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五度目の人生の始まり–憎悪の覚醒–


【注意】

作中、残酷評価・グロあります。

読む人を選ぶ作品です。苦手な人はとことん苦手だと思いますので、ブラウザバックしてください。自衛大事。


【お知らせ】

シリーズ物です。前作らを読まないとちょっと分からない部分があるかもしれませんが……ご了承ください。


では、よろしくお願いしますm(_ _)m


 




 ()()()()()()()()()──。


 彼女……ミスティ・ドラグーン公爵令嬢はその身を焦がす憎悪に、叫び声をあげた。





「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」


 ギリッ……と歯を噛み縛り、彼女は自身が寝ていたベッドの枕を、布をブチブチと引き千切る。

 豊かな金髪は漆黒の髪へ、その海のような瞳は黄金色へと変わる。

 そして……その美しさは人外のソレになる。

 それでも、彼女の叫び声は止まらない。

 狂ったように、憎悪を紡ぐ。



「なんでっ……なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでっっ!どうして私があんな目に合わなきゃいけないのっ!どうして私が殺されなきゃいけないのっ!」



 彼女が思い出したのは今までの記憶。

 信じていた者に裏切られ、殺される記憶。

 どうしてそれを思い出したのかは分からない。

 しかし、ミスティはその記憶が……あの痛みが、今までの人生が嘘ではないと確信する。



「許さないっ………許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さないっっっっ!殺してやるっ……あいつらをっ………絶対に殺して──っっ!」



 ミスティは拳を強く握り、手の平に爪が刺さり、自身の手から血が流れるのも構わずにベッドを殴ろうとして──。



「おっと……ちょっと落ち着きなさい。手を痛めますよ」



 しかし、その拳が振り下ろされることはなかった。

 ミスティの手が……いや、その華奢な身体が暖かい誰かに抱き締められ、ボロボロになったベッドの上から降ろされたからだ。

 ミスティは唐突に自分を抱き締めた人物に驚き、慌てて首を動かす。



 そして──……言葉を失った。



 何故なら、そこに白皙の美青年がいたからだ。

 美しい灰銀の髪と、蠱惑的な金の瞳。

 中性的な顔立ちは、人ならざる美貌を誇っている。

 しかし、その顔……いや、正確には眼、鼻、口から血を流していて。

 ミスティは、その美しさと血涙というミスマッチ具合に困惑のあまり硬直してしまった。


「…………おや、落ち着きましたね?」


 キョトンとしながら首を(かし)げる青年。

 それを見て彼女は、思わず真顔になってしまった。


「それは……そんなに血が垂れ流しになってたら、驚き過ぎて逆に落ち着くわ」

「おっと失礼。淑女レディに見せるモノじゃありませんでしたね」


 ぐしゃぐしゃと乱暴に顔を擦る青年を見て、ミスティはちょっと考えてから……自身のボロボロになった掛け布団を手に取り、その顔を拭いてあげる。

 彼は苦笑しながら、それを受け入れた。


「すみません」

「別にいいわ。もうボロボロだもの」


 彼の出現で()()冷静になったミスティは、さらりと流れる自身の髪を手に取り目を細める。

 記憶を思い出した。

 繰り返された人生を思い出した。

 それは、裏切られる記憶。

 無実でありながら、殺される記憶。



 一度目の人生では、王国の騎士。


 二度目の人生は、神殿の神官。


 三度目の人生は、自身の異母弟。


 そして……四度目の人生は自身の婚約者である、王太子。



 全ての記憶を思い出し、ミスティは再びその憎悪に顔を歪める。

 もしかしたら、本当はまた同じことの繰り返しだったのかもしれない。

 もう一度、殺されるはずだったのかもしれない。



 けれど……()()()は今までと違う。



 ミスティが記憶を思い出した。

 なら、彼女がするべきことは復讐だ。

 人生を繰り返していると前提したら、五度目(今回)の彼らが無実かもしれない。

 しかし、それでも彼女の憎悪は収まらない。

 彼らに復讐することしか考えられない。

 信じてくれなかった。


 無実だと訴えても、殺された。


 だから、ミスティも殺すのだ。


 無実だと訴えられても、殺すのだ。



 彼らを、自分ミスティを苦しめた者達を──。



「復讐するつもりですか?」

「………………」


 目の前の青年の言葉に、ミスティは冷たい視線を向ける。

 憎悪と共に宿った力。



 ──それは全てを破滅させる力。



 その力を少しずつ解放して、威圧を放ち始める。

 それでも、彼はどこ吹く風といった様子だった。


「あぁ、そんなに警戒しないで下さい。僕は君のお手伝いに来たようなモノですから」

「その言葉を信じろと?」

「えぇ。それに、産まれたばかりの子竜に過ぎない君に、僕はれませんよ?」


 次の瞬間──。

 ミスティよりも遥かに強い威圧が、彼女に襲いかかる。

 空間そのものが軋むような感覚。

 五感が、本能が、全てが彼に敵わないと警告を鳴らす。

 だが、それは一瞬で緩められ……傾いたミスティの身体は、彼に抱き止められる。


「ほらね?実力差は分かったでしょう?」

「…………貴方は……一体……」


 ミスティの言葉に彼は「おっと、忘れてました」と優しい笑顔を浮かべる。

 そして、彼女の艶やかな黒髪をさらりと撫でた。



「僕は《迷霧の幻竜》……名をマキナと言います。僕の主人、《破滅の邪竜》の子孫であり、先祖返りである君のお手伝いに来ました」








 これが……ミスティ・ドラグーンとマキナの出会い。


 復讐の物語の始まりであり………。





 狂った恋物語の始まりでもある。







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