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04 少女の夢見た理想郷

 目を閉じるとそのまま寝てしまいそうだ。エストはぐったりと壁に寄りかかり座り込む。先程まで気力で耐えていたらしい、と薄々感づいていたカリンは苦々しげにそれを見、その様子に皐月は首を傾げてみせた。


『何?サク体調悪いのか?』


『まぁ……悪い、といえば悪いな。怠くて仕方が無い』


『お前がそんな事言うなんて珍しい。マジで平気か?熱?』


 そう言って手を額に当てようとするのをベシっと叩き落とす。アホ、と一つ呟いてどうしたものかと考えた。この休んでいる間に説明を入れるのが無難だろう。怠さは休めば落ち着くし、こうしている時間が勿体無い。


「カリン、先にコイツに前知識を入れる。少し時間貰っていいか?」


「え、あ、うん。いいけど休んで無くて平気?」


「多少はどうとでもなる。ただ明日仕事入れるなとラジェット説得してくれ」


 誰しもが顔色を見ては大丈夫かと声をかける。今そんなにも自分の顔色が悪いのか。残念ながら自覚は無い。彼の中では疲れたなぁ、位の認識だ。実際には顔面蒼白になっているのだが、鈍いのか本人だけが知らない状況だった。


『さて、皐月。まず前知識だ。この世界の名前は【ウィスリーチェ】。宗教はカルト系を除いたらほぼ完全に一つしか無いと言っても過言では無い珍しい世界だ』


『え、宗教が一つだけってアリなのか?』


『アリだな。【フィーニス教】の教えを実際に神話として伝承するに値するだけのモノとして【魔法】と【スキル】が存在してる。因みに【フィーニス教】は多神教な』


 それを伝えた途端RPG!と目を輝かせた。現金な奴だ。そう思ったが口にはせずエストは続きを話す。どうせこの世界は皐月好みのリアルRPG世界、神話や魔法、学園都市に宗教国家と王道なんでもござれなのだ。当分興奮が冷めない事位考えなくても分かる。


『国の数は7つ。地球と比べ有り得ない程の少数だが、都市国家や自治区みたいなものが合わさっただけで実質100は軽く超えると思え。ここはその中でも中心部に位置する【宗教国家エクシレオン】の都にして主軸とされる女神の信仰を土台とするフィーニス教の聖地、【アッシュグロリア】だ』


『え、ここ聖地なのか!?』


 叫んだ皐月にギョッとしてカリンとファロがビクつく。それに大丈夫だから落ち着け、と示してから説明を再開した。案の定皐月の表情は輝きまくっている。


『六芒星型の城壁に囲まれていて、端の部分は【神殿】が鎮座している。【神殿】と言っても宗教だけを扱ってる訳じゃ無いがな』


 指で宙に六芒星を描きながら説明していく。この形は【魔物】除けの【魔方陣】も兼ねている等の雑学もあるが、そこは後々教えて行けば良いだろう。多分趣味の世界の話だから言えば間違いなく覚えるが、こんなどうでもいい事より他の常識を覚えて貰いたい。


『と言うと?』


『ギルド、病院、浄化、土壌改良、孤児院、災害時の救助は大凡神殿の受け持ちだ。ここに関しては国の力より宗教の力の方が重めだからな。国がやっている事は金の管理とインフラ整備、外交、律法に基づく裁判等か?』


『NPOがやってる事の大半は神殿受け持ち、と』


『そういう事だ』


 ここらは現代知識があれば皐月程度の頭でも理解出来る。ましてや本人が厨二病に‘小学生の頃から’感染してしまっているので、説明がかなり少なくて済む。その点だけは口数の多く無いエストへの救いだった。


『ってあれ?それぞれの端の部分に神殿があるんだったよな?そんな場所ばらけさせて効率悪く無いのか?』


『ほお、お前にしては良い所を突いたな。神殿、あぁ因みに他の地方の物だと教会と言われるが―――は王道的な6属性で名前を分けられている。いわば部署だな。統括は【光】がやってる』


『四大属性+光と闇って事か?』


 ぷよ●よみたいだな、と呟く安定さに懐かしさを覚えた。もう久しくゲームはやっていない。皐月に押し付けられる事が多かったが、決して嫌いでは無かったのだ。出来る事なら久しぶりにやってみたい。充電環境が無いが。


『そうだ。で、俺が属してるのが【黒の神殿】。先程も行ったように討伐と浄化が主な任務だ。それと、【神殿】は身分制度が確立していてキリスト教の階級と大凡一致する』


『教皇、大司教、司教、司祭?』


『大まかにはな。それと別にある階級が、【魔導士(ソーサラー)】と【神殿兵(クルセイダー)】だ』


 キター!と叫ぶ皐月へ冷たい視線が突き刺さる。女子2人は皐月を不審者ととらえ始めたようだ。実際彼女の性格を知らなければ、これらの奇妙な行動は審人物以外の何物でもない。異世界に飛ばされた不安が欠片も視えず、むしろ嬉しそうな姿は正直異端だ。


