序章:第一話 神様のオシゴト
「アルタウル!」
「ん?おお!一華か!」
私の相棒、アルタウルはいつも通り天界でのほほんと笑っている。
「アルタウル、神待ちがまた発生した!」
「……なぬ?」
先程までの笑顔はどこへやらアルタウルは顔を顰める。神待ちが成功すると、私たちでも止められない。神待ちを成功させられる神はだいたい強力な力をもっているからだ。
「それはどこだ?」
「んーと……あ!ここ!血岬町三丁目!」
私が天界からの地図を指さす。
「ぬぅ……そこでの神待ち発生が多いのぉ……」
「うん……そこになにかあるのか……って!考えるこはあと!対処しにいくよ!」
アルタウルの手をひっぱって天界をおりる。そこには目的地に連れて行ってくれる便利な地図、『神衛図』が待ち受けている。
「血岬町三丁目!」
私が神衛図に向かって叫ぶとぱぁーっと光が私とアルタウルを包んだ。
「……っと、あ!いた!」
「……っ!もう星が完成しかけておる!」
アルタウルが叫ぶ。
「いこう!アルタウル!」
「おう!」
アルタウルは空中に浮かび上がり、手をかざす。
「お嬢さん!あんた、何してるかわかってるかい!?」
「……っえ?」
神待ちをしている女の子はアルタウルを見つめてびっくりしている。
「神……様?」
「悪いがあんたを迎えに来ることは出来ない!僕にはもう神衛者という相棒がおっての!」
女の子はなんだと目を伏せる。
「……私のこと、助けてくれないんだ」
「……っ!」
アルタウルは女の子にかざした手をおろす。
「……っ!アルタウル避けて!」
その瞬間女の子がアルタウルに小型ナイフを投げる。アルタウルの頬に赤い筋が一筋通った。
「……っ!能力発動!『血液凝固』!」
「……っ!?動け、な……」
「アルタウルっ!」
目配せを送ると、頷いて手をかざす。
「明るい光よ灯れ!『暗黒消去』!」
女の子の左頬からは星が消えた。女の子は腰を抜かしてぺたっと座り込んだ。
「……ぁ…」
「大丈夫ですか!?」
駆け寄ると、頬に衝撃をくらった。女の子に、ビンタされたらしい。
「なんでっ……!もう辛いのにっ……!神様に助けてもらったっていいじゃないっ……!」
「……っ」
アルタウルが目を伏せる。
「お嬢さん、残念ながら、神待ちが成功して、来るのは闇の神たちだけなんです。闇の神たちが神待ちを成功されると、貴方の心は壊れます」
「……っえ?」
ぽろぽろ涙を流しながら女の子は此方を向く。
(やっぱり……神待ちをする人は神待ちをするとどうなるのか知らないのか……)
「……どこで神待ちを知りましたか?」
「……えっ、と、あ…」
声が震えている。そりゃそうだろう。
「ゆっくりで大丈夫です」
そう言って女の子の背中をさすりながらなだめていると女の子が口を開いた。
「……塾の、帰りに、女、の子が、話し、かけて、きて……それで、神待ちを、したら、幸せ、になれる、って……」
「……!やっぱり……」
思わず呟くと女の子は不思議そうに私をみた。
「……いえ、なんでも。その女の子はどんな姿か、覚えていますか?」
女の子は少し間を開けたあと、口を開いた。
「……よく、覚えていないけど、とても、綺麗な、白い、髪の毛でした」
「……!」
神待ちをしている人の共通点となる条件を、この女の子も満たしている。
「……ありがとうございます。それじゃあ」
なるべく柔らかい雰囲気を作ってその場を去った。
天界に辿り着くと、アルタウルはいつものやたらと豪華な椅子に座った。
「……やっぱり、みんな白髪の女の子に神待ちをそそのかされてるんだね」
私が口を開くとアルタウルは此方をみて頷いた。
「そうじゃのう……今までこんなに神待ちが急増化したことはなかった……」
可愛い幼い男の子の見た目して、口調は戦国武将みたいな古い言葉使い。
「……血岬町三丁目…そこに、なにかあるのか」
低い声がした方に振り向く。
「……ファイズルア…」
そこにはファイズルアが立っていた。
「少し、話がある。神衛堂へ行くぞ」
『神衛堂』とは、神様や神衛者が話し合ったり、神様たちが情報共有をする場所だ。
「……わかった」
アルタウルと一緒に背中をむけたファイズルアに付いて神衛者へ向かった。