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第39話 素振りは大切です

 


 模擬戦の翌日、旅支度の合間でもアリアさんは鍛錬を欠かさない。


 今も愛用の剣を手に、一人で素振りを繰り返している。


 ちなみにせっかく俺もいるのだからと、対戦形式でなど相手をしようかと申し出たのだが、丁寧に断られてしまった。


 彼女曰く、剣の鍛錬で一番重要なのは素振りであるという。


 そこまで剣術に明るいわけではない俺かしてみたら、剣による戦いとは常に相手がいるものだし、その練習にだって相手がいたほうがいいのではないかと思った。


 素振りとは練習相手がいないときにしかたなくやるものだと考えていた。


 しかしアリアさんはそうではないと教えてくれた。


 剣士にとって素振りとは、自分にとって理想の剣筋を追求するものだという。


 そこに相手がいると、相手の動きや相手の構え相手の武器、様々なものを考慮して剣を振るうことになる。相手に合わせること、もちろんそれは実戦では重要なことではあるのだが、理想の剣筋とは別のものになってしまう。


 だから強さを求めるにあたっては素振りも、実戦形式の訓練もどちらも大切なのだ。


 そして最強の剣技を求めるにあたっては素振りこそが一番重要だという。


 アリアさんの師、剣聖エルナ・ステア曰く、最強の剣士は相手には左右されない。相手は関係なく、ただ自分の理想の剣筋を振るうだけですべてを断つ。それこそが理想の剣士だという。


 それがアリアさんの目指す頂。だから彼女は素振りという鍛錬をとても大切にしていた。


 そういえば父さんもよく素振りをしていた。でも俺は素振りをした記憶はあまりない。


 きっと俺の両親は俺を魔法使いに育てようと考えていて、剣士にしようとは思っていなかったのだろう。ただ剣もある程度は使えるようにと教えてくれただけなのかもしれない。


 そんなことを考えながらアリアさんの素振りを眺めていると、あることに気がついた。


 アリアさんが素振りをしていると、極々稀に神速のような現象が起きている。


 本人に聞いてみたところ、意識的に神速を発動させているわけではないという。


 いまだに神速の原理はわからない。


 俺はほぼ間違いなく魔法であると考えてはいるものの、エルウィンさん的にはどちらとも言えないらしい。


 前世の世界。優羽として生きていた頃、俺は念動力を使って似たことができた。


 念動力を体に纏えば空を飛ぶこともできたし、ずっと早く移動することも、物理的な攻撃の火力を上げることもできた。


 だからアリアさんも俺と同じで念動力が使える可能性を考えたが、それも違う。


 まず俺は念動力を感知することができる。俺だけじゃなく、俺と同じ施設出身の能力者なら誰だってできた。


 アリアさんから念動力は感じない。


 それにこの世界では念動力を生体に使えない。人間だけではなく動物にも使えない。


 だから念動力を体に纏うことができない。


 そうなると、やっぱり考えられるのはこの世界にある魔法と言う神秘の力だ。


 アリアさんの神速を見る限りでは、その瞬間筋力が増したりしている様子は見られない。


 だから念動力のように魔力を纏っている可能性を考えた。


 しかし俺は魔力もまた感知できる。それはこの世界の人類の大抵の人ができることだ。


 神速を使っているときのアリアさんからは特別大きな魔力は感じない。


 それでもだ。神速を発動する瞬間に一瞬だけ魔力を感じるような気がする。


 そのほんの一瞬の魔法でどうやってあの現象が起きているのかはまったく理解できない。


 さらに思考を続け、思い至る。


 俺は前世でゲームはあまりやらなかった。それでもネネはゲームが大好きだったので、彼女がやっているところはよく見ていた。


 俺が今生きているこの世界のような魔法の登場するファンタジー世界を舞台にしたゲームもネネはよくやっていた。


 そのゲームには魔法だけではなく別の技術も登場していることが多かった。とくぎやスキル、アーツなどとゲームによって名称は違うが、それは剣などの武器を使用した魔法とはまた別の技術だった。


 その技術は魔法とは別のポイントを消費して使用することもあれば、魔法と同じポイントを消費する作品もあった。


 この世界にも同じような技術が存在しているのかもしれない。神速とは魔法と同じエーテルや魔力を消費して扱うことのできる魔法とは別の技術である可能性がある。


 そこまで考えて、ふと……思う。


 俺はこの世界に生まれ変ったのではなく、仮想世界やゲームの世界の中のような場所にいる可能性はないだろうか。


 イスラフィールにだったらそれも可能な気がする。


 この世界はネネとイスラフィールが共謀して作り出した仮想世界……


 まぁ……でもあれだ。


 そんなことを考えても、あまり意味がない。そもそも優羽として生きていた世界だって仮想世界である可能性があった。


 世界が本物か仮想であるかなんて、その世界を生きているものにはあまり関係がない。


 俺は今この世界を生きている。この世界を生きる俺にはこの世界こそが本物で現実だ。


 だから……


 あぐらをかいて座っている俺の足の上に座っているタナットを抱きしめる。


 この世界でも俺はたくさん考えて迷いながら、精一杯生きていくことにしよう。




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