第1話
皆さんお久しぶりです。
ここに投稿しなくなり自堕落な生活を送り始め、余計に生活習慣が狂うことになったネットリテラシー皆無な人間、菜々瀬蒼羽です。前作『菜々瀬蒼羽の日記』では読み返せばあーあ、なんてため息がつきたくなる程のものを投稿していたアホウでもあります。あちらは検索から除外し、短編をまとめた後で削除しようと考えています。とは言っても一年以上かかりそうですが……。
というわけで、これから毎日投稿再開したいと思います。
これは日付を跨ぎましたが、10月1日分です。
賑わいを見せる街の様子を家の窓から顔を出して眺める。祭りでもないのに人の喧騒が止まないのはこの街の利点でもあり、欠点でもある。人が発する日常の明るい声色は心をポカポカと温めてくれる一方で、静かに眠りたい時にこれほどまで騒がれると鬱陶しくて仕方がない。今日この時間は、喧騒を聞いていることが楽しく感じられる時間だった。
体調は普段に比べて良好。店が立ち並んでいるせいで僅かに煤けた外気を口や鼻から取り込んでも気分が悪くなることは無い。長時間こうしていれば別だろうが、たった一時喧騒を目に納め耳で楽しめる分には体力が有り余っていた。
「ルル、おやつ買ってきたけど食べる?」
「うん! もちろん! 今日は何を買ってきてくれたの?」
「今日はこれ!」
トントンと戸をノックして部屋に入ってきた姉を笑顔で出迎える。外に出れば陽の光をキラキラと反射させて綺麗に映る亜麻色の髪の美しさは、部屋に入ったことでなりを潜めている。それでも、均整の取れた顔つきに、シュッとして女性的な体格が魅せる美しさは家族贔屓なしに見惚れてしまう程だった。
綺麗で優しい姉。ありきたりな表現だけど、誰もが羨むこんな姉を持てて私は幸せだった。自分の体が弱いとか、人並みにも力を扱えない事実をそこから引いてもお釣りがくる。私は幸せ者だった。
姉は買ってきたお菓子をテーブルに広げて自慢げに胸を張る。そんな姿を見て私は毎回思うのだ。私は幸せだけど、果たして姉は幸せなのだろうか、と。
「これって、東門の所にある!?」
「そう! ギリッギリ間に合ってね! 買えたの~!!」
「すごい! ありがと~食べてみたかったんだ!!」
お菓子を頬張る姉の表情はどこからどう見ても幸せそのものだ。この顔を見れば誰だって幸せな生活を送っていると判断するだろう。だけど、この一時を切り取って見ても、一年と言う短くも長い月日を切り取って見ても、姉は常に私によって縛られていた。
恋愛することもせず、自由に遊び歩くこともせず、夢だと語っていた職にも就かず、姉は過剰なまでに私のお世話をしてくれる。男兄弟がいない家庭で常に元気が有り余っているのは姉1人。両親や祖父母は家業を継いでくれたことにホッと一安心しているけれど、私はそんな風に考えることは到底できなかった。
「あま~!!!」
「噂は本当だったんだね、こんなの食べたことないよ」
「ね! 今度はいつ手に入るかなぁ……。あの行列、ルルにも見せたかったよ」
「そんなにすごかったんだ」
私はこの時間が楽しいから笑顔を絶やさない。私は姉の笑顔が好きだから笑顔を絶やさない。私はこれ以上姉から何も奪いたくないから。貴女の笑顔が一番心の支えになっているという言葉を信じて、私は絶対に笑顔を絶やさない。
自堕落な生活を送り筋力が衰えた。
であれば、筋トレを再開しなければ!
今日の筋トレ日記
腹筋30回
背筋30回