第7話~同じ過ちの匂い~
冒険者ギルドは、今日も騒がしかった。
依頼書の前で声を張る者。
装備の確認をする者。
仲間と笑い合う者。
その一角で、俺は足を止めていた。
「この辺りなら楽勝だろ」
若い声が耳に入る。
三人組の駆け出し冒険者。
装備は新品に近く、動きに硬さがある。
掲示板に貼られた依頼は、
低階層ダンジョン調査。
難度は低い。
だが――危険がないわけじゃない。
胸の奥が、ざわついた。
昔の自分と、重なる。
「低階層だから大丈夫」
「初心者向けって書いてある」
「俺たちなら、いける」
そんな言葉を、
俺も確かに口にしていた。
声をかけるべきか。
一瞬、考える。
だが、見知らぬ者同士だ。
いきなり忠告しても、
鬱陶しがられるだけかもしれない。
俺は、少し距離を取った。
その時だった。
「ライセンスは、どれくらい持ってる?」
三人のうち一人が、そう言った。
「剣はノービス。あと生活系が二つくらいかな」
「俺は魔法がノービス一つだけ」
「俺も似たようなもんだ」
その会話を聞いた瞬間、
胸のざわつきが、確信に変わった。
――足りない。
数も、質も。
ダンジョンを、甘く見ている。
俺は、息を吐いた。
そして、歩み寄った。
「悪い。少し、いいか」
三人がこちらを見る。
警戒と、戸惑い。
俺は、穏やかな声で続けた。
「ダンジョンは、ライセンスの数で難易度が変わる」
「低階層でも、準備不足なら死ぬ」
少しだけ、間を置く。
「俺は、それで仲間を失った」
空気が、変わった。
軽さが消え、
言葉が、重くなる。
「……あんた、どれくらい持ってるんだ」
そう問われて、
俺は正直に答えた。
「剣、魔法、生活系。ノーマルがいくつか」
三人は、驚いたように目を見開く。
その様子を、
ギルドの受付嬢が見逃さなかった。
「もしよろしければ」
受付嬢が、口を挟む。
「この方は、最近ライセンス取得に熱心でして」
「ダンジョン経験もあります」
「同行を検討してみてはいかがでしょうか」
俺は、少し驚いた。
だが――
悪くない、と思った。
三人は、顔を見合わせる。
そして、ゆっくりと頷いた。
「……お願いします」
その言葉を聞いた瞬間、
俺は覚悟を決めた。
次は、見捨てない。
過去を繰り返さない。
依頼書を受け取り、
装備を確認し、
簡単な打ち合わせを済ませる。
出発は、明日。
ギルドを出る直前、
俺は振り返った。
かつての俺が、
ここに立っていた。
今度は、
俺が前に立つ番だ。
次は――
ダンジョンだ。




