そばにいたい
「そばにいたい」それだけ。
サボり。授業についていけないわけでもない。自分で言うのもなんだが、成績は結構良いほう。
今日も空が青いなあ、なんて思いながら、実波はネクタイを少し緩めて、屋上のコンクリートのうえに寝転ぶ。
静かにまぶたを閉じると、カンカンカンと階段を駆け上がる足音が聞こえた。
「もぉ〜〜!実波またサボってる」
腰に手を当て、仁王立ちになって、俺を見下ろす。
実波は、片目だけ開けた。
「じゃあ何でお前がいるんだ?俺がサボりだったら、お前もサボりだろう」
「私は、幼馴染としてアンタを教室に連れ戻す義務がある!」
得意げに言うさくらがおかしくて、声を殺して笑った。どんな義務だよ。
「何がおかしいのよ」
ぷぅっと頬を膨らませて俺を睨んだ。はいはい。わかったから怒るなって。
「もぉ、サボってばっかだと授業追いつけなくなるよ」
そう言って、さくらは俺の隣に座った。
「頭いいからサボってんだよ」
ニッと歯を見せて笑ってやった。
「なにそれ。すっごいイヤミに聞こえるんですけど」
さくらが仏頂面で、唇を突き出す顔を想像しながら、静かにまぶたを閉じた。
「あぁ〜〜〜また寝る気だな!起きろ〜〜み〜な〜み〜!」
俺の肩を掴んで、激しくゆすり起こそうとするさくら。
俺には、こういうたわいもない平凡な毎日が、幸せだったりするんだよね。
俺がサボる理由?
それはさ、俺がサボるとさくらが迎えに来てくれるから。
俺はさくらの
「そばにいたい」それだけ。
「起きろ〜〜〜実波〜〜〜!」
平手で顔を叩かれた。こりゃさすがに痛ぇわ・・・少し手加減しろよ。
初の短編。私、文章を短くまとめるの苦手なので、結構大変でした。
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