婚約断罪破棄にイエスマンは実在するのか?
「居るわけないでしょう?居たら色々な国で大問題です」
女性のように美しい長い黒髪、聖騎士の正装を着た青年Mさんは足を組むと目を細めた。
「ふふ、考えても見ろ?そんな現場に居合わせた者がイエスマンだったら、一大事も理解できず政治すら出来ないぞ?」
赤い髪を一つに結わえ、黒い騎士の正装を着た青年Sさんは楽しそうに笑う。
二人は対称的に美しい。
「まぁ、女性の間で風変わりなお伽噺が流行っているのは知っていましたが、実際と空想とは違うのですよ」
Mさんは頬杖を付く。
「おや?何だか奥が騒がしいな?」
ふとSさんは何かに気付く。
眩しい二人に続いて、チビエマ記者の私が見詰めた先には……。
「伯爵令嬢クオリアとの婚約を破棄する!!」
どっかの王子が令嬢を指差して叫んだ。
「まぁ……そんな……」
青ざめるクオリア様……。
「ほう?元女として、聞き捨てならない物言いだな?」
Sさんは不愉快そうに腕を組む。
「えぇ、そうですね。私達は大切な方の為に魔法で転化しましたが……勿論今でも女心は忘れていないですよ」
Mさんも強気に笑う。
そう、MさんとSさんは元々絶世の美女でかつての時代では最強の方々だった。
とある姫様の為に、男性に転化したのだけどやはり美しい。
チビエマ記者は二人のファンです。
「なっなんだ!?貴様らは!?」
「君には仕置きが必要だな?」
「ふふ、地獄を見せて上げましょうか」
王子は二人に詰め寄られていて羨ましい。
「あっあの、大丈夫ですか?クオリア様」
「これはチビエマ記者……お恥ずかしい所を見せてしまいすみません」
クオリア様と私は幼馴染みの親友同士。
両親も親友で、良く二人の家を行き来していた。
「むかつくから今日は沢山酒を飲みますわ!!」
「付き合うよ」
クオリア様と私は、酒を飲みまくり、王子はいつの間にか姿が消えていた。
クオリア様の家は伯爵家でも、古き王の血を引く名家。
側室腹の王子が王位を継ぐには、明確な王の血筋が重要な筈なのに。
クオリア様との婚約を破棄なんて私もビックリ。
私達は、王子の悲鳴を聞かない事にした。