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第22話 手合わせ



 アリアさんを仲間に向かい入れた後、まずは冒険者ギルドに行ってパーティー登録をした。


 ちなみにアリアさんは数年前に冒険者登録だけはしてあったらしくDランクだった。


 そしてパーティー登録をした後、俺たちは互いの実力を見せ合うためにとアリアさんに連れられて、アリアさんの訓練所に来ていた。


 そこは町を覆う壁を利用して作られた高い壁に囲まれた広場。壁に囲まれているので壁の外から中は見えない。


 一部屋根があるところもあって、そこには様々な訓練用の武器やトレーニング用の道具が並べられている。


 グランベルでランク査定を受けた広場より面積こそ狭いが、設備としてはずっと充実している。それがアリアさん個人の訓練所というのだから驚きだ。


 どれだけお金持ちなんだろうと考えていて、気付いた。彼女のフルネームはアリア・ヴェリオルだ。


「もしかして、アリアさんはアーリングさんの親族ですか?」


「はい。アーリングは私の父です」


 なるほど。だったらこの訓練所も納得だ。


「あの……ところで、妹さんはずっと背負ったままですか?」


 もう当たり前のことになりすぎていて忘れていた。普通は妹を背負ったまま戦いはしないし、訓練だってしないのだ。


「あー、え…と、妹のタナットは取れないので、このままで」


「取れないというのは?」


「力ずくでいいので取ってみてください」


 そう言ってアリアさんの方に背を向ける。


「タナットさん、危ないので少しの間だけお兄さんから離れてくださいね」


 言いながら、アリアさんはタナットを俺の背中から下ろそうと試みる。


 しかしやっぱり離れない。


「あれ? これ……おかしくないですか? まったくびくともしないんですけど」


「タナットはこれが仕様なので、このままで大丈夫です」


「いや……おかしいですよ。手を離してもらおうとしても、指一本動かないですし、足なんかこれは完全に服にくっついているとしか考えられません」


「でしょう。タナットはどうやっても取れないんです。だからこのままやりましょう」


「わかりました。妹さんには当たらないようにします」


 少し腑に落ちてはいなさそうだが、タナットは不思議少女なのでどうしようもない。くわしい説明を求められたところで、俺だってわからないのだ。


「ではまずは私からお見せします。得意なのは剣術です。魔法も一通りは扱えます。普通の剣も使いますがこんなものも扱います」


 そう言って見せてくれたのは木製の少し長めの短剣の柄に長い縄が括りつけられたものだった。


 俺も木製の剣を手にとって向かい合う。距離は5メートル程。


「では、いきます」


 下手投げで短剣を投げてきた。実戦ではないからだろうか、そこまでのスピードはない。軽くという感じだ。


 俺は剣でそれを弾き、短剣は地面に落ちた。


 アリアさんは縄を引く。しかし短剣を手元に戻すわけではなく、縄を操って頭上でくるくると回しはじめた。


 ビュービューと風を切る音がする。


 そしてまた短剣がこちらに迫ってくるが、やっぱりスピード押さえてくれている感じだ。


 今度は剣でなく手で受け止める。


 その瞬間だった。アリアさんの縄を持った手が上下に動く。その動きによって生み出された縄のたわみに短剣を持った俺の手が絡め取られる。


 そしてアリアさんは縄を引く。ただ力で引くのではなく、自分の体を回転させて縄を自分に絡めるようにして距離をつめてくる。


 そして俺との距離がだいぶ近づくと縄を持つ手を下げて縄を踏みつけた。


 すると縄に下へと引っ張られて俺は彼女の前に跪くような形になる。完敗だ。


「まいりました。面白い武器ですね」


「そうでしょう。剣だけで戦うと誓いを立てている私の剣の先生が、距離を取っても戦える剣として開発した武器です。次は普通の剣技をお見せします」


 互いに普通の木剣を構える。


「では、いきます」


 普通、剣の実力者同士の戦いでは間合いの読み合いが重要になる。


 それなのに彼女は間合いを気にすることもなく、剣を上のほうで構えたままで一歩踏み出した。


 そこはもう俺の間合いの中だった。剣を薙ぐ。


 あの構えで、この距離では決着はついたようなものだった。


 しかし……いや、確かに決着はついた。俺の首に剣が突きつけられていた。


 意味がわからない。何か特別な技があったわけではない。ただ、ありえないスピードだった。明らかに人間に可能な速さではなかった。


「今のは何ですか?」


 意味がわからないのだから聞いてみるしかない。


「神速という技です」


 神速――確かにその名に違わぬスピードだった。しかし俺が知りたいのは技の名前じゃない。そのメカニズムだ。まるで彼女だけが倍速で動いているような、どう考えても人間に出せる速さではなかった。


 考えうる答えとしては、魔法だ。それこそ前世の世界にあったゲームの魔法みたいに、バフをかける魔法が存在するのかもしれない。


「その神速というのは自分の速さを上げる魔法ですか?」


「いえ、魔法ではありません。私の剣の先生が編み出した剣技です」


 魔法ではなく、剣技だという。意味がわからない。


「剣技ということは技術でその速さを出しているんですか?」


 俺の言葉にアリアさんは少し考え込む。


「実はどうやっているのかは私もよくわからないんです。もともとは先生が早さを求めて修行を重ねた結果に生み出した技で、私も先生に教えられたように修行をしていたらいつのまにかできるようになりました」


