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第23話 採集依頼



 アリアさんとパーティーを組んだ翌日。


 アリアさんが山猫亭まで向かいに来てくれて、一緒に冒険者ギルドに向かった。


 ギルドにはやっぱりこれといって目を引くような依頼はなかった。グラスベルクにはアリアさんも所属していた立派な騎士団があるのでそれもしかたがない。


 それに冒険者ギルドに頼むような問題がないことも、この町にとっては喜ばしいことだろう。


 それでも少しでも誰かの役に立つものがいいと、薬の素材採集の依頼をこなすことにした。


 採集依頼は冒険者ギルドで事前に依頼を受けてから探しに行くのではなく、その素材を用意してギルドに受け渡す形らしい。


 だから事前にギルドでするべきことは、どんな素材が必要とされているかを確認することだ。


 一通り流し見た感じでは森で取れる薬草の依頼が多い。


 この薬草からどんな薬ができるのかは知らないが、薬草集めは母さんに頼まれてよくやっていたので、薬草の見分け方や生息している場所は知っている。


 というわけで俺たちは近くの森に薬草採集に向かうことを決めて、必要とされている薬草をもう一度しっかりと確認していた。


「あの、もしかして森に入る予定ですか?」


 そう話しかけてきたのはギルド職員の若い女性だった。


「はい。そのつもりです」


「どちらの森に向かう予定ですか?」


 このへんの地名や地理のことはよくわからないので、アリアさんにバトンタッチ。


「南の森に向かうつもりでいます」


「それは丁度よかったです。ここ最近、南の森でハイイロオオカミの亜種が目撃されています。その亜種自体は体が大きいだけで見かけても襲ってくることはないようなので、問題はないのですが、三日前にその亜種を捕らえようと森に入った冒険者たちのパーティーが予定の二日間を越えても戻って来ていないんです。それでもし森の中でそのパーティーを見かけるようなことがあれば今後の予定を聞いて、ギルドに報告をお願いしたいんです」


「わかりました。それでどんなパーティーなんですか?」


「ありがとうございます。雇い主も入れて、男性だけの六人パーティーです。きっと目的の亜種がみつからなくて、滞在を延長しているだけだとは思うのですが、そのパーティーを雇っているのがガナスの王族の方で、もし何かあったら問題になる可能性もあるので、よろしくお願いします」


「わかりました。それでその亜種っていうのは?」


「亜種というのは、極稀に現れる特殊個体の総称です。今回の個体は通常のハイイロオオカミの三倍ほどの大きさのようです。場合によってはもっと見た目が変質しているものや、本来は魔法を使わない動物が魔獣のように魔法を使うこともあるようです」


 突然変異みたいなものだろうか。そんなものがいることは知らなかった。まだまだこの世界は俺の知らないことでいっぱいだ。


「わかりました。探してみます」


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


 それから俺とタナットはズズに乗って、アリアさんはココに乗って森へと向かった。


 森は町のすぐ南にあって、徒歩でも全く問題のない距離だったがズズたちもずっと厩にいるよりいいだろうと、連れてきた。


 そして今後アリアさんと一緒にこの町を出て旅をするにあたって、彼女にも一羽馬鳥を用意してもらうことにした。


 アリアさんは自分の馬を持っているらしいのだが、共に旅をするのなら足は合わせたほうが何かと都合がいい。


 後、馬鳥は群れて暮らす動物なのだが群れの中にオスのほうが多いと争いになるので、メスの馬鳥を選んでもらうようにお願いした。


 森にはすぐに着いた。背の高い木々に覆われた森の雰囲気は、俺のいた森と変わらない。


 早速、薬草採集を始める。母さんに鍛えられた薬草の知識と、ネコの嗅覚によって順調に薬草は集まっていた。


 静かな森で特に危険もなさそうなので、依頼にあった深湿草の根を求めて森の奥へと向かう。深湿草は森の中の池や沼地周辺の湿気の多いところに生える植物だ。


 ネコに水場を探すように頼んで、後はついて行くだけでいい。


「ネコ、ちょっと止まって」


 五分くらい進んだところでネコに止まってもらう。


「どうしたんですか?」


「ちょっと尿意を催したのでその辺でして来ます」


「えっ? その辺でですか?」


 驚くアリアさん。


「はい。旅に出たらこんなのは当たり前ですよ。旅では睡眠も食事も小も大も出来るときにしておくことが基本です」


 偉そうに語ってはいるが、俺も旅に関しては初心者もいいところだ。それでも言っていることは間違っていないはず。


「何だったらアリアさんもその辺でしてきたらどうですか?」


「私はまだ全然したくないので大丈夫です」


 顔を真っ赤にして首をぶんぶんと振るアリアさん。ちょっとセクハラだったかもしれない。自重しよう。


「じゃあ、俺はしてくるんで、少し待っていてください」


「わかりました。あ、用を足しに行くのにタナットさんも一緒ですか?」


 確かに……普通ではありえない。しかしタナットは普通ではないので仕方がない。


「はい。不本意ではありますが、離れないので」


 そう言いながら、アリアさんの方にタナットを向ける。


「もう一度、挑戦してみますか?」


「はい! やってみます」


 妙に気合の入っているアリアさん。まだタナットの不思議パワーに納得がいっていないのだろう。


「いきます!」


 気合一発! アリアさんがタナットを俺の背から剥がしにかかる。


 やっぱりタナットはびくともしない。アリアさんが必死の表情で力を入れて引っ張ってみても、俺ごと引っ張られるだけでタナットは表情一つ崩さずにどこ吹く風といった様子だ。


「うー。びくともしません」


 アリアさんは悔しそうに言う。


「じゃあ、俺は用を足しにいってきます」


 進んでいた方向から横にそれた先にあった大きな木に向かって用を足す。


 そしてアリアさんたちのところに戻って、またネコの案内で水場に向かおうとした時だった。


 時折聞こえてくる鳥の声以外静けさに包まれていた森の中に、突然風が吹き荒れる音がした。


 森の木々を掻き分けて進む風の音に、せわしく揺れる枝と葉の音。


 自然に生まれた風ではない。魔法だろう。


「この風は魔法によるものだと思います。もしかしたら件の冒険者パーティーが亜種と戦っているのかもしれません。向かってみましょう」


「わかりました」


 俺たちは音のした方へと向かって走り出した。



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