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① ジゼルの目覚め

こんにちは、皆様!


私、ジゼルと申します。


今日はちょっとね、私の話を聞いて貰おうかなって思っているんですけども。あ、こいつ何か面倒くさそうってブラウザーバックしようとしたそこのあなた、止めてね。

ジゼルちんは体が弱いから。


ショックなことがあるとそのまま死んじゃいます。こんな事で死なれたら、目覚め悪いですよ~?


ということで、ちょっとね。私の小話聞いて行ってくださいよ。




私ね、前世の記憶があるんですよ~!


「あ、こいつきっしょ」って思った人、はったおしに行きますから。ちょっと住所のご提示をお願いいたしますわ。

「あ、こいつヤベー奴だ」って思った人は、もう少し視野を広げるべきだと思います~。ジゼルちんは、そう思うな。




それはさておき、私は前世で日本という国で生まれて、アメリカという国で思春期を過ごしました。

子供の私達よりも、日本で生まれ育って、三人の子供を産んだ(兄、兄、私)、その時すでにいい年こいた昭和の女代表の母親の方が、すぐにアメリカに馴染みました。

ええ、ええ、そうです。

昨今のネット社会の影響で、皆様も既にご存知でしょう。


あの、大型人間を生み出すアメリカの食文化です。


栄養バランスや彩を考えてお弁当を作ってくれていた筈のお母様は、すぐさまジョブチェンジ。じゃなくてシフトチェンジ。すぐにアメリカのママと同じ様になりましたよ。


ええ、ええ、そうです。


やたらめったらお部屋をペッカペカに磨き上げる事に全集中して、子供のお弁当は秒で作る、あれです。


私達のランチはすぐに、ピーナッツバターの塗られたサンドイッチと、リンゴ(もしくはバナナ)になりました。野菜はポテトチップスです。知ってました? アメリカ人は真顔で「ポテトチップスは野菜だよ」って、無垢な子供の様な瞳で言ってくるんです。恐ろしい生き物です、奴らは。

そしてディナーは週3でマカロニチーズです。

そして週2でピザです。


小柄で細かった私は、あっという間に横に伸びちゃいました~orz 。笑い事じゃねーです、かか様・・・。



母もちょっと、「あ、やべぇ・・・」と思ったのか、私の習い事にバレエが追加されました。アメリカってね~、子供に色んな習い事させるんですよ。将来進みたいという道を多くから選べるようにね。だけど全て兄達と学べるようにと、女の子らしいのはピアノしか無かったんです。3人が同じスケジュールで動くと、楽だったんですよね、かか様・・・。

だけど兄達が白タイツは嫌だと断固拒否。「レッスン着は黒で受けられるよ」という母のフォローも虚しく、思春期の兄にピッタんこスパッツは受け入れられず。

バレエは兄と別行動となりました。


因みに、宝塚ラブの母親は、バレエをやっていれば痩せると考えているのですが、それ、誤りですよ。



バレエやっても痩せません。


いや、真剣にやったら痩せるのかな?だけど、同じ教室にいた大人の方が言っておられました。

痩せる様に筋トレやダイエットをさせられるのです。決してレッスンだけでは痩せません!



しかし子供の私にはバレエが合っていたようで、みるみる痩せていきました。


そりゃそうです。人生の大半は日本に居たわたくしのアイデンティティはTHE NIPPON ! です。(その当時はまだ十年に満たないほどの短い人生でしたが)



アメリカでは、街を歩けば自分より大型の子が多いので、何も考えずにぷくぷくした二の腕と足をさらけ出して、LOS ANGELES(発音良くお読み頂ければ大変助かります♪)の空の下、闊歩しておりました。

しかしお教室に行けば、どこから集めてきたのか、大型人間生産大国によく居たな!って思うほど華奢で手足の長い女の子だらけ。


そんな子達が発表会でキラキラした衣装を着ていたら、第一期思春期に突入した私は、衣装を人前で着るのが恥ずかしくなって。母親と相談の結果、お家で栄養バランスの考えられた日本食を作って頂くことになりました。

健康的な食事とバレエで、すぐに横幅は元に戻っていきましたよ(ふぃ~、ヤバかった)


それからもバレエに恋に、LOS ANGELES(発音良く読んでみてね)の空の下を満喫していた私は、高校は日本に帰ったけども大学は一人アメリカに戻ってきました。口うるさい父、母! (♪グッバイ~)




