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心の鍵  作者: まいるまいる
【2】宮殿までの道のり
3/12

【2】~1/2

 たかが一キロメートル足らずの道のりとはいうものの、階段はあるわ、回り道で障害はあるわと、なかなか目指す宮殿にはたどり着きません。


 そうしているうちに私たち二人の姿は、この世界の住人たちの、注目の的となっていました。



〔おい、あれ人間じゃねぇか〕


〔人間だ、人間だ〕


〔おい、あいつが持ってるの、あれ心の鍵じゃねぇか〕


〔おぉ、そうだ〕


 階段の上り下りに疲れ、私たちが休んでいると、茂みの陰から奇妙なささやき声が聞こえてきます。


「あれは何の声?」


「ここの住人たちだ。まずいな、どうやらここの住人たちに僕たちは狙われてるみたいだ」



〔でも女王様には人間を襲っちゃいけないって言われてるだろ〕


 今のささやきを聞いて、なぜサムが私に鍵を渡したのかがわかったような気がしました。


〔そりゃそうだけどね。あの鍵だけならいいんじゃないか?〕


「まずい」


 その声を聞いた瞬間、サムはそう言い放つとすぐに立ち上がり、辺りを見回しました。言うまでもなく、私もそれに従い立ち上がります。


「こうしちゃいられない早く宮殿に行かなきゃ」


「宮殿まであとどれくらいあるの?」


「もうあとわずかだ。行こう」


 言うより先に歩き始めたサムの後に、私も続こうとしたのですが、後ろから引っ張られて進む事ができません。


「あっ!」


 振り返った私は、予想外の光景に驚きました。尖った口をしたカエルのような生き物が、私が身につけていた鍵に食いついているではありませんか。


「きゃー、サムー!」


 慌てて鍵を引っ張りましたが、その生き物はしっかり鍵を加えていて離そうとはしません。


 私の叫び声に反応して、少し先まで歩いていたサムが急いで引き返してきました。


 サムはそのまま生き物の後ろに回ると、馬乗りになってその口をこじ開けます。


 そのおかげで、私はなんとか鍵を抜くことができたのでした。


 二人相手では敵わないと悟ったのでしょう。その生き物は、茂みに隠れるようにしてスッと姿を消してしまいました。


「どうやら本気でその鍵を狙ってるみたいだ。宮殿まで走ろう」


 それ以外に選択肢はなさそうです。


 二人はもう少しで宮殿に着けるのを信じて、階段を駆け上がり、そして駆け下りました。



〔人間だ。人間だ〕


〔鍵を持ってるぞ〕


 その声を後ろに聞き流すようにして走り続け、二人はようやくこの奇妙な森を脱出することができたのでした。



【2】~1/2

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