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05 依頼ついでの探し物

『うっわー……』


 皐月が【黒の神殿】に来て最初に発した言葉はそれだった。【赤】から街中にかけての中世ヨーロッパを彷彿させるような風景に、海外に行った事の無い皐月は興奮しきりだったが、流石にここは興奮の許容範囲を突き抜けたらしい。


『ここは無駄に広い。迷うなよ』


『いやいやいや!?なんだよ此処!さっきの赤いトコとは大違いだろ!?なんでこんなデカイんだよ建物!』


『騒ぐな煩い。ここは禁書の保存も兼任してる所為で蔵書量がヤバいんだよ』


 皐月の呆然っぷりの原因は【赤】の2倍はある神殿の面積の問題だった。元々宗教都市として開かれたアッシュグロリア(聖都)は完全に作られた当初から役割を決められていた。―――が、流石にその役割次第でこうも面積が必要になるとは先人達も考えて居なかったらしい。圧迫していく禁書(信仰に逆らっている内容ではなく、希少性や劣化の問題で禁書指定されている)は次第に住居スペースまでもを占拠しかけたらしく、300年程前に此処と【白】だけが改修・増築されたのだ。


「やっぱり驚いてるよねー。いやぁ、エストが入って来た時もこんな反応だったよね」


「普通驚くだろ……」


 ケラケラと笑っているカリンにうんざりとした顔を向け、重苦しく溜息を吐いてから後悔した。幸せが逃げてしまったではないか。

 騒いで少し落ち着いたらしい皐月はまたもや興味に釣られキョロキョロと辺りを見回してはiPhoneを片手に連写しまくる。だが彼女は此方では充電出来ないという事を理解しているのだろうか?


『皐月、適度に撮ったら電源落とした方が良いと思うが』


『え、あ、そっか。一応予備の充電器あるけどそれ尽きたらこっちじゃ充電出来ないもんな』


 ポン、と手を打って、一旦電源を落とす事にしたようだ。カリンがその様子を興味深そうに覗いているが、彼女は恐らくコレで今まで何をやっていたかは分かっていないだろう。分かってもどうしようもないのでエスト自身説明を放棄している。そもそも彼にしては、今日の口数の多さは異常とも言える域だ。普段の生活を振り返ると、丸一日相槌だけで済ませた事すらもある。


「サツキちゃん、そろそろ行っていいって?」


「多分な」


 ひとしきり撮り終えたらしいのでまた歩を進め、中へと入って行くがその景色は日本では決して見られないような物だ。年月を感じさせない真白な外装と深い青の屋根。最早城かと疑う域で芸術だ。確かに先程居た【赤の神殿】も芸術的だったが、これは格が違う。フランスの大聖堂も目じゃない。


『……黒とかいう名前だからてっきりイタリアのサンタマリア・デッラ・コンチェツィオーネみたいなのかと思ってた』


『外装が真っ黒だとでも思ってたのか?』


『いや、外観は超地味な教会。ただ中がぶっ飛んでて、祭壇の飾りから天井のアーチまで全部人骨で出来てんの』


『…………お前はどこでそんな知識入れて来た』


 勿論ここの内部がそんな事になっている筈も無く、外観と同じ真っ白な壁と芸術的な彫り方をなされた柱や神々を描いた絵画が所々飾られている。光を取り込めるようにステンドグラスが殆どの場所に施されていて圧巻の一言だった。何度も言うが人骨などどこにも飾られていない。


「うーん、サツキちゃん凄い目輝いてるね……聖都の外から来た人は皆同じ反応だなぁ」


「そりゃ外でここまでのは見られないからな。立地的に湖が綺麗だとかはあっても、建物に此処までは凝らない」


 御上りさん丸出しなカリンに道行く神官達がニコニコと微笑んで通り過ぎて行く。自慢の神殿を気に居られて鼻が高いのだろう。温和な彼等が全員Lv50以上の猛者だとは誰も思うまい。


