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俺の領地、悪役令嬢と悪役令息しかいないんだが?  作者: 熾音


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第15話 少数精鋭の過剰経済


 

 「ありえない……惚れ薬とかいう怪しげな薬で五千銀貨?! それって男爵領の年収益ですし、しかも今入手困難といわれた幻果酒の出元がこの島だったなんて……! これだけで五万銀貨超え……完全に子爵家収益ですよ……?! しかもその他合わせたら十万銀貨オーバー! これを五人?! ……五人?!」

 「あ、うん。あ……お、俺だって瓶詰くらいは手伝ってるぞ……?」

 「違いますそこじゃないです!」


 

 弟に怒られてしまった。

 いや、分かるよ? 叫びたくなる気持ちも分かるよ?

 月収益で男爵領の年収益を軽々と超えてるし、このままいけば公爵家相当だもんな?

 


 「しかもここは特別区扱いで税率は3%! しかも王国に提出してる分にしか税率はかかっていない! ですよね兄上?!」

 「え、あ、はい。全部仰る通りで」



 両手を上げて降参のポーズを取れば、息を荒くしたミハエルがらしくない紅茶の煽り方をして、やけに真剣な目で俺を見てくる。


 

 「…………脱税は元より、国家反逆罪といわれても仕方ありませんよ?」

 「そーだな」

 「……兄上が今、申告すれば……恐らくは罪には問われません」

 「そーだよなー」


 

 さくほろクッキーに手を伸ばしてぽりぽりと食べ始めた俺を見て、ミハエルは大きなため息をついた。

 


 「そのつもりはないってことですね?」

 「とりあえずはな。この島に来て一カ月だが、意外とここの生活は気に入ってるんだ。……一応、領民もな」

 「……そういえば男性がいるといいましたね。ちなみに、どなたが?」

 「ザックバラン・コンクラーヴェスとカネガアール・マッスルベリオン」

 「なんでそんな濃い面子が揃いに揃ってるんです……!」

 

 

 項垂(うなだ)れるミハエルには俺もちょっと同情してしまう。

 

 だよなぁ、どっちも王都にいたら騒ぎばかり起こしてこの島に追いやられた令息だが、ここでは結構馬が合ってるらしい。

 裏表のないアルと考えすぎるザックが丁度いい塩梅らしくて、話は全然かみ合ってないんだけど、それが意外と面白かったりするんだ。

 


 「……これから、どうされるつもりですか?」

 「どうも? ただ、お前がこの事実を持ち帰らないようにお願いしたいくらいかな」



 そう言って俺がにっこり笑えば、ミハエルが今日一番の大きなため息をついた。

 まだ16歳なのにそんなにため息をついたら幸せが逃げるぞー?



 「なんだか、すっかり黒幕としての風格が出てきましたね。兄上」

 「え、嘘だろ? 俺、ここじゃ一番まともなのに」

 「まともな人間は無害そうな顔でさらっとヤバいことをしませんし言いません。あと目が笑ってませんよ」



 おっと、それは失礼。……アリスの影響かな?

 そう思ったところで外が騒がしくなってきた。



 「……なんでしょうか」

 「あー、アルかなー。ちょっと待ってろ」



 俺は近くの窓を開けて、目的の人物を探す。



 「アールー? お、ザックも一緒か。どしたー?」

 「おぉ領主殿、いいところに! 先ほどフィーロの薬草園で鹿が罠に掛かってたから持ってきたぞ!」

 「ひとまずその場で血抜きして連れてきました」

 「おー、さんきゅ。じゃあ今から捌くわ。お嬢様方ー! 昼はバーベキューなー! ……もちろんミハも食べてくだろ?」

 「……へ?」


 

 ぽかんとするミハエルの頭を撫でてから俺は笑った。


 

 「だって俺がちゃんと生活してるのを見ないと帰らないんだろ?」

 「……ぁ……」

 「とりあえず今から鹿を解体するから、後学のために見とく? 多分、騎士団でもやってるだろうけど」

 「え……っと実は僕、捌いたことがなくて」

 「まじ?! 副団長、俺にばっかりやらせてたくせに!」



 ひどい。いくらミハエルのほうが可愛いからって差別が過ぎる。

 なーんて今さら文句言ったところで意味はないし、実際役に立ってるからいいんだけどさ。

 

 俺が窓から離れたところで、今度はひょっこりとフィーロがドアから顔を覗かせてきた。



 「……リオン様、ばーべきゅー?」

 「あぁ、鹿が捕れたって」

 「オス?」

 「あーどうだろなー……でも季節的に鹿茸(ろくじょう)じゃないけど」

 「でも鹿角(ろっかく)も使えるから」

 「そっか。じゃあオスだったら角残しておくな。アリス達にも一応声かけといてくれ」

 「ん、分かった」



 そう言って、ミハエルにぺこりと頭を下げてドアの向こうに消えるフィーロを見送ってからミハエルは俺を見上げた。



 「……ん?」

 「楽しそうですね、兄上。王都にいた時、いつもつまらなそうな顔をしていたのが嘘みたいです」



 ミハエルにそう言われて、俺は初めて、ここでの生活を思いのほか楽しんでることに気が付く。

 確かにここは、王都とは違ってはみ出し者ばかりの変な連中しかいないけど――それでも退屈や窮屈さとは無縁の場所だ。

 そう思ったらなんだか妙な気持ちになって、窓から流れる風に浮かされるように俺もつい笑ってしまった。



 「住めば都ってやつなのかもな」


 

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