第15話~振れ幅の正体~
ライセンスの数が増えれば、強くなる。
それは間違いじゃない。
だが――それだけではない。
ゴブリンキング戦を思い返しながら、俺はある違和感を抱いていた。
「ノービスからノーマルまでの幅……それ自体が、意味を持っている気がする」
口にすると、隣を歩く魔法使いが足を止めた。
「私も同じことを考えていました」
彼女の見解はこうだ。
マスターランクは単一の突出ではなく、複数ライセンスの“振れ幅”――つまり応用できる余地が多い者ほど近づくのではないか。
戦闘、魔法、生活。
それぞれが浅くても、判断材料として組み合わされば、戦場での選択肢は増える。
それを、俺たちはゴブリンキング戦で体感していた。
ギルドに戻ると、次の依頼が提示された。
――トロル討伐。
「頃合いでしょう」
受付はそう言った。
トロルはゴブリンキングより個体としては弱い。
だが、問題は数だった。
ゴブリンは背丈一・五メートルほどで、武器も使わない。
キングは例外で、五メートル級の異形だ。
一方トロルは違う。
平均して二メートル。
棍棒を持ち、殴るだけでなく投げてくる。
出現エリアは拾い――開けた区画。
囲まれやすく、退路を断たれやすい。
「確認されているだけで、十から十五体。
最低でも五人は必要です」
その言葉に、俺と魔法使いは顔を見合わせた。
今の俺たちは二人しかいない。
前衛は俺。
後衛は彼女。
足りないのは明白だった。
盾職と、トラップ探知に長けた弓使い。
ギルドもそこを懸念し、この依頼は斡旋止まりで終わった。
「……人を探しましょう」
魔法使いがそう言った。
正論だ。
だが、トロルに挑むなら中級者以上。
その手合いは、すでにどこかのパーティに属している。
簡単には見つからない。
だからこそ、ギルドが動いた。
解散したばかりで、手すきになっている冒険者の紹介。
一人は大盾を持つ前衛。
一人は短剣使いで、罠系ライセンスを所持している。
種族はいずれも人間。
構成としては悪くない。
むしろ安全寄りだ。
だが――気になる点があった。
二人とも、どこか空気が重い。
パーティ解散直後特有の、それだ。
連携は信頼がなければ成立しない。
心情に引っかかりがあれば、戦場で必ず歪みになる。
「少し、話を聞いてきます」
俺はそう言って立ち上がった。
強さを求めるなら、数だけでは足りない。
判断できる材料は――人の心も含めて、揃っていなければならないのだから。




