幕間・意識誘導
ドラグーン公爵家が取り潰しになったという事実は、人々に衝撃を与えた──。
奴隷や悪魔、その内容はとても驚きだが……特に衝撃的なのは、いらない令嬢とされていたミスティ・ドラグーンがその摘発の原因となったことだろう。
加えて、彼女は竜姫候補ではなく……竜姫として、神殿に迎え入れられたのだ。
それは竜姫候補のカロリーナが、竜姫ではなかったということの証左でもある。
元々、マキナから忌避されていた件もあり……カロリーナは僅かな金品を手に、神殿から追い出されることになった。
◇◇◇◇◇
(どうして……こんなことに……)
カロリーナは呆然としながら、歩き進める。
学園は退学しなくていいようだが、住む場所は自分で確保しなくてはいけない。
どうして、こんなことになっているのか?
普通なら住む場所くらい手配してくれてもいいはずなのに。
なのに、最後の方では神官達は皆、カロリーナに敵意を向けるほどで。
なんでこうなったのか──。
今までの人生でも、優しくされた記憶しかない彼女はどうすることもできない。
竜の声に従って生きてきたから、自分で考えるという当たり前のことを忘れてしまったカロリーナは自分の不幸を嘆くことしかできない。
しかし……しかしなのだ。
──今の彼女は普通ではない。
本来の彼女ならば、どうすればいいか分からないと嘆いて立ち止まってしまっただろう。
しかし、マキナによって意識誘導をかけられたことによって、彼女の行動は今までとは違った。
「会いに……会いに行かなきゃ……」
彼女が向かう先にあるのは、王城。
カロリーナは、全てが竜の掌の上だと気づかずに……。
操られるがまま、動き始めた──。