第10話~違いを知る~
集合場所にいたのは、三人。
まず目に入ったのは、背の低い屈強な男だった。
太い首、分厚い肩、年季の入った装備。
――ドワーフの戦士。
本で読んだ通りの体躯だが、
実物の圧は、文字情報とは比べ物にならない。
その隣には、長身で耳の長い女性。
姿勢がよく、視線が高い。
――エルフ。
最後は、人間の女性。
落ち着いた様子で、周囲をよく見ている。
前衛一名、後衛二名。
構成は、確かに理想的だった。
「今回、同行することになった」
俺がそう告げると、
三人は順に軽く頷いた。
「ドワーフの戦士だ。前に立つ」
短く、無駄がない。
「後衛担当。索敵と支援が役目よ」
エルフの女性は、静かな声だった。
「私は補助。回復と状況管理をやります」
人間の女性が、そう続ける。
名前は、聞かない。
今は、それでいい。
準備を終え、ダンジョンへ入る。
歩きながら、自然と会話が生まれた。
「……あんた、ずいぶんライセンスを持ってるらしいな」
ドワーフの戦士が、ちらりとこちらを見る。
「剣だけじゃない。魔法も、生活系も」
「全部ノーマルだと聞いた」
俺は、否定しなかった。
「必要だと思ったものを、順に取っただけだ」
ドワーフは、低く笑った。
「人間にしちゃ、珍しいな」
エルフの女性が、興味深そうに言う。
「人間は、一点特化が多い」
「種族固有の補正がない分、選択を絞るから」
俺は、少し考えてから答えた。
「だからこそ、広く取った」
「一つ欠けるだけで、死ぬ世界だから」
その言葉に、空気がわずかに引き締まる。
戦闘は、すぐに起きた。
ゴブリン、三体。
ドワーフが前に出る。
重い一撃で、一体を叩き伏せる。
エルフの矢が、二体目を射抜く。
精度が、異常なほど高い。
残る一体に、俺が斬撃を放つ。
短く、鋭く。
確実に。
「……なるほどな」
ドワーフが、感心したように言った。
「数じゃなく、判断で戦うタイプか」
進むにつれ、話題はライセンスに移る。
「ドワーフには、《鍛造感応》がある」
「金属の質を、触れただけで見抜ける」
「エルフは、《長距離視認》」
「魔力の流れも、遠くから感じ取れる」
俺は、内心で息を呑んだ。
本で読んだ知識が、
目の前で“生きている”。
「人間には、そういうのはない」
俺が言うと、
人間の女性が首を振った。
「あるわよ」
「人間だけが持てるのは、適応力」
「ライセンスを組み合わせて、役割を変えられる」
その言葉に、俺は少し驚いた。
そういう見方も、あるのか。
しばらく進んだ、その時。
空気が、変わった。
エルフの女性が、足を止める。
「……感じる」
ドワーフも、眉をひそめる。
「さっきのとは、違うな」
俺も、分かった。
重い。
圧がある。
――いる。
ゴブリンキング。
まだ、姿は見えない。
だが、確実に奥にいる。
俺は、一歩前に出た。
「ここから先は、慎重に行こう」
「判断を誤れば、戻れなくなる」
三人は、黙って頷いた。
このパーティは、
話が通じる。
それだけで、
胸の奥の不安が、少しだけ和らいだ。
だが――
油断はしない。
本当の試練は、
これからだ。