大学を卒業してCAになった私は、世界中を飛び回りました。仕事でも遊びでも。

自分でも人生を楽しんでいたと実感する。辛い事や悲しい事もあったけど、それ以上に、恋に仕事に全力疾走したって感じ。



そんな私は、悪い子ではなかったけど、正直良い子でも無かったの。



それなりの正義感もあるけれど、自分が利益を得られる場面では、その正義感も都合よく家出する。

まぁ、大体皆もそんな感じじゃないのかな? 自分なりの正義感は、その時の自分の立場に合わせて都合よく解釈を変えていく。


だけど、やっぱり根は良い子だったのね。




駅の階段から落ちそうだった見ず知らずのおばぁちゃんを庇って、私が落ちて死んでしまったんだから・・・。



ごめんね、おばぁちゃん。この出来事が彼女の心に重く圧し掛かっておりませんように!



バレエで鍛えた体幹を過信しすぎた私が悪いの。社会人になってから踊ってなかったくせに、何で今でも絶妙なバランス感覚があると自分を過信したのだよ~、私よ~。



そうして予期せぬ死を迎えた私を、天国の扉の前で待ち構えていたのは、仁王立ちでぷんすこ怒っているおじいちゃん神様だったの。いやん。



本当は死ぬはずじゃなったから、私の魂があぶれてしまったんだって。知らんし。輪廻転生って、流れ作業みたいね。死ぬ時が決まっていて、死んだら、はい、次~、あなたの魂は、はい、ここ、みたいな? ザ・流れ作業。

ロマン無いから止めてって? 私だって知りたくなかったよ、そんな裏側・・・。



ということで、本当の寿命を迎えるまでの間、別の次元での転生が決まりました~(パチパチ)



だけど、これってあれよね?


異世界転生ってやつよね?


アメリカでもネット小説が流行っていたんだけど、日本とはジャンルが全く違うのよね。私も日本に帰ってきて、仕事の空き時間にちょこちょこ読んでいたの。面白かったわ~。

乙女ゲームっていうの? それはやった事ないけど、それでも乙女ゲームの世界に転生する話って、面白いのよ~。

大好きよ、ざまぁ(うへへへ)

首ちょんぱ(げへへへ)

やっぱり日本魂は水戸黄門の様な、勧善懲悪って好きよね? 見た事無いけど。

お馬に乗って海辺を走るんだっけ? おじぃいちゃんじゃ乗馬は難しいか。何かと混ざってる?

まぁ、いいや。


思考がそれたけど、そこで私はよく考えてみる。大事よね、損得勘定。

そして熟考した私は気づいたのよ。異世界って言ったら・・・。



「ちょっと待って。もしも悪役令嬢になっちゃったら、処刑とかもあるじゃん! 私の元の寿命ってどれくらいあったんですか? 転生した先でもちゃんと老後を迎えられます?」

「お主がいくつまで生きられたのかは教えられんが、まぁ転生した先でも若くに亡くなる事は無いとは言える。それに良い事したのに変わりはないから、ちゃんとヒロインに生まれ変わらせてやろう」




おおう! それなら安心?

でも言い方に棘があるなぁ・・・、じいちゃん神様。



私はちょっと納得いかなくて、おじいちゃん神様を上から下までチロッと流し目した。



(まぁ、いいや)



ヒロインに決まっているなら乙女ゲームでもいいかも!

ゲームしたこと無いから、逆に楽しそう!


(いや、ちょっと待て、私)


ここで二度目の熟考タイム。



バッドエンドって、よく修道院に入れられてない?

それって死んではいないから、残りの寿命を全うするとも言える。塀の中でだけど。自由が無いけど。



やったことない乙女ゲームの世界に転生したら、バッドエンド迎えちゃう可能性高くない?

いくらヒロインに転生出来るって知っていても、悪役令嬢も転生していたら、絶対負ける。

無理っしょ? 最近、逆ざまぁって流行ってるらしいでしょ? 無理無理無理無理。秒で死んじゃう自信あり! そうだ。死にはしないんだ。じゃぁ修道院に押し込められてご隠居様みたいな生活させられる!


嫌だ! エンジョイしたい! 恋したい!