「ラジェット司祭が居るならここかな」


 とある扉の前で立ち止まり、重厚な扉をカリンが開いた。木製の高い本棚が並び、机の上には報告書だろうか、無造作に紙の山が置かれている。そんな中に本を片手に佇んでいた一人の司祭が此方に気付いたようで振り返った。司祭ラジェットは柔和な笑みを浮かべて二人を迎え、だが直ぐに後ろの皐月に目を向けて不思議そうな顔をした。


「おや、御二人ともお帰りなさい……後ろの方は?」


「その事について話がある。今いいか?」


「ええ、どうぞ其方へお掛け下さい」


 快く受け入れたラジェットは空いているソファへ3人を誘導する。エストに促されて皐月も座るが、歴史を感じる蔵書の数々にしたくたと落ち着かない。


「……で、彼女は何方の方ですか?」


「……まず、順に話そう。オレは依頼通り【真名】を以て【浄化】を完了させた。が、どうも剣に引き摺られたらしくてな、暫く呆けてたんだが……そこで唐突にコイツが【召喚】された」


「【召喚】!?という事は【チキュウ】の【異世界人】!?」


 こくりと深く頷いたエストの無表情を見て、唖然としたままラジェットは顔を覆う。奇抜な恰好をしていると思ったが成程異世界人なら納得だ。だが史実の中でも殆ど記されていない、お伽噺扱いも良い所な存在が自分の目の前に居るというのは全くもって実感が湧かなかった。


「……取り敢えず、理解はしました」


「ただし問題が一つ。コイツ―――皐月・如月は此処の言葉を理解していない」


「今までどうやって意思の疎通を?」


 自分の名前が呼ばれて振り返った皐月を凝視してラジェットは問う。此処まで連れて来るのに混乱が起きて居ない所を見ると何かしら対処されていたと思うが……


「オレがコイツの故郷の言葉を喋れるからどうにかなった。だが常にオレにへばり付いている訳にもいくまい」


「あぁ……流石はエスト君。神聖文字を理解出来ただけはありますね。と、いう事は目下の課題は翻訳スキルか、それに準ずる何か、ですか……」


 うーん、と考え込む素振りを見せるラジェットを眺めていると、横から服を引っ張られた。何だ?と振り向くと隣に座っていた皐月が訊いてくる。


『今何の話してんの?』


『お前がこっちの言葉を理解出来るようにするにはどうするか』


『あー、付け焼刃で覚えるにも時間がかかるしなぁ……』


 異世界語取得、なんてテンプレートなスキルは残念ながら手に入らなかったお陰で地味な苦労だ。テンプレ異世界!と皐月は叫んでいたがこの辺りは世知辛い。


「今思い浮かぶ限りでは、ええと少々お待ち下さい」


 そう言って立ち上がり、奥の方へと何かを探しに行ってしまった。それを眺めていると、待つ事数分、目当ての物が見つかったようで戻って来る。持って来たのは分厚い本だったようで、パラパラと広げて此方へ見せて来た。


「此方なら用意可能かと。少々手間はかかりますが、故郷へ帰る手立ての無い彼女の事を思うなら言葉だけでも通じさせてあげたいですからね。恐らく大司教様も許可して下さるでしょう」


「……あ、一度見た事ある!商人の人がたまーに高額で引き取って使ってる外国人とか別種族との意思疎通用アイテムですよね」


「はい、名を【精霊の知恵スピリトゥス・スキエンティア】と言いまして、一部合成するアイテムが面倒な所に群生しているのですが……まぁ【黒】の実力があれば問題無く採取可能でしょう。」


 そう言われて材料の部分に目を通すと、成程面倒な代物が勢揃いしている。顔を顰めて本と睨めっこをしていると横から皐月が興味深そうに覗き込んで来た。


『見つかった?』


『ああ、だが時間がかかるな。涙水晶、星粉の水溶液、硝子草辺りは値段は兎も角、一応王都で出回っているから問題無いが、音楽豆と綿雨の雫は国一つ跨がないと手に入らんな……』


