲まれながらも、出口に向かい、ホームに立つ。
新学期だ。
春に咲く桜が俺を迎えてくれている。呑気な俺はそんな事を考えていた。
後に始まる「GAME」の事、今朝の夢の事なんて、そんな俺には考える余地もなかった・・・
初めて書いてみました。
よければ見ていただきたいです。