かと言って、ネット小説も難しい。片手間で読んでいたからほとんど覚えていないのよね・・・。

しかも勧善懲悪大好きだから、もっぱら読むのは断罪系。いやん、首ちょんぱ!





難しい!ってうんうん唸ってたら、流れ作業大好きなおじいちゃん神様が、痺れを切らして貧乏揺すりまでし始めちゃって。

ストレス? 気が短すぎない?




「別に二次元なら小説や漫画でなくても、ディ〇ニーでも構わん!」って怒り出しちゃった。



あんまり怒鳴らんでよ。目の前で血管切れて倒れられたら目覚めが悪いわ。


あ~、あのおばぁちゃん、絶対私のせいで目覚め悪そう・・・。かたじけないっ!




ディ〇ニーかぁ・・・。どんな話があったっけ?




って考えたのがいけなかったのかなぁ? 今でもその辺の記憶があやふやなの。



ディ〇ニーとバレエ作品って被ってる題材多いじゃない? え? 知らん? ・・・そこそこあるのよ。


それを、連想ゲームみたいに考えてたら、痺れを切らしたじじぃが突然切れちゃって。え? 逆切れ? ってか、沸点低くない? カルシウム足りて無いんじゃない? 牛乳飲んでる?


そう私が頭ん中でちょっとじじぃに切れてる間に、「もう、行ってまえ!」って言って、急に杖をぶおんって振り出したのよ、そのじじぃ。



そしたら私の足元が急に、くるくるっとね? 不思議の国に行っちゃった女の子みたいに渦巻と共に、落ちて行ったのよ~、私。

あら不思議!








「で。気づいたらここなの」



私は独り言ちて、辺りを見渡した。

十代の乙女になった私は、栗色の髪に(はしばみ)色の瞳を持った村娘になっていた。

さっき湖の水に映る自分を見て、前世の記憶と、くそじじぃとのあれやこれやを思い出したの。

お家に鏡なんて無いからね。


自分が生きて来た十数年の記憶と、前世の記憶が融合して、私気づいたの。

ここが『ジゼル』っていうバレエ作品の中だってことに。



ジゼルとは、2部構成のバレエ作品で、体は弱いが踊りが大好きな村娘ジゼルが、ロイスっていう少年と恋をするんだけど、この少年が実はお貴族様でね。

え? 玉の輿に乗っちゃうの? って思ったそこのあなた。

爪があま~~~~~~い!!!!



アルブレヒト(ロイスの本名)は、村娘と気楽な恋をしていただけで、婚約者もいる正真正銘貴族のクズ男なのです(パンパカパーン!)



二股掛けられていた事に気付いた体が弱いジゼルちんは、心が壊れて心臓発作で亡くなってしまうんです。しかも1幕で!!!



・・・・。



「死んどるやないか~~~~い!!!」(か~い)(か~い)(か~い)



山びこが私を現実世界に戻してくれたわ、ありがとう、山びこ。いい仕事するね。



私気づいたんだけど、おかしくない?


たとえ前世の私の寿命が80歳までだったとしても、死んじゃったのが30ちょっと。

つまりじゃぁ、50歳弱までは、この二次元の世界で生きていられるってことよね?

でもジゼルの中には、もうクソ男との恋愛が始まってしまっている記憶がある。



「え? もう死ぬんだけど・・・」



だって、1幕で死んで、2幕では精霊ウィリとなって出て来るんだもん。

ここがバレエダンサーの腕の見せ所なのよ!

トウシューズっていうのは天使や精霊の様に軽やかさを表現するために生まれた物なの。

だからジゼルの2幕では精霊になったジゼルが、重力を感じさせないジャンプや踊りを見せるの。素敵なのよ~。

絶対に自分ではやりたくない作品No.1なのよ~。



・・・。

現実逃避しちゃった。



「私・・・。もうすぐ死んじゃうよ~~~!!!」



私は号泣しながら森の中から走り出し、お家へと泣きながら帰った。


頭の中ではくそじじぃ神への恨み辛みを言いながら。




(嘘つきじじぃめ! 覚えてろ~!)







(♪グッバイ~)はメロディをつけて読んでください。

私はどこかの男爵様のメロディです。

あれ? あの人男爵じゃないの? 男爵のふり(pretender) してただけ?

ジゼル、村娘だからわかんなーい。

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