表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/27

第18話~初陣 ― 連携という名の刃~

 ダンジョンの入口は、相変わらず口を開けた獣のようだった。

 湿った空気、石壁に染みついた血と土の匂い。何度通っても慣れることはない。

「陣形、確認するぞ」


 先頭に立つのは大盾の男。

 その背中は広く、迷いがない。


 俺は半歩後ろ、斜めの位置につく。

 斬撃が届き、なおかつ盾の陰に戻れる距離。

 短剣使いはさらに後方、死角を縫うように位置を取る。

 最後尾に魔法使い。魔力の流れを整え、全体を見渡す役だ。


 静かに進む。

 足音を殺し、壁際をなぞる。


 最初に現れたのは、ゴブリンの群れだった。


 数は五。

 こちらに気づいた瞬間、甲高い声を上げる。


「来るぞ」


 盾が前に出る。

 鈍い音。木槍が盾に弾かれ、衝撃が空気を震わせた。


 ――今だ。


 俺は踏み込み、剣を振るう。

 斬撃が走る。空を裂く音とともに、ゴブリンの肩口が深く抉れた。


 体勢を崩した瞬間を、短剣使いが逃さない。

 影のように滑り込み、喉元へ一閃。


 残る個体が怯んだ一瞬、魔法使いが詠唱を終える。


「――点火」


 小さな火球が炸裂し、ゴブリンは悲鳴とともに倒れ伏した。


 短い戦闘。

 だが、確かな手応えがあった。


「……悪くない」


 大盾の男が、盾を下ろしながら言う。


「流れが途切れなかった」

 短剣使いも静かにうなずく。


 連携は成立している。

 それは疑いようがなかった。


 だが、俺の胸に浮かんだのは安堵ではない。


「この程度じゃ、トロルには届かない」


 全員が、理解していた。

 ゴブリンは弱い。動きも単調だ。

 だが、トロルは違う。


 打撃。投擲。質量。

 一撃の重さが、まるで別物だ。


「今日は確認だ」

 魔法使いが言う。「深追いはしない」


 俺もうなずく。


「斬撃がどこまで通じるかも、まだ未知数だ。

 この連携が“通用するか”を測る段階だ」


 そのまま進むのは、危険だった。

 だが――


 通路の奥。

 重い足音が、低く響いた。


 現れたのは、ゴブリンより一回り大きな影。

 分厚い筋肉、粗雑だが明確な戦意。


「ホブゴブリンか……」


 キングほどではない。

 だが、明確に“格上”だ。


 俺は、仲間を見る。


「提案がある」


 視線が集まる。


「初日は連携確認で終える予定だった。

 だが、こいつなら――一段階上の確認ができる」


 短剣使いが口角を上げる。


「いい的ですね」


 大盾の男は、盾を構え直した。


「撤退路は確保してる。

 やるなら、今だ」


 魔法使いも静かに息を整える。


 決断は、早かった。


 ホブゴブリンが咆哮する。

 空気が震え、戦闘が始まる。


 盾が受け止める。

 衝撃は重い。だが、耐えられる。


 俺は剣を振るう。

 斬撃は、確かに通じた。


 ――まだ、行ける。


 これは討伐ではない。

 これは試練だ。


 トロルへ至る、その一歩前。

 俺たちは、確かに前に進んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