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第36回配信 チッパイエリス

 エリスがキスを求めている。


 どうすればいいのか?


 もし、キスをすれば、それはもう、付き合ってるということだ。


 ついにエリスが、僕の彼女になる。


 夢にまで見たハッピーエンド!


 でも……


 本当にいいんだろうか?


 幸せにする自信がないくせに、勢いでキスをして、エリスを彼女にしてしまっても。


 それは、自分の決意したこととちがう。


 ついさっき、ご両親に向かって立派に「宣言」したのとは、真逆の結果になってしまう。


 あの優しいお父さんとお母さんに嘘をつき、隠れてコソコソと、娘に手をつけることになるのだ。


 僕はそういう人間になりたいか?


 そういう人間が、エリスにふさわしいか?


 僕は手で、自分の口を塞いだ。


「まあだだよ」


 塞いだまましゃべったので、ふざけているみたいな変な声になった。


「エリス。キスはやめておこう。それは、お父さんとお母さんに堂々と交際宣言できるようになるまで、とっておくよ」


「ユメオ……」


 エリスの息が、顔にかかった。


「私だって、ずっと好きだったんだからね」


「ありがとう。嬉しいよ」


「好きすぎて、どうかなっちゃいそうなの」


「ホントに?」


「ユメオだけだからね。こんなこと、ユメオ以外の誰にも、絶対しないから」


「僕も」


「約束よ。でも、男の人って、浮気するんでしょ?」


「僕はしないよ」


「絶対?」


「だって、エリス以外の人を好きになったことなんて、1回もないもん」


 エリスが覆い被さってきた。


 頬と頬がくっつく。


 エリスの囁きが、耳をくすぐる。


「1回だけ、キスする?」


「したいけど、やめよう」


「1回だけ」


「ゴメンね。まだしないって決めたんだ」


「どうして? そこまでは好きじゃないってこと?」


「ちがうよ。最高に好きだからさ」


 僕は自分の気持ちを、正直に言った。


「今、エリスのほっぺが、くっついてるよね?」


「うん」


「それだけで、気持ちいいんだ」


「感触が?」


「うん。そして、胸の触れている感触もする」


「嘘っ! 私ちっちゃいもん」


「小さくても、わかる」


「恥ずかしい」


 エリスの照れた声は、僕をゾクゾクさせた。


「そういうのはチッパイといって、好む男子が大勢いるそうだ。まあ、僕は、どっちでもいいけど」


「バカ」


「それはともかく、こうやってくっついてると、すごく危ない。頭ではエリスのことを、大事にしたいと思ってるのに、それとは反対のことをしてしまいそうになるんだ」


「反対のことって?」


「つまり、頭じゃなくって、下半身の命令を聞いてしまいそうになる」


「………」


「軽くキスをして終われればいいけど、たぶん僕、それじゃすまなくなると思う」


「そう?」


「タコみたいに、エリスの口を吸っちゃうと思う」


「やだ」


「そうすると下半身が命令するんだ。チッパイを揉んじまえって」


「変態」


「いや、たぶんそうなる。それはマジでお父さんとお母さんに申し訳ない。まだ高校生の娘のチッパイを揉まれる親の気持ちを考えたら、そんな残酷なこと、僕にはとてもできない」


「……私の胸、ディスってる?」


 エリスが身体を起こして、チッパイを両手で触った。


「こんなの揉みたくなる? ホントに全然ないよ」


「下半身の考えることはよくわからない。でも揉んだらもうアウトだ。その次は、パンツを見ようとするだろう。いや、だろうじゃなくて、見る」


「やっぱり。変なことばっかり考えてる。パパと一緒ね」

 

「それに負けたくないんだ。エリスを大切にしたい。世の中には、簡単にそういうことをしちゃうやつらがたくさんいるけど、僕はそれはまちがってると思う。相手のことが大切であればあるほど、そうしちゃいけないんだ」


「ユメオ」


 エリスがようやく、チッパイから手を離した。


「私、ユメオだけだからね」


「ありがとう」


「ユメオが私を彼女にしてくれるのが、例え10年後でも20年後でも、そのあいだ絶対誰ともキスしないし、絶対誰も好きにならないからね」


「そんなに待たせないよ」


「ユメオだけよ。モノマネだって、ユメオの前以外では絶対やらない」


「さっきは面白かったよ」


「エドはるみさんの顔なんて、ユメオ以外には絶対見せないからね。本当よ」


「信じるよ」


「だからユメオも、私以外には、HGを見せないでね」


「約束する」


「ダメよ。誰かれ構わず、バッチコイなんてやったら」


「しないさ」


「あれ、もう1回やってくれる?」


「HG? 見たい?」


「うん!」


 僕はベッドに立ち上がり、全力で腰を振った。


「オッケーイ! 見てくださーい! 下半身中心に見てくださいよー!」


 そして今度は、腰の動きをスローモーションにし、


「ゆっくりに見えますか? ちがいますよー。余りにも動きが速すぎて、逆にゆっくりに見えるんですよー。どうですかー、お嬢さん」


 さらにそこからブリッジをし、


「ワワワッショーイ!!」


 手を股間にあてがって、上にひょーんと伸ばした。


「フォフォフォフォーーー!!!」


「ユメオ、もういいわ」


 エリスがどことなく、そっけなく聞こえる声で言った。


 僕はモノマネをやめて、ベッドに坐った。


「どうだった、HG?」


 するとエリスはベッドから立って、パソコンの前の椅子に坐った。


「ねえ、ユメオ、こういう言葉知ってる? 百年の恋も冷めるっていうの」


「なにそれ? 知らない。どういう意味?」


「HGをリアルにやりすぎると、女の子は引いちゃうってことよ。勉強して」


 僕は、突然エリスとの距離が100メートルも広がったように感じ、HGなんか2度と観てやるかと決心した。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 煽られて頑張ったのにユメオかわいそう……(T^T) でも、男なら好きな子のため、頑張れますね!
2021/04/28 21:52 退会済み
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