『うわぁ名前が超ファンタジー』


 名前を聞いただけでは想像すら出来ない物に興味は尽きない。彼方では夢想するだけだったモノが満ちているのは好奇心を刺激した。


「で、それを採りに行くようならお願いが」


「何ですか?」


 ラジェットの浮かべた笑みにエストは何となく嫌な予感がした。こういう予感は外れた例が無い。


「御二人が【赤】へ向かっている間に【緑】から【霧】の浄化命令が来ちゃいました。丁度綿雨の雫が降る辺りなので是非お願いします!」


 そんな事だろうと思った。疲れている身体が更に重みを増した気がする。手で目元を覆って溜息をつくとカリンの空笑いが聞こえた。


「あ、ははー……分かりましたけど一日休みは貰えます?エストが大分へばってるので……」


「あぁ、【真名】解放は矢張り堪えましたか……尤も、その点は心配いりませんよ。今回は任務の都合上【赤】と合同です。彼方が編成を考える為にも、明日は元々出られませんでしたから」


 合同とは珍しい。しかも【赤】と合同となると、ただの【浄化】ではなさそうだ。こうなると主に切っても【浄化】しない限り増殖する植物系が侵された時が多い。アレ等は燃やさない限り絡みつくわ毒を撒くわで【黒】所属の魔導士では大惨事になるのだ。


「なら私は大丈夫です。エストは?」


「……そんな危険地域にコイツ連れてって、【赤】には迷惑じゃないのか?」


 エストという通訳無しではまだ慣れて居ない皐月を普通に生活させる事すら難しい。となると自分達の旅に連れて行く事は必須だ。だが、自分とカリンだけならまだしも【赤】に迷惑をかけるとなると問題だ。


「まぁ神殿の人間です。彼女の境遇を知れば必ずや喜んで護衛するでしょう。全ては神の御意志ですが、彼女のような不憫な運命の者を捨て置くようでは神殿兵(クルセイダー)なんて名乗りを挙げられません」


 その言葉に確かに納得した。良く考えなくてもここは聖人君子の塊みたいな場所だ。信仰心も厚いし、貧しい者に幸いあれと願うのが当たり前な此処で彼女を迷惑扱いする筈も無かった。因みに信仰心で言えばエストは神殿で1、2を争う信仰心の薄い人間だ。その辺りは現代日本社会っ子(リアリスト)である。


「では向こうに話を通しておいてくれ。それと、皐月用の部屋を―――そうだな、オレの隣の部屋が空いていた筈だ。そこに頼む」


「……エスト君ですから問題は無いですね。どうせ襲う度胸も無いでしょう」


「…………それが神殿の司祭の言葉か?」


 思いっ切りアウトな台詞だろう、それは。色々と問題な台詞に無表情を崩して睨み付けた。さり気なく自分まで罵倒された気がする。いや、皐月を襲う気なんて欠片も浮かばないが。寧ろコイツに近寄りたくないとさえ思っている。


「それはさて置き。サツキさん?に通訳をお願い出来ますか?」


「あ?ああ、構わんが」


 唐突でついていけなかったが取り敢えず了承すると、優しく微笑んでラジェットが皐月を見つめる。それに気付きキョトンとした彼女へ、ラジェットは口を開いた。


「サツキさん、此処での暮らしは恐らく慣れない事も多く大変でしょう。ですが、私達神官及び神殿兵(クルセイダー)で全力を以て支えます。どうか、貴女に神の御加護が在らんことを」


 エストがその言葉を翻訳し直して伝えると、目を大きく見開き、嬉しそうに笑った。そして思い切り頭を振る。


「何コレ超ファンタジーいやっほぉおおおお!」


 上に。

 神聖な雰囲気をものの見事にぶち壊された。え?と目を点にしたラジェットとカリンの視線が痛い。あんまりすぎる幼馴染に頭痛が止まらず、エストは無意識の内に持っていた本を振り上げ、思い切り皐月に角を叩きこんだ。


