第11話~王の習性~
ゴブリンキングは、そこにいた。
洞窟の奥。
天井の高い空間に、異様な圧を放って立っている。
以前見た時よりも、落ち着いて見えた。
それは、俺が変わったからだ。
「……数がいるな」
ドワーフの戦士が、低く唸る。
ゴブリンキングの周囲には、
明らかに統制の取れたゴブリンが配置されていた。
護衛。
いや、壁だ。
「正面からは無理ね」
エルフが、小さく首を振る。
「罠の匂いもする」
俺は、視線を巡らせた。
足跡。
空気の流れ。
壁に残る擦れ。
「左だ」
即座に言う。
「自然に削れている。通路として使われてる」
「でも、狭いわよ」
「だからいい」
狭い通路は、
数の優位を殺す。
俺たちは、静かに動いた。
魔法で、音を殺す。
エルフの矢が、見張りを落とす。
一体、また一体。
ゴブリンたちは、異変に気づかない。
「……本当に、判断が早いな」
人間の女性が、感心したように呟く。
俺は、答えない。
判断が遅れた先を、知っているだけだ。
距離が、詰まる。
ゴブリンキングが、こちらを認識した。
咆哮。
空間が、震える。
「行くぞ!」
ドワーフが前に出る。
重い一撃。
護衛のゴブリンが吹き飛ぶ。
魔法で牽制。
エルフの二の矢が、間髪入れずに刺さる。
連携は、滑らかだった。
俺は、ドワーフの半歩後ろ。
斬撃で死角を潰し、
魔法で動きを制限する。
前に出すぎない。
離れすぎない。
「……いける」
誰かが、そう思った瞬間。
ゴブリンキングが、吠えた。
そして――
周囲のゴブリンを、掴み上げる。
躊躇はない。
そのまま、喰らった。
骨が砕け、
血が飛び、
肉が消える。
次の瞬間。
ゴブリンキングの身体が、膨れ上がる。
筋肉が隆起し、
動きが、明らかに変わった。
「……そんなの、聞いてない」
エルフが、息を呑む。
俺の脳裏に、嫌な記憶がよぎる。
想定外。
知らない習性。
「下がれ!」
叫ぶ。
だが――
遅いかもしれない。
強化されたゴブリンキングが、
こちらを見据えた。
次の一手を、選ばなければならない。
生き残るか。
押し切るか。
判断を誤れば――
誰かが、死ぬ。




