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真ヒロインとは後から登場するものなんですよ、ええ

「あ、う、うん。ご、ごめんね、舞白さん。わ、私たちが悪かったかも。ね、ルリちゃん?」


「そ、そうですね。ルリたちが悪かったです。ごめんなさい、マシロセンパイ」


 ほら見ろ、雪菜たちだって困惑してるじゃねーか。その姿で言われても反応に困るに決まってるわ。

 なんならお互いの恰好を改めて見てしまって何とも言えない表情浮かべてるじゃん。


『あ、これ真面目な空気でやり合う服装じゃないな』


 そう気付いちゃった顔してるよ。

 争いを止めたという意味では確かにリーダーとしての仕事を果たしたとは言えるのだろうが、自らを犠牲にしてまで空気を作り出す必要があったのかは大分議論の余地がありそうだ。


「分かってくれたんだね、ふたりとも……!」


 自分の気持ちが伝わったのだと勘違い……もとい、感動しているらしい舞白だったが、出来ればふたりがリーダーに気を遣っていることも分かって欲しいと思うのは、果たして俺のワガママなんだろうか。


「あー……」


「えーっと……」


 ……どうしよう。修羅場から一気に微妙な空気になってしまったぞ。

 俺としては安心する場面なはずなのだが、違う意味で安心出来ずドキドキだ。

 誰が舞白に声をかけるかのチキンレースが始まった感すらある。

 でもなんて声かけるよ。「その恰好で真面目なこと言っても締まらないのでとりあえず立ってもらえますか?」とでも言えばいいのか?

 無理だ。流石にそれはあまりにも空気を読めていない。

 指摘したら今度こそ舞白が泣き出す可能性がある。せっかく年長者として頑張りを見せたのに、それはあまりに居たたまれない。


(おい、どうするよ)


(和真がなんとかしてよ。アタシたちじゃ無理)


(ルリちゃんならいけるんじゃない? いつも舞白さんに対して遠慮がないしね)


(いや、流石にちょっと……マシロセンパイのことは結構気に入ってるので、あまり追い詰めるのも……)


 アイコンタクトで会話し合うも、誰もが言葉を発することを嫌がっている。


「うぅ、良かった。良かったよぉ……」


 この場で声を出しているのは舞白ひとりだ。それもなんか感極まってるし、ますます声をかけづらい空気が加速している。


『どうすんだよこれ……』


 舞白以外の全員の気持ちはひとつだった。

 このままただいたずらに時間が過ぎるのを待つしかないのかと思っていた、その時だ。


 ピンポーン


 玄関から聞こえるチャイムの音。

 それは正しく、この場における救いの福音だった。


「あ、た、宅配便かしら? アタシ、ちょっと出てくるわね」


 これ幸いとばかりにこの場を離脱しようとしたアリサだったが、そうは問屋が卸さない。


「いや、待てよ。ここは俺の家だし、俺が出るのが筋だろ? 俺が行くよ」


「アンタは今アタシたちに監禁されてる最中でしょ? 逃げ出されるわけにもいかないし、アタシが行くからここにいなさいよ」


 逃げ出したいのはお前だろ。そう言いたかったが口には出さない。


「いや、お前は今コスプレしてる最中じゃん。宅配の人がそれを見られたら変に思われるし、次から気まずいだろ。いいから俺が行ってくるって。服装だってまともだしさ」


 そんなことを言わなくても、こうしてアリサをこの場に留めることが出来る理由を持っているからな。こういう時の俺は強いのだ。


「う……それはそうね。近所の噂になっても困るわ」


「だろ? というわけで、ここは俺に任せとけ」


 俺の指摘を受けたアリサが渋々ながら手を離すと、雪菜と舞白もそれに続く。

 晴れて身軽になった俺は意気揚々と立ち上がり、玄関へと足を向ける。


「……逃げたりしないわよね?」


「見ての通り手ぶらだ。財布も持ってないし、そんなことしないって」


「ならいいけど。早く戻ってきてよね。お風呂、一緒に入るんだから」


 お前はまだ諦めてないんかい。空気を読めてない幼馴染に呆れつつ、その場を離れて玄関へとたどり着く。


(いやあ、誰だか分からないが助かったな)


 宅配便を頼んだ記憶はないが、誰にせよあの場から俺を救い出してくれた救世主であることには変わらない。

 五分くらいなら顔を覚えてあげてもいいかもしれないな、なんて思いつつ、玄関のドアを開けると。


「やっほー。こんばんはご主人様。貴方を救うべく、超有能専属メイドが来ましたよ」


 滅茶苦茶見慣れた無表情メイドがそこにいた。


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