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ヤンデレとか、口でなんとかすればいいじゃない?できらぁっ!

「和真」


「あ、アリサ! 雪菜をなんとかしてくれよ! いくらなんでも水着で早口になるのは誰得……」


「せ、雪菜と一緒に更衣室に入るとか、そんなの絶対許さないんだからね! も、もしどうしても見たいって言うんなら、先にアタシと……」


「ゴメン。ちょっと黙っててくれるかアリサ。そのボケに付き合う余裕は今ないんだわ」


 他にもっとツッコミを入れるべき箇所はいくらでもあったのに、何故そこの部分にだけ反応するのか。

 別に誰とも更衣室になんて入るつもりはないし、俺はこの歳で見境のないお猿さんのレッテルを張られたくない。

 結構ムッツリな部分のある幼馴染はほっとくとして、今重要なのは雪菜への対処をどうするかにある。


「えっとだな、雪菜。まずお前は誤解している」


「誤解? 私は誤解なんかしていないよ? カズくんのことは全部分かってるもん」


「いいや、分かってない。雪菜のえっちな水着姿を他のやつに見せたくないという、俺の気持ちをな」


 俺の言葉に、ハイライトの消えた目をぱちくりする雪菜。

 

「え……と。それってどういうこと、カズくん?」


「そもそも、今日水着を買いに来たのはナイトクルージングでプールに入る時のためだろ? 勿論貸し切りにするつもりだが、万が一そんな水着を着ているところを誰かに見られたらどうするつもりなんだ。お前は俺以外の男に見られてもいいとでも言うつもりか?」


「そ、そんなわけないよ! 私、カズくん以外の人に見られたくなんかないもん!」


「俺だって同じ気持ちだよ。別にいいと言ったけど、その後に今回はって続けるつもりだったんだ。いずれ見せてもらうけど、それは今じゃなくても問題ないだろ? 俺はこれからもずっと、雪菜の傍にいるんだからさ」


 幼馴染を思いやりながら、爽やかな笑みを浮かべてそう告げると、雪菜は一瞬惚けた顔をした後、次第に頬を赤らめる。

 俺の言ったことの意味を理解したのだろう。ブラックホールのように真っ黒だった瞳にも光が宿り、ヤンデレモードも解除されているようだ。


「カズくんは私のことが大事なんだ。やっぱり私はカズくんにとって特別……特別特別特別。誰よりもカズくんのことを考えてるんだもん。当たり前だよね。カズくんも私を愛してくれているんだね。カズくんからの愛を感じるよ、えへへへへ……」


(ふぃー、やったぜ。どこに地雷が埋まってるか分かったもんじゃねーな)


 ちょっとトリップしながら嬉しそうになにかをぶつぶつ呟き始めた雪菜を見て、俺はようやく安堵する。

 相変わらず自分の口のうまさに惚れ惚れするが、それ以上に冷や冷やもんだ。

 まさか水着を着るか着ないかがバッドエンドの選択肢になっているとはお釈迦様でも思うまい。

 さすがに予想外にも程があったし、空調の効いている場所にいるというのに背中に冷や汗まで伝っていた。

 今はその場しのぎでなんとかなっているが、こんなことが毎度続くようでは下手すれば天寿を全うし、一生遊んで暮らすはずのハッピー生活が遠のき、俺の寿命が縮みかねない。


「和真、和真」


 いい加減対策を講じるべきかと考えていた時、ちょいちょいと腕をつつかれる。


「ん? なんだ、アリサ。今はちょっと忙しい……」


「ア、アタシも実はえっちな水着着ようかと思ってたんだけど……」


「え」


「アタシのことも、和真は大事に想っているわよね? もし雪菜よりも心配してくれないっていうなら、アタシは……」


 上目遣いで水着を眼前に掲げるアリサ。だけどその目がほの暗く染まっていくのを見ながら、俺は目を伏せるのだった。

 ヤンデレコンボは反則だろ、おい……。

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