「どうやってその技を使うっていうか、発動させているんですか?」


「うーーん……そうですね。頭の中で神速いくぞって気合をいれている感じです。そうするとほんの一瞬、約二秒くらいですがすごい速さで動けるんです」


「なるほど」


 やっぱりだ。本当にいいことを聞いた。たぶん神速は魔法だと思う。俺が使っている無発声魔法の要領で使っているのだろう。


 魔法で身体能力の強化まで可能だとは考えもしなかった。


「すごい技ですね」


「でしょう。この技を使えるのはたぶん私の先生のAランク冒険者のエルナ先生と私だけです」


 そう言ったアリアさんはとっても得意気だ。


「じゃあ、次は俺の技をお見せしましょう」


 すでに俺は二連敗だ。負けてばかりではいられない。


「俺はどっちかというと魔法が得意です」


 神速なんていう凄い技を見せてもらったのだから、俺も手の内はさらけ出そう。ただ念動力は魔法だということにはしておく。


 持っていた木剣から手を離す。しかし木剣は地面に落ちることなく浮き上がる。さらに屋根の下に立て掛けてあった木剣を三本、合計で四本の剣をテレキネシスで操ってみせる。


「ええっ? これは魔法なんですか?」


「はい。絶対にそこから動かないでください」


 そう言ってから、剣を自在に操りアリアさんの頭上高くへと移動させる。


 そして急降下。アリアさんを囲むように四本の剣が地面へと突き刺さる。


「すごい……これが魔法だなんて信じられません。本当に魔法なんですか?」


「はい」


 嘘だけど、気にせず堂々と頷く。


「何という魔法なんですか?」


「特に名前はありません」


「えっ? でも……あ、確かに呪文は唱えていませんでした」


「はい。俺は呪文は唱えません」


 言いながら、手の上に小さな炎の鳥を生み出す。


「すごい。Aランク冒険者、ララーナ・アルヴィオンが提唱していた無発声魔法ですか?」


「はい。ララーナは俺の母です」


「えっ? アゼルさんのお母様が、ララーナ・アルヴィオンなんですか?」


「たぶんそうだと思います。ただ母は結婚しているのでララーナ・イグナスです。旧姓がアルヴィオンだったのかは知りません」


「あの、ララーナさんのことを人に知らせてもいいですか?」


「えと……どういうことですか?」


「私の魔法の先生がラケーレ・アルヴィオンといって、ララーナさんの姪にあたるアルヴィオン家の方なんです。ララーナさんは確かに魔術ギルドを追放されていましたが、家族とは仲良くやっていたらしいんです。それなのにある時から、ぱったりと連絡がなくなって、ずっと探しているそうなんです。特に私の先生のお父様が心配しているらしく、ララーナさんのことを伝えてあげたいんです」


「そうだったんですか……でも、母は先日流行病で死にました」


 俺の言葉で、アリアさんの白い顔が真っ青に染まった。


「まさか……薬がなくて」


 ああ……なるほど。自分の父親が間接的に影響しているのではと考えたのだろう。


「違います。薬はあったんですが、母は体力的にもたなくて」


「そうだったんですか。残念です。それでもそのことをアルヴィオン家の方に伝えてあげてもかまいませんか?」


「別にかまいませんよ」


「ありがとうございます。それでお父様はどうされているんですか?」


「父はもっと前に、アンダールとの戦争で死にました」


「そうですか……」


「そういえば、ルヴェリアとアンダールはどうして戦争になったんですか?」


 戦争のことは母さんにも聞きづらかったので、ずっと知らないままだった。


「私たちの何世代も前、ずっと以前からルヴェリアとアンダールは国境付近にある大きな運河を巡って争っていたそうです。先の戦争以前はその川はルヴェリアのものでしたが、戦争の後アンダールのものとなりました」


「そうだったんですか」


 その川は知っていた。俺が住んでいた森を東に抜けた先にあった川だ。父が生きていた頃、何度か行ったことがあった。


 本当に大きな川で横幅は10メートル近くあったと思う。


「では手合わせ続けましょう」


「はい。私、キミッヒ兄弟をべちんと潰していた魔法を受けてみたいです」


「わかりました」


 そんなふうにしばらく互いに技や魔法を見せ合った。


 アリアさんは相当な実力の持ち主だ。神速という技も相まって、剣術では手も足も出なかった。


「あの、明日はどうします?」


 手合わせを終えて、装備を片付けているとそう問いかけられた。


「せっかくなので、ギルドで何か依頼を受けてみましょうか?」


 実はアリアさんとパーティーを組む前からそのつもりで装備の整備をしていた。


「はい。そうしましょう。とっても楽しみです。明日からもよろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願いします」


「タナットさんとネコさんもよろしくお願いします」


 タナットは無反応だったが、日向で丸くなってのんびりしていたネコはナーっと返事を返した。



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