『黙れこの馬鹿月!』


『ってぇええええ!!なんだよアホサク!角は無いだろ角は!』


『殴りたくもなるわ。空気を読めKY!』


『うっわKYとかふっるー。朔夜君は時代遅れですねーぷぷー』


『テメエは知恵遅れだがな。五歳児でもこの位の空気は読めるわ!』


『なにおぅっ!』


『事実だろう?あぁ、知恵遅れなんて言ったら知恵遅れの人に迷惑か。こんなのと一緒にしたら可哀想だ。謝らねばな』


『てっめ言わせておけば……!』


『ああ?やんのか?』


 ヒートアップしてガンの付け合いにまで発展した二人を見て、カリンとラジェットはこんなセリフを漏らしていた。


「……エストがこんなに怒る所初めて見た」


「いえ、コレ、じゃれてるのでは……?まぁ確かにこんなにエスト君って大声挙げれたんだなぁとは思いますが。というか私エスト君が10にならない頃から見てますけど、こんなに幼稚な事してる時ってありましたっけ……?」


 普段冷静な人物がこうも豹変するのか、と謎の感動を抱いているがそろそろ止めなければ取っ組み合いでも始まりそうだ。今まで見て来たのは何だったのだろう、と本気で首を傾げる仲の悪さである。

 ラジェットがパンパン!と大きく手を叩くと不機嫌そうな二人の顔が同時に向けられた。案外似た物同士なのかもしれない。


「ほら二人とも落ち着いて下さい。今は話を進めなければ」


「……チッ」


『……通訳』


『……今は話進めるのが先だから落ち着け』


『……しゃーねーな』


 渋々椅子に座りなおしたのを見て内心安堵した。まだ理性は残っているようで何よりだ。二人が落ち着いた事を確認して、再び話を続けた。


「では続きを。サツキさんは事が事なので【黒】預かりになると思われます。【白】と掛け合いますがこれは動かないでしょうね。それと近い内に一度検査をした方が良いでしょう。此方の世界と彼方の世界、人の身体に違いがあってもおかしくはありません」


「……オレの憶測から言わせて貰うが、皐月は【霧】耐性は人よりも強いかもしれない。彼方の空気は此方に比べて遥かに薄汚れている。だが同時に【スキル】や【魔法】が全く無かった世界だ、【魔法耐性】はかなり低いと見るべきだろう」


 皐月もエスト、いや、朔夜もそこそこの都会出身だ。交通量が多く森が少ないあそこの空気は、自然に囲まれ排気ガスが存在しない此処と比べるまでもない。この世界の人間が【霧】への耐性が薄いのはその辺りが関係していると踏んでいるエストはその主張を初めて入れてみた。


「……根拠は何かを訊きたい所ですが、今はいいでしょう。取り敢えず、【魔法耐性】が低い可能性を鑑みてそれ相応の検査に変えた方が良いという報告を入れておきます」


「頼む」


 エストは精神こそ‘朔夜’だが、肉体はこの世界のモノだ。だからこその強力な【魔法耐性】や【魔力量】を持っている。だが、皐月は完全にこの世界の異物。ただの迷い子がどれ程この世界に受け入れられている(・・・・・・・・・)か分からない。そもそも、彼女がただの(・・・)迷い子かすらもエストでは知る術が無いのだ。


「……君達、仲良いんですか悪いんですか?喧嘩していたと思ったら「頼む」なんて言い出しますし」


「腐れ縁だ。切れたと思ってたのに納豆宜しく地味に粘ついていた」


「ナットウ……?ああ、東で食べられている腐った大豆の事ですか」


「腐敗と発酵は一応違うんだがな……」


 西洋文化圏だと腐った豆と見られるのか。元日本人として何とも言えない虚無感に襲われる表現である。それを言ったらヨーグルトやチーズ、神に捧げている葡萄酒(ワイン)だって腐っているのではないか。


