第13話 ハーレムは男の夢……?
「なっ、な、なぁんですかこれぇぇぇ――!」
あぁ、うん……そうだよなぁ……そういう反応になるよなぁ……
領主邸に入るなり響く大絶叫を、俺はどこか遠い目で見守る。
荒れた見た目とは違い、中は見事な貴族屋敷そのものの領主邸。
そりゃ誰だってミハエルと同じ反応をするだろう。
しかも荒れている、と見せかけて実はしっかりと塩害風雨対策の薬剤が塗られており、薬剤開発担当のフィーロ曰く、元々の傷みを利用したカモフラージュなんだと。
途中の険しい山道、と見せかけた快適な歩道もそうなのだが、この島には外部には漏らせないような秘密がいっぱいあるのだ。
「ちょ、ちょっと待ってください?! ここ、王都から離れた島なのになんでこうなってるんです?! 」
混乱するミハエルの意見には俺も完全同意しておこう。
だってうちの領民が有能過ぎて、俺がこの島に来た時には完全に金策が整ってたんだからな。
「――……あら? もしかして、そちらがリオン様の弟君かしら?」
「は! ということは噂のルーシェンレッド家の次期ご当主様?!」
「……熊は、狩れなさそう……」
おい待てフィーロ。基準。基準が熊なのは絶対変だから。
そう言って二階から降りてきたのはうちの看板悪役令嬢の皆々様だ。
その姿に気付いたミハエルはハッとする。
「ヒンメルト令嬢にヴァンダルシア令嬢……それに、レーヴ家令嬢まで……?! 一体なぜこのような場所に貴女方のようなご令嬢が……?!」
慌てて礼をとるミハエルに俺は感心する。
すごい、うちの弟ちゃんと社交してた……!
ミハエルの凄いところは、俺とは違って一度見た人間の顔や名前は忘れないところだ。そしてそれは、上に立つ者としてはかなりのアドバンテージになる。
だからこそ俺は、そんな自慢の弟に当主の座を押し付け……譲って、南国バカンス……いや、静かな隠居生活を楽しもう……いやいや、受け入れようと思っていたんだが……って俺の心の声が正直すぎるな!
「……兄上?」
うん、ご指名ありがとう。
説明を求むと顔全面に書いてるミハエルに苦笑して、俺はとりあえずサロンのほうに歩き出した。
途中で降りてきた女性陣にも声をかける。
「今から茶淹れるけど、アリス達も飲むか?」
「えぇ頂きますわ」
「わぁーい、私、リオン様の紅茶大好きですぅ♡」
「角砂糖3つ、あと……」
「ミルクとミントな? 分かってるよ」
「ん……」
フィーロの頭にポンと手を置けば満足げに頷かれた。そりゃ、毎日のように茶を淹れてたらそれぞれの嗜好ぐらいは覚えるよな。
「私はレモンですよぉリオン様っ」
「はいはい」
相変わらず腕に絡んでくるリリィナだが、どうやら島にいる男性陣の中では俺が一番懐きやすいらしく、今日も今日とて控えめな胸を寄せてくる。
だが申し訳ない。俺としてはもうすこし豊満なお胸様が好みなので毎度ながら華麗にスルーさせて頂いている。
そういやアリスだけは俺をザックバランと同じくビジネスパートナーとして扱ってくれているが、最近はアフタヌーンティーをご所望だから、やっぱり俺には料理人としての地位が求められているのかもしれない。
……ふむ。今度、スコーンでも焼いてみるか。
そんな感じでぞろぞろとサロンに向かう俺達に、ミハエルがポカーンとした目で見てきた。
ん? アリス達がいて気まずいかもしれないが、ここで客を接待できるのはサロン兼リビングしかないぞ?
「あ、あにうえ……?」
「ん?」
「い、いつの間に令嬢方相手にそんな巷で流行りのハーレムのようなことに……!」
「いや、なってないぞ? 全然ハーレムになってないぞ?」
驚いた。
いや、ミハエルがそういった流行りを知ってることにも驚いたが、まずはこの状況が夢のハーレムだと思われていることに全力で遺憾の意を表したいと思う。
だってこの島では、一般的なハーレム論は適用されないからだ。
「なぁ、フィーロ。君が俺に求めてるのは?」
「新鮮な獲物と採取が難しい薬草の確保と美味しいごはん」
「……アリス。君は?」
「有能なわたくしの時間を確保し、その他の所用全てを担える人材であることと、後はティータイムの充実ですわね」
「…………リリィナ?」
「私はリオン様のこと大好きですよぉ! 特にフルーツを取って剥いてくれるリオン様が大好きですっあとお魚捌くのが上手で、小骨も取ってくれますよっ」
「……以上だ、ミハ。これがこの島のハーレムだぞ?」
知ってるか? 世間一般ではこーゆーのは"雑用係"っていうんだ。