『更にこの世界、特殊な魔術でレベル測定が出来てな。黒と光はLv50以上若しくは【レアスキル】持ちのみが所属可能だ。つまり万年人材不足に嘆いてる』


『50ってそんな凄い数字なのか?』


『某電気鼠連れ回す10歳児の冒険ゲーム考えてみろ。初期のだとLv50なんて四天王並だろ』


 あぁ、そういやそうだな。と呟いた皐月は続きを促す。そんなにこの世界の設定が気にいったのか。が、そこで皐月はまた首を傾げ、嬉しそうに顔を近づけて来た。


『って、じゃあお前超強いのか!』


 げんなり。唐突にエストが酷く嫌そうな顔をしたのでカリンが不思議がった。無表情がテンプレのエストがこんなにも表情を表に出すなんて珍しい。皐月も目を丸くするが、それに答えは返さない。


「どしたの?」


「……所属の話したら『お前超強いのか』と言われた」


 キョトン、とするファロとは裏腹にカリンはブフッと吹き出し、ケラケラ笑い出した。ムスッと拗ねたエストに事情を理解してないファロが声をかける。


「えーと……【黒】所属なら強いんじゃないの?」


「あははははっ!エストは弱いよ~。【レアスキル】で所属決定してるからね!武器は護身用で持ってるけど本業【賢者(セージ)】だし、ステータスは‘耐久’‘知力’‘器用’‘生命力’‘精神力’に偏り過ぎて‘運’と‘筋力’はからっきしだもん」


「本当に【魔導士(ソーサラー)】タイプ……」


 15程度の少女(カリン)に笑われる程というのは余程の事なのだろう。ファロは可哀想な物を見る目でエストを見つめた。それに苦々しい顔をしたエストを眺め、今度は皐月が首を傾げた。


『サク?どうしたんだ?』


『いや……あぁそうだ。ここでの俺の名前は‘エスト’だ。この世界、大凡の奴は名前に意味がある。変な風に弄るとキレる奴もいるから注意しろよ』


『りょーかい!って、エストの意味は?』


『正式にはエスティがその意味の正式な単語なんだが……まぁそれを短縮してエストと名付けているんだ。意味は【存在】。因みにこっちは偽名だ。本名は術式起動の時位しか使えん。ついでに言うだけで恐ろしく疲れるから黙秘する』


 今まで名乗って無かった事に漸く気付き、最低限の事を伝えると偽名という点でムッとする。教えろ、という雰囲気が伝わるが既に先程の【真名】解放で疲弊しきっているエストはそれを無視し、次に伝えなければいけない事を模索した。


『で、俺はレベルじゃなくて【レアスキル】持ちで【黒】所属が認められている。【レベル】は―――ちょっと待て』


 少し考えてから腰にぶら下げていた黒の【六芒板(オーツ)】を探る。そこに書いてある表示を見てああ、と納得したかのように頷いた。


「どしたの?」


「さっきの浄化で大分レベルアップしてたらしい。一気に2ランク上がってる」


「おお!おめでとう!」


 負担に見合うだけの成果はあったようだとホッと一息つき、再び皐月の方へ向き直る。wktk、と顔に書いてありそれが無性に説明させる気を失せさせた。


『あー……この板は【六芒板(オーツ)】と言ってな。レベルやステータスが自動表示される魔導具だ。今の俺はLv38らしい。【職業(ジョブ)】は【賢者(セージ)】』


『え、弱』


『その口縫われたいか?』


 コイツは先程の説明で完全にポ●モンと同じような扱いをしているようだ、と認識してイラッとくる。チャリをたった十秒漕ぐだけで隣町につくような世界観と一緒にされても、と頭痛を覚えながら空いている(・・・・・)右手で頭を抑えた。


『わ、悪かったから剣チラつかせるなよ!縫うじゃなくて斬る気だろお前!?』


『違う。斬り刻む気だ』


『余計性質悪いわ!』


 漫才のような何かを繰り広げてから一息つく。取り敢えずこの認識を直さなければならなさそうだ。


「ファロだったよな?そういえばアンタ、【レベル】と【職業(ジョブ)】は?」


「え、わ、私?ええと【中級弓兵(ミドルアーチャー)】と【下級神官(ローマグス)】を兼任してます。レベルは27、だと……?」


「そうか、ありがとう」


 見た目は下級神官と、完全に文官寄りだが以外にも弓兵としての素質が高かったらしい。それに一瞬驚き、しかし直ぐに回復して礼を言う。


『さて皐月、この赤所属の彼女だが、【中級弓兵(ミドルアーチャー)】とかなりの高ランクだ。だがレベルは27、これを機にそのHPとMPギリギリまですり減らし尚且つ時間をレベル上げに使いまくったゲームのキャラクターと現実(この世界)を並べるな。20越えたら立派な戦力だ』


『お、おう。悪かった。なんか随分必死だな……』


『俺が弱いんじゃない……カリンが強すぎるだけだ……』


 頭を抱えてブツブツ呟くエストにクエスチョンマークが躍る。カリンというのはそこにいる緑の少女の名前だった気がするが?


