続・婚約破棄からの国外追放でざまぁとかもう遅い
登場人物が去勢されてたりするのでR付けてます。
「婚約破棄からの国外追放でざまぁとかもう遅い」の続編と言うか後日談です。
全員分は書いてないですけど、よろしければ。
「ようやく見つけたぞ、ミランダ!!」
「どちら様か存じませんが、エルランドとお呼びください」
シュトランス王国の隣にあるソーニャス王国にあるミランダの屋敷に金髪に碧眼、長身でスマートな優男が押し掛けてきた。ミランダの後ろにはシュトランス王国の屋敷を片付けて追いかけてきた執事とミランダと一緒に出国したメイド達が控えている。
正直エントランスで追い返しても良いのだが、しつこそうだったので応接間でローテーブルを挟んでソファーに座っている。
「貴様、婚約者の顔も覚えていないと言うのか!」
唾が飛びそうな勢いで叫ぶ男に不思議そうな顔をする。
「私には婚約者は居ないはずですが」
「ぬぐっ」
嘘や嫌味ではなく、本当に顔を覚えられていないとしか思えない態度に口籠る男の名はエバンス、シュトランス王国の第一王子だったミランダを追放した元婚約者だ。
「お、俺はお前の元婚約者だが、か、顔も覚えていない、と、言うの、か?」
「ああ、エバンス様でしたか。申し訳ありません、興味なかったもので。貴方にも王子妃の立場にも」
ミランダの家は公爵位であり、王族である祖父母や伯父にも気に入られていたため、王妃になっても面倒が増えるだけで魅力は感じなかった。おかしな親子に入り込まれていたとはいえ、絶大な富と権力を持っていたし貴族にとっての家族とはその家で働く者全てを示し、そう言った意味では家族にも恵まれていた。
「とは言え、地位や名誉を奪われて私やお前の兄を恨んでいたのではないのか?」
「いえ、地位も名誉も失ってはおりませんが」
「何を言っている。エルランド公爵家は取り潰されたではないか」
「はあ、仮にも王子だった方に1から説明しないといけないとは思いませんでした」
「な、なんだと!?」
ミランダのもとにはほとんどの情報が届いているので、エバンスが廃嫡され国外追放になっている事を知っていたが、まさかここまで無知だとは知らなかった。知ろうとすらしなかったので。
「シュトランスの公爵家と言うのは王家の血を維持するために存在している家です。つまり、血が繋がっていない人間に用はないのですよ」
「そ、それでは…」
「入婿の父も、連れ子の兄も、そもそも私が王家に嫁いだ後は平民になる予定でした。当人達は公爵位を簒奪できるつもりでいたようですけど」
「まさか、そんな…」
「あんなものは飾りですよ」
「あんなもの…」
大公家は王族そのもので、現在の大公は王弟だ。
公爵家も王の血縁者だ。血が薄くなるに従い、侯爵になる。
シュトランス王国の上級貴族と下級貴族の差はここにある。
家柄ではなく重要なのは王家の血を引き継いでいる事。
「…あ! えっと、私は女なので国外追放と言っても引っ越しただけですが…」
「ぐぬ…」
この世界の出産は命がけで、母子ともに無事と言うのは珍しく、何人も子供を産むと言うのは凄い事だ。さらに監視も追跡も簡単だ。だから女の場合は王家の血が濃くともさほど問題はない。ところが男の場合はその気になれば一年で何十人もの子供を作れる。理屈的には。監視も難しい。つまり、そのまま国外に放出すると言うことはない。法律が変わらなければミランダが男子を産んだ場合、成人前に国に連れ戻される事となる。現状だと叔父か従兄弟の養子辺りだろうか。
「えっと、なんと言って良いのか…」
「それじゃ、お前が大公家に働きかけて嫌がらせをして来たのは?」
手術をした事に触れられたくなくて話を戻したいようだ。
「何のことでしょうか。祖父も叔父も私を気に入ってくれていますので、怒ってはいらっしゃるようですけども」
「元公爵領を中心とする国内の6割を占めている穀物が値上げされた上にかなりの量が輸出に回されている」
「…これまでは、私が王妃になる前提で取り決められた物なので、破棄されれば当然かと」
「………」
エバンスは顎が外れたかと思うような顔をして固まっている。
「エバンス様はお帰りのようだわ。お送りして」
執事がエバンスを引きずって行った。
ちなみにエバンスは廃嫡されたのでただのエバンスだ。他に呼び様がない。
本来なら「様」も必要ないだろう。
「ふうっ」
メイドのセラが入れてくれた紅茶で一息つく。
もう1人のメイドのレミが茶菓子を出してくれる。
「伯父様達があまり険悪にならないと良いわね…」
国王も、そもそもミランダを気に入っている。ただ、息子の教育に失敗しただけだ。国王の兄弟仲については良く知らない。面倒にならなければ良いと口では言うが、実はあまり興味はなかった。
周りは彼女を淑女の鑑と呼び、表情の少ないその顔は貴族としてのポーズだと思っているが、実際には興味がないから表情が変わらない事の方が多かった。
優秀すぎるが故だろうか。いや、もはや予知と言っても良い。現在でもシュトランス王国の経済の3割を動かしているのはミランダだと言っても過言ではない。彼女が「こんな事をやりたい」「あそこはこうするべきでは?」と言って反対されることはほとんどないし、その通りに動かしてくれるのだ。それはこの国でも同じだった。
そう、ミランダが提案すると大抵は上手くいくのだ。
ミランダが王妃の座を望んでいればそれも上手くいっていただろう。本当に興味なかったのだ。
なんか書き始めたら壮大な事になりそうなのですが、正直私には分からんので当たり障りない辺りをちょろちょろっと書いてみました。たぶんこれで終わりです。
他の人たちがどうなったのか、とか王様どうなったのか、とか、思いつかんでございます。




