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第16話~前を向く理由~

 ギルドの談話スペースは、昼下がりでも人が多い。

 だが、壁際の長机に座る二人の周囲だけ、妙に静かだった。


 一人は大盾を足元に立てかけた男。

 もう一人は短剣を腰に下げた細身の冒険者。

 どちらも視線が落ち着かず、どこか居心地が悪そうにしている。

「時間、いいですか」


 声をかけると、二人は同時に顔を上げた。

 警戒はあるが、拒絶ではない。


「今回のパーティの話です。

 どういう考えで、参加しようと思ったのかを聞かせてほしい」


 率直に切り出すと、大盾の男が少しだけ苦笑した。


「……正直に言えば、まだ整理はついてない」


 彼はかつて、前衛三人を要する重装パーティにいたという。

 役割は盾。

 誰かの後ろに立ち、受け止めることだけを考える立場だった。


「前の連中は、もう俺がいなくても回る。

 そう分かってるのに……癖で、今も背後を気にしてしまう」


 盾を握る手に、力が入る。

 依存――だが、それを自覚しているからこそ、彼は前に進もうとしている。


「それでも、また盾を持つなら。

 今度は“支えるため”じゃなく、“自分で選んで立つ”前衛になりたい」


 その言葉に、短剣使いが小さく息を吐いた。


「私は逆ですね」


 彼女は罠のライセンスを持つ探索役だった。

 以前のパーティでは、判断を任されることが多かったという。


「指示を出して、道を決めて、危険を避ける。

 ……でも、失敗した時、全部自分の責任になった」


 それが積み重なり、パーティは崩れた。


「今でも、決断するのが怖い。

 でも、だからこそ――誰かと判断を共有できる場所に行きたいと思ったんです」


 二人の言葉に、共通点があった。

 過去に縛られている。

 だが、立ち止まってはいない。


「このパーティは、完成形じゃない」


 俺はそう前置きしてから言った。


「だからこそ、役割も、判断も、一人に寄らない。

 危険なら退くし、無理だと思えば止める」


 大盾の男が、ゆっくりとうなずく。


「……それなら、盾を出す意味がある」


 短剣使いも、わずかに表情を和らげた。


「失敗しても、共有できるなら……やってみたいです」


 完全な信頼には、まだ遠い。

 だが、前を向こうとする意志は確かに感じられた。


 パーティとは、過去を忘れる場所じゃない。

 過去を抱えたまま、次の一歩を選ぶ場所だ。


 俺は二人を見て、静かにそう思った。

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