『ソイツ、そんなに強いのか?』


『人外魔京的な何かだと俺は認識してる』


 据わった目で即答されてしまった。そんなにも強いのか。同じ【黒】所属だと言っていたし、恐らくLv50は越えているんだろうなと検討を付けながら、次は次はと話を促す。


『次は……あぁ、この世界と地球との関連か』


『あ、忘れてた』


 帰れるかもしれないという点をすっかり忘れられるとは実に良い根性している。本日何度目かも分からない頭痛を堪えてエストは皐月を殴った。


『ってぇ~!』


『こっちは心配してやってるのにいい度胸してやがるな』


『わ、悪かったって。てか、え?普通こういう異世界モノって地球なんて知らんがなってのが多く無い?王道じゃないじゃん!』


 どこまで皐月の頭は残念なのだろうか。全てが王道で片づけられる世界では無いという事にせめて気付いて欲しかった。まぁ無駄な足掻きのようだが。


『俺が居る時点で地球を誰も知らないというのはまず無いだろう。この世界の‘世界の捉え方’で言うと【地球】だけは知っていておかしくないんだ』


『世界の捉え方?』


 意味が分からないと眉を寄せた元幼馴染に、どう言えば理解しやすいかと考えながら言葉を発する。ついでに言えば長年使っていなかった言葉で会話しているので、単語単語が一部思い浮かばない。言葉は使っていなければ忘れるというのは本当のようだ、と遠い目で悟った。


『あー……そうだな。数珠は分かるだろ?』


『仏壇に向かってばーちゃんが手合わせてる時に使ってるアレ?ロザリオ的な』


『ロザリオと数珠じゃ宗教が違うというツッコミは置いておくが、恐らくソレだ。‘世界は円環状に繋がっている’。これがこの世界からの‘世界’の捉え方だ』


 ついでに言えばロザリオで説明してしまうと正しい円環では無いので説明につり合わない。祈る時に使う何か、という捉え方をしているのだろうが、生憎と微妙に形と使う意味合いが違う気もする。まぁこれに関しては長年現代日本の文化に触れて居なかった為あやふやになりつつある知識なのだが。


『えと、つまりは世界はいっぱいあるって事か?』


『そういう事だ。数珠の玉一つが世界で、次の玉へ一方通行式に繋がっている。1の世界は2の世界へ、2の世界は3の世界に、そして延々とそれが続いて行って―――例えば50の世界がまた1へ戻るといった具合だな』


 尤もこれはこの世界がそう考えて居るだけだが、と付け足すと納得したようで、エストはホッと息をついた。この説明で分からないと言われてもこっちも説明しにくい。


『そして更に言えば、この世界の一つ前の世界が【地球】のあるあの世界だ。この世界では銀河系やらその辺の事情をよく分かってないから【地球】という世界とされているが』


『あー、確かにあの世界に名前無いもんなぁ。つか世界って名前付けるモンなんだな。ここはウィスリーチェだっけ?』


『まぁ異世界の存在を認めているが故の命名だな。あの世界じゃ宇宙の果てに何かがあるなら兎も角、異世界なんて子供か厨二病の為の存在だ』


 そして後者に当てはまっているのがこの残念な幼馴染なのだが。そんな彼女は久々に会おうと平常運転(平常が暴走列車である)で、気が抜けて仕方が無い。


『で、この世界観で当て嵌めるとお前が世界に還るには、逆流の方法を探せばいい訳だ』


『逆流、なぁ……出来んの?』


『知らん。少なくとも地球からオーパーツ的に‘物’が流れ着いた事は歴史上そこそこあっても‘人’が流れて来たのはほぼ例が無い。ついでに言うと、お前ほど苦労せずにウィスリーチェ(此処)に馴染めそうな地球人を俺は聞いた事も無い』


 よりにもよって知人が流れて来るとは思っても居なかった。神代の時代から幾星霜、地球人が流れて来たのは片手の指ほども無いだろう。確かに資料はあったがボロボロで多々欠落している部分があったし、自分も身分が身分でなければ読む事すら許されない程の【禁書】扱いされていた筈だ。司祭(ラジェット)程度の身分ではまず読めない。