「取り敢えず、どうせエスト君の存在自体が謎ですからね。その辺りは受け流しておきますよ。お知り合いのようですし、サツキさんも少しは心強いでしょうしね」


「……だと良いがな」


 自分が居なくてもしぶとくこの世界で生きて行けるだろう、皐月なら。自分では図太さは到底敵わない、と褒めているのか不明な感想が残る。


『皐月、この世界で何か異変が出たらすぐに報告しろ。少しの事でも構わん』


『あ、それならあるぜ?』


『……何?』


 今すぐに返答が返って来ると思わなかったので、無意識に片眉を上げる。ケロっとした顔で何を言いだすのだろう。


『何か体がスゲー軽いんだ、こっち来てから。今なら1m位ジャンプ出来そう』


『……まさか』


 ブンブンと手を振りながら皐月が言った台詞に、思い当たる節が一つ存在したエストは小さく呟くとラジェットに向き直る。


「ラジェット、【スキル鑑定】を行ってくれ。何らかのスキルが既に皐月に付いてる可能性がある」


「分かりました、やってみましょう」


 頷いて横に立てかけてあった杖を手に取り、ラジェットはその先端を皐月に向ける。クエスチョンマークが大量発生している皐月に、エストが少しだけ説明を入れた。


『少し大人しくしていろ。【スキル】を【鑑定】する』


『え、あたしにもあんの!?』


 喜色満面な皐月にラジェットが【スキル】を発動させた。淡い光が皐月を包み込み、ラジェットへと情報を伝える。


「これはこれは……【身体強化】に【機械(オートマタ)操作】が付いてますね。【称号】は【異世界人】……と、隠れ称号?」


 何か気になる事を見つけたのか暫く見つめ続けるが、ついで小さく息をついて首を振った。


「私では読めない【称号】が一つ付いてるようですね。害は無さそうですが……」


「隠れ称号?それってある一定の経験したら公開されるアレですか?」


「ええ、恐らくは」


 隠れ称号と言っても、そんな大層なモノでは無い。3人に一人は持っているモノだ。その中で実際に称号が【解放】される人は滅多に居ないが、【解放】されたとしても酷いと【我儘大王】なんていうのが開いたり、凄いと【女神の愛し子】なんて【称号】が出て来る事もある。その種類は千差万別過ぎて、一概に隠れ称号は凄いとは言い切れないのだ。


「異世界人の隠れ称号ってなんか夢があるよね。どんなのなのかな?」


「……ロクなモノじゃ無いに一票」


 皐月に振り回された半生?を送って来たエストは全く期待をしていなかった。当の本人は今か今かと結果を待っているようで「待て」と言われた犬のようだ、という感想が浮かんだ。


『……【身体強化】と【機械(オートマタ)操作】だそうだ。後者はオレも持ってる』


『へー、身体強化か。通りで軽い訳だな。で、オートマタって何?』


『魔力が動力の機械とでも思っておけ。まぁこの世界でそんな物がある所は大抵ロクな場所じゃない。機械(オートマタ)があると聞いたら注意しておけ』


 会話が途切れたのを見計らってラジェットが話を先へ進めた。


「では、私は今から大司教(アーチビショップ)に報告に行ってきます。3人は……そうですね、エスト君の部屋ででも待機してもらえますか?」


「わっかりましたー!……って、エストの部屋じゃ何もないじゃん」


「殆ど居ない部屋に何を置けと」


 微妙に不満そうなカリンを放置し、エストは立ち上がる。それを見てまた移動と悟った皐月もエストに習う。そんな3人が部屋から出て足音も聞こえなくなったのを確認し、ラジェットは薄く笑いながら小さく呟いた。




「……隠れ称号【時計の君臨者】ですか。やれやれ、これでは彼女を世界に還す事すらままならないですね」

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