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第5話

 10月5日ぶん

 まとめるだけだったら早く終わった。

 後は膨らませて改訂したものを上げるだけ。

 あれ? もう一度上げてもいいよね?

 目が覚めたら自室だった。

 横には心配そうにこちらの顔を覗く姉と読書中の私に声をかけてきた騎士さん。

 姉が家に上げているってことは、案の定害がある人じゃないんだろう。



「おはよう、姉さん」

「おはよう、もう体は大丈夫なの?」

「人ごみに疲れちゃっただけだから。心配してくれてありがとう」

「ならよかった。どういたしまして」



 気絶したからといって眠りすぎたらしい。

 視界がまだほんの少し霞んでいるし、頭が若干ポヤポヤとしていて思考が定まらない。

 ただただ、良かったと言いながら微笑む姉に合わせて笑顔を向ける。


 そういえば、どうして姉の後ろに立っている騎士さんを道案内していたんだったか。

 ぼやけた思考で数刻前の会話を思い出す。うんうんと頭を数回ひねって、寝ぼけた頭がいつも通りに戻った所でようやく思い出すことが出来た。

 彼は手紙を届ける先を探していたんだった。探し人の名前はリスリア。この街の顔見知りにはリリという愛称で呼ばれている、私の姉である。



「騎士さん、道案内の最中に倒れてしまってごめんなさい」

「え? ああ、いや……。自分は君の体を支えることと君の姉に言われて運ぶのを手伝うことしか出来なかった。自分は何も出来ていないよ。だから謝らないでくれ」

「それだけで十分ですよ。というか、私を運んでくれたんですね。ありがとうございます。ところで、お手紙はもう渡したんですか?」

「……? 手紙?」



 どうやら一つの事に集中すると周りが見えなくなってしまうタイプの人間らしい。

 というか、私といた理由が定かでもない状態でこの人を家に上げたということだったのだろうか。

 つまり、姉は意外と警戒心が薄かった?

 そんなはずはなかったと思うんでけど……。


 ベッドから僅かに状態を起こしたまま考えこもうとする私に、姉が「道案内って何?」「そういえばどうして二人は一緒にいるの?」と今更なことを聞いてくる。

 私は目的を見失ってしまった騎士さんの代わりに説明することにした。



「私がいつもの場所で本を読んでいるとき『人を探しています』て話しかけてきたの。なんでも雇われ先の主人から手紙を預かっていたみたいでさ。お姉ちゃん宛てだよ」

「私? 外の人から手紙を貰うなんて初めてかも!」

「お姉ちゃんは美人だからね。騎士さん曰く色んなところで噂されてるらしいよ」

「それはなんというか……。照れるなぁ……」



 そんなことを姉と話していれば、騎士さんも目的を思い出したらしい。ハッとしたように肩を跳ねさせ、私達の会話に加わってきた。



「そうだった。リスリアという方に手紙を渡したいのだった。いやしかし、この状態の君に案内してもらうわけにもいかないだろうし。姉君、ここらで宿屋はないだろうか。今日はもう日が沈む、明日探すことにしたいのだが」

「今の話聞いてました? 聞いてましたよね? 騎士さんの目の前にいる私のお姉ちゃんがその人だってば」

「?」

「ええっと、リスリアって名前はこの街に私しかいないはずだし、私です」

「……なんと」



 その言葉を漏らしたいのは私も一緒だ。


 今日の筋トレ日記

 腕立て伏せ30回

 腹筋30回

 背筋30回

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