012 葬儀(前)
父上アレックス・ヴィンサンダーの葬儀は粛々と執り行われた。
王国からの使者、周辺諸侯、親族、寄子、家臣、町の有力商人等々の多数の参列者。俺が初めて会う大人ばかりだ。
葬儀とそれに託けた外交的な交渉云々。
俺はただぼんやりとそれを見ていた。
(倒れてから亡くなるまで。父上とは何の話もできなかったなぁ。結局目を覚ましてくれなかったし。最後に父上からかけてもらった言葉。10日ほど前、食堂でかけてもらった言葉が最後だったよなぁ)
「ショーン、弟シリウスと力を合わせて次代のヴィンサンダー家を支えるんだぞ」
父上はこう言って力強く俺を抱きしめてくれた。
(父上はご存知だったのかなー。
俺が継母のオリビアから虐められていたことを。
弟のシリウスからも虐げられていたことを。
家宰のアダムからは無視されてたことを。
ご存知だったら俺を救ってくれたのかなー。
やっぱり知らなかったのかなー。
母上が生きてたらよかったのに。
母上が生きてたら、オリビアに虐げられずに済んだのに。
ああ父上会いたいです。
ああ母上会いたいです。
俺もそっちに連れてってください…)
転生から3年の月日が経ったこの日。
俺は家族も居ない、ひとりぼっちのただの3歳の遺児だった。
もちろんチートも特典も何もない。
生きていたいとさえも思えない。
今は萎えた心がただ膨らむばかりだ。
別れの祭壇に父上を納めた柩が置かれる。
静かにモンデール神父様の説法が続く。
最前列に座る弟のシリウス。
横に並ぶ継母のオリビアと家宰のアダム。
幾人かの親族や有力な家臣の後、最後列に並ぶ俺。
(長男のショーンは無能らしいぞ)
(たしかにぼーっとした目元をしているよな)w
(次男のシリウス様はとても有能らしいぞ)
(3歳なのにあの鋭い目はどうだ)
周囲からはひそひそとさまざまな言葉が飛んでいた。
泣き出しそうな曇天の下。俺は前世の、病床から見える天井の壁を思い出していた。
晴れ間なんかどこにも無い。どこを見てもくすんだままの壁。
またひとりぼっちになった…




