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第6話 癖強めな夢のスローライフ?


 王国領土内でも、一際辺鄙な孤島の領主となった俺。

 だが一歩足を踏み入れれば、そこは、かつて王国を騒がせた悪役令嬢と悪役令息しかいない島だった。


 ◆島民その一、アリス・ヒンメルト()侯爵令嬢、18歳。

 王太子の婚約者にして淑女の鏡とも言われたが、王太子が懸想した平民の少女暗殺未遂により島送り。


 「殿下にたかる虫を追い払っただけですのに、潰し損ねましたわね」

 

 と、むしろやる気を漲らせ、機会があれば確実に仕留めます、とのことだ。

 島にある特産品をいち早く貴族向けに商品化したのは彼女で、その流通には公爵家もこっそり絡んでるらしい。

 長年の王妃教育が十分に生かされた結果とのことだが……王妃教育ってどんだけだよ。


 ◆島民その二、ザックバラン・コンクラーヴェス()伯爵令息、22歳。

 財務長官の汚職摘発に部下が()()()り失敗、献上品の偽装ジュエリーを摘発しようとしたら()()()からの誤通報、極めつけは第二王太子直々に擁立を頼まれたのに、なぜか土壇場で「やっぱり兄上を支えます!」とまさかの第二王子に裏切られる()()()()展開で島送り。


 「何故誰も俺の指示通りに動かない……!」

 

 と幻果酒を作りながら管を巻くこいつは、多分、不運なだけな気がする。

 ちなみに元々鑑定に秀でた一門らしく、宝石加工なんかをメインでやっているようだ。


 ◆島民その三、リリィナ・メーヴ元男爵令嬢、16歳。

 度重なる貴族位の高い令息らに、婚約者の有無を問わず色仕掛けや突撃をおこない、ついに辺境伯令息にキレられ島送り。


 「おかしいなぁ、小動物系女子って人気ですよねぇ?」

 

 と懲りずに島に自生してるアモーリリス草から惚れ薬を作り、秘密裏に流通させてるらしい。……おい、なんてものを売ってんだ、絶対にバレるなよ?!

 

 ◆島民その四、フィロメーナ・エウセビ・アイリン・フィオレンティーナ・ド・ラヴィス・クラヴィス・ヴァンダルシア()子爵令嬢、16歳。

 いきすぎた薬草愛により、禁止されている毒草やキメラ草――食虫植物ならぬ、食人植物――を育てて島送り。


 「ちょっと加減を間違っただけ。次はもっとうまくやる」


 と再度キメラ草の育成に力を入れているようだ。頼む、この島では勘弁してくれ。

 とはいえ、先ほどの塗装剤や、獣避け、産業でもある香水やアロマ、惚れ薬などの調合は彼女がおこなっているとのことで頭が上がらない存在になりそうだ。


 ◆島民その五、カネガアール・マッスルベリオン()伯爵令息、23歳。

 ただの脳筋かと思いきや地質学オタクの金鉱ガチ勢で、何度も領地侵犯で掘削をおこなったせいで島送り。


 「大地が俺を呼んでいる!」

 

 と叫びながら島の隠れ鉱山を発掘しており、合間に海に潜っては真珠を取って島の産業を支えているらしいから意外と有能だ。


 そして領主の俺、リオン・ルーシェンレッド。

 残念ながら俺には他の五人みたいな癖つよな紹介文なんてものはない。

 

 公爵家の側室生まれで、後継者争いが面倒で弟になすりつけようと手を抜いたら、悪役貴族島の領主になっただけの可哀そうな19歳。

 しかも、領主としてやってきた孤島はすでに他の五人によりインフラ整備済の開拓済みで、俺は順調にニート領主の道を歩んでいる。


 そんなのんびりとした朝が迎えられるかと思ったら――

 


 「えへへ、おはようございますリオン様ぁ♡ 昨日は激しかったですね♡」

 「……ん?」


 

 朝、目を覚ましたら目の前にリリィナがいた。

 おっと、ここは俺の部屋の俺のベッドだぞ?


 全く身に覚えはないが、もしかしたらこれはラッキースケベの上位版だったりするのかもしれない。

 とりあえず俺は、体重をかけないよう気をつけながらリリィナに覆いかぶさってみた。



 「…………え?」

 「悪い。覚えてないからもう一度……」

 「きゃあぁぁぁ! リオン様のえっちぃぃぃ!」



 次の瞬間、思いきり俺の頬をぶっ叩いてリリィナは脱兎の如く部屋から逃げ出していく。

 

 ……ひどい、なんて世知辛い世の中だ。


 

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