『一応居るんだ、先人が』


『750年前の資料に多分百年戦争に参加していた騎士が一人居た。それ以前の物は紙がボロボロで読めた物じゃ無かったから不明だ』


『何故に百年戦争』


 何故と言われても資料と記憶を照らし合わせたらそれらしかったのだから、それ以外の回答が無い。資料の少なさに此方だって色々頭を悩ませたのだ。何よりもあの世界に居たのはエストにとっては彼此十数年前の事。大分忘れている事も多く、大雑把な歴史の流れですらかなりの苦労を擁している。


『まぁぶっちゃけた話、一番運が良ければ【霧】に単身突撃すれば戻れるかもしれない』


『……ソレ瘴気だよな?突っ込んだら毒じゃね?』


『…………運良く生きていられれば向こうに帰れる可能性が一割はある。最悪お陀仏、良くても違う世界やら此処の過去か未来に飛ばされる可能性の方が高いが』


『その霧って時空に干渉するモンなのか?』


 物凄く嫌そうな顔で凝視されたので、目を逸らして頷いておく。【闇】と【光】が掴んでいる【原罪の霧(ディザスターエアー)】の特徴は、時空干渉で正しい。しかし流石は厨二知識を網羅した皐月である。一発でそれに気付くとは、と要らない方面に感心した。


「……話終わりそうにない?」


 と、そこで痺れを切らしたのかカリンが覗いて来たので、少し考えてからいや、と断りを付けた。本当に簡単な事は今説明したので十分だし、後々付け足していけば大丈夫だろう。不安な要素は皐月の暴走と、此方の世界での対応だがその辺りも神殿の誰かに頼めば適切な対応を取ってくれる筈だ。【神殿】所属者は信仰が厚い者が多い為、不当な扱いはせずに(本人がどれだけ大丈夫であろうと知らずに)憐れんで精一杯の助けとなってくれるのは分かり切っている。


「大凡はこれで平気な筈だ。俺も帰る位なら支障は無い」


「あらら、クロイツ間に合わなかったか。ま、仕方ないわね。門まで送っていきますよ」


「色々お世話になりました。あ、多分近い内にこのサツキちゃん?の件で報告書提出の義務が発生すると思うから、クロイツさんにも伝えておいてもらえます?」


「はい、分かりました」


 しっかりと頷いたファロにカリンはニッコリと笑い、エストの手を取って前へ歩を進めた。


「おい、何故手を掴む」


「だってまた街道で分かれちゃいそうなんだもん。もう潰されるのは御免」


 確かにこの時間帯では商店街は混みあっているだろう。活気があり経済活動が活発なのはとても良い事なのだが、いかんせんあの人混みだけは受け入れ難い。元々人付き合いが面倒だと思っている口のエストにとっては人混みはあまり好んで入りたくはない場所だった。尤も、ここの地形上商店街が混みあうのは仕方ないと諦めてもいるのだが。


「はぁ……カリン、【黒】で皐月の対応頼めるか?」


「あぁ、流石にエストが四六時中くっついてちゃマズイしね、性別的に。うん、言葉使えない状況でどこまでやれるかは分かんないけどやってはみるよ」


「助かる」


 【神殿兵(クルセイダー)】(神官以外の神殿所属者は全員ここに括られる)に充てられている部屋は一応、各神殿の3階スペースに男女関係無く作られているが、流石にそう易々と異性の部屋に突撃をかます訳にもいかない。そんな事をしたら社会的に死ねる。


『皐月、移動するぞ』


『次は何処にだ?』


『【黒の神殿】だ。お前の説明と取り敢えずの住居スペース確保しなきゃならんだろう』


『おお!サクの本拠地!』


『エストだっつってんだろ』


 わくわくしている皐月にツッコミつつも、仲良く手を結んだ(恋人結びではない事だけを明記しておこう)カリンを引っ張り皐月を先導する。皐月の服や鞄を考えると出来れば目立たない場所を通りたいが、この城下でそれを求めるなど無駄か、と早々に諦めて表通りへと歩を進める。


 門まで出た所で三人に頭を下げて送り出してくれるファロに緩く頭を下げながら神殿の敷地を出ると、とたんに皐月が歓声を挙げた。


『うわぁ~!スッゲー!』


 高台に作られている【赤の神殿】からは露店を行きかう人々、ヨーロッパのように統一された町並み、高く登った太陽が照らす巨大な城塞と城、そして【結界】として作られた城壁が一望できる。緑と人の営みが調和されたそのファンタジー空間に、皐月の視線は釘付けだ。


『……皐月、iPhoneは持って来ているか?電波は届いていないが、写真は撮れると思うぞ』


『え、あっ!持ってる持ってる!』


 あまりのはしゃぎように薄く笑って、不思議そうな顔をしているカリンに声をかけた。


「カリン、もう少し待っててやってくれ。コイツ、異文化好きなんだよ」


 そう言って皐月を眺めるエストの優しい視線に、カリンは嬉しそうに笑って手を強く握ってみせた。

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