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アレク・プランタン  作者: イチロー
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036 バザーの準備

❸⑦第3部幼年編

第1章前期教会学校編


「来週の休養日は教会バザーの日ですからね。あらためてみんなのお父さんやお母さんにもよろしく伝えてくださいね」


「「「はーい」」」


休養日明けの教会学校で。

シスターナターシャがこんな依頼をみんなにした。

どこの教会学校も年に一度バザーがある。これは教会に通う生徒やその親ばかりではなく、多くの人が集う教会の「お祭り」の日でもある。

この日ばかりはふだん教会に来ない人も集まるし、お酒や食事もOKのイベントだ。

生徒は歌や踊りの発表を親に見てもらう。子どもたちが運営する屋台で出される魔獣の串焼きは、バザー定番のグルメである。

もちろん教会本来の女神様関連のものや、強制ではないがお布施的なものもある。

そしてこうしたバザーの日の売上金が教会の運営資金や修繕費になるわけだ。

今年はデニーホッパー村2回めの教会バザー。俺にとっては初のバザーである。


「みんなは屋台で何を売りますか?」


シスターナターシャが問う。

子どもたちがバザーで運営する屋台は、身近に覚えられる生きた経済活動教育の一環でもあるのだ。


「アレク君何かありますか?」


「はい!俺に任せてください!みんなで準備します。なーみんな!」


「「「おぉ〜!!!」」」


(ひとりアンナだけが「肉肉肉ー!」と叫んでいたが)


「みんな悪いが、バザーの日はいつもより1、2時間早く来てくれ」


「「「わかったぞ(わ)」」」


10人足らずの教室でいつのまにか俺は級長みたいな役割を担っていた。


俺は食べて美味しく、村のみんなの生活向上の参考になる屋台をやろうと思っている。

実はそのために家族ぐるみの付き合いがあるわが家とジャンの家では、俺が作ったメニューの試食会が毎日続いていたのだ。


「アレク、美味いぞ!」


「アレクちゃんすごいわ!」


「お兄ちゃん、美味しいっ!」


「アレク君、こいつは酒にも合うなあ!ガハハ」


「アレク君すごいわ!」


試作メニューの初日、チャン家・ヨゼフ家の家族みんながとても喜んでくれた。


「アレク、今日も美味いぞ!」


「たしかにこれは毎日でもイケるなーガハハ」


「わが家もジャンに食事当番をお願いしようかしら」


同じメニュー2日め。みんなはまだ喜んでくれた。


「お兄ちゃん、美味しいよー!」


「たしかに美味いよな‥」


「ガ‥ガハハ‥」


同じメニュー3日め。

妹だけが喜んだ。


「「「‥‥‥」」」


同じメニューの4日め。

みんなが無口になった。


これがあと2日続いた。


「「「アレク(君)、もう勘弁してくれ‥」」」


そんな試食会を経て改良を重ねた自信たっぷりの屋台メニューが完成した。


・シリアルバー

女の子を中心にこの1週間、木の実を集めてもらっていた。炒って食べるものは家で炒ってきてもらってある。

香ばしいナッツ類の木の実や甘めの果物を麦、粟、稗、米(陸稲で普通に食べても美味しくはない)の穀物類で固めたシリアルバー。毎日硬い黒パンばかりじゃ飽きるからね。


穀物類は痩せた土地のわがデニーホッパー村でも主要生産物だ。

甘さの乏しい果物も乾燥して水分を凝縮すれば甘くなる。もちろん乾燥にはクラスに1人だけいる風の生活魔法のスキルを持つベンの初級生活魔法「ドライ」で。

そしてこれらの材料を固めるのは土魔法を持ったアールとジョエルの2人で。シリアルバーの型はジャンの金魔法で。


・肉団子

畠の芋類を食い荒らす害獣がチューラットとアルマジロー。



◯チューラット

ネズミそっくりの魔獣。雑食で畠の農作物を食い荒らす厄介者。危険度は低いが繁殖の高さから、見つけたらすぐに駆除をしないと爆発的に増える。肉は固く食用に不向き。


◯アルマジロー

硬い甲羅を持った魔獣。動作も遅く、危険性はかなり低い。チューラット同様に畠を荒らす厄介者。

肉は固く食用に不向き。



チューラットにアルマジロー。どちらも危険性は少ないが害獣である。なので村でも積極的に駆除(捕獲)をするのだが硬い肉質で食用には好まれない。これまでは捕獲しては焼却していた。

そこでこのチューラットとアルマジローの硬い肉を細かく刻んでもらい、塩を加えて混ぜ固めて肉だんごにする。あとはこれを串に刺したものを焼く。

ここまでの作業はみんなでできる。

転生前の俺なら、獣の皮を剥ぐなんてこと怖くて出来なかった。でもこの世界では女の子も普通にできるのだ。

刻んでミンチ状にした肉。これなら硬いチューラットやアルマジローの肉も柔らかくなり害獣駆除にも役立つはずだ。

バザー当日の朝。みんなで刻んでから塩味をつけ混ぜて串に刺してもらった。

クラスにたった1人水魔法を持っている女の子シャーリーに水を出してもらい脂でベタついた手洗いも完了。


・たこ焼き

これが今回の秘密兵器である。

たこの準備も抜かりはない。

先日俺とジャンとアンナと妹のスザンヌの4人で近くを流れる川に行き捕ってきたからだ。石をひっくり返したらどこにでもいる川の魔獣の悪魔の足。



◯悪魔の足

通称デビルフッター。蛸そっくりの魔獣。川の石をひっくり返せば何処にでも見つかる、こぶし大の魔獣。危険度はほぼ無い。実害はないが見た目の悪さから敬遠されている。



まったくと言えるくらい危険性はないが、見た目がグロいのでこの世界の人間は食べることはない。


「キャーお兄ちゃん、手にひっついた!」


「キャーアレク、取って取ってー!」


「ぎゃーアレク、俺も取ってー!」


ジャンも含め3人はキャーキャー悲鳴を上げながら石をめくっては捕っていた。

その後デビルフッターを軽く凍らせ食べやすいサイズに刻み、バザー当日まで水魔法で凍結してもらっている。

水魔法はクラス唯一発現できるシャーリーだ。

事前にジャンと2人金魔法でたこ焼き用の金枠を作った。粉を水で溶いて葱や少量の酢漬け野菜をあわせて軽く焼いたものがズバリ悪魔焼きだ。

くるくると回してボールにするのは難しかったが、ジャンと2人、毎夜の試食会で何度も串を突いて焼いているうちに上手くできるようになったのだ。


「悪魔焼きは酒にも合うなガハハ」


「これは家でも似たようなものなら作れるわ」


連日続いた試食会の当初は、両家ともに大絶賛だったのだ‥。


こうしてしっかり準備もできて、俺たちはバザー当日を迎えるのだった。

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