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第二話 女神様の眷属になりました。

本日二本目です。

 この女優顔負けの超絶美人さんは誰なの?

 もしかしてこれはドッキリか何かなの?


 でも、それにしてはカメラとかが見えないし、この摩訶不思議な空間を説明できる物が何一つとしてない。


「落ち着いてちょうだい」

「ヒッ?!」


 あまりの顔面偏差値に、見惚れるを通り越して恐怖が勝る。

 思わず奇声を上げて後退りしてしまった。


「ごめんなさいね?」

「いぃ、いえ!」


 …不味い。

 確実に怒らせた。


 美人さんは、ふふって笑っているけど、私は未だに謝罪もしていない失礼極まりない態度だ。


「…あの、申し訳有りませんでした」

「貴女が謝る必要はないわよ?寧ろ私の方に非が有るもの」


 なんだか、笑顔が意味深に深まった気がする。


「でも、流石に初対面で悲鳴を上げられたのは初めてだわ」

「先程は誠に、申し訳有りませんでした!!」


 日本人最大限の謝罪の誠意の象徴。


 the 土下座。


「あらあら」

「私風情がしゃしゃり出てしまい申し訳有りませんでした。お許しを頂けるなら、この身を持って償います」

「言ったわね?」

「ひょぇ」


 美人さんの纏う空気というか、オーラが変わった。

 先程までの和やかな雰囲気とは一転、整い過ぎた顔立ちが故に神話の冷酷なる女神様を思わせる。


 ……あれ?

 神様…って、つい最近聞いたような…?


「それじゃあ貴女は、今から私の眷属ね?」

「あ、はい」


 土下座のまま反射で答えた刹那ーー美人さんがいつの間にか取り出した杖で、地面を軽く突く。

 地面が閃光弾でも放ったように輝き、光に視界いっぱいが塗り潰される。


 思わず返事も待たずに顔を上げてしまう。

 直後、超常現象が私の身に降りかかる。


 鏡に物質変化した地面は、その異様な光景を映し出していた。

 そこに映っているのは私で、私じゃなかった。


 セミロングだったはずの暗い焦げ茶の髪はグングンと植物の蔦のように伸びていき、色素を失って白髪になって、肌も透き通るような白になった。

 鳶色だった瞳は、夕闇の空を煮詰めたような藍色に変わり、ジッと私を直視してくる。


 それなのに、目の前に映る少女のような年齢に見える子供はどこか、幼い頃の私の面影を残しており、私は本当にこの御方の眷属なんだと、素直に受け止めてしまった。


「私の力の一部を分け与えたのだけれど…これで信じてくれたかしら?」

「…はい。でも、女神様は大丈夫ですか?」


 一瞬、女神様がポカンと口を開ける。

 そして、私を頭の先からつま先まで確かめるように見てくる。


 でも……力を分け与えると言っていたなら、この身体に馴染み出している温かい何かは元は女神様のものだ。

 眷属にした人間だからとは言え、こんなに膨大な量の力を私に渡せば、失った分はどうやっても補う事はできないはずだ。


「うふふっ」

「ひゃっ!?」


 体調が優れないならば、今すぐにでも私に与えて貰った力を返そうと考えていると、女神様に抱き締められていた。

 今でこそ女神様の眷属だから悲鳴を上げる程度で済んだけれど、女神様に力を与えて頂いていなければ間違い無く圧死していただろう。


「あのっ、女神様?」

「ラン、貴女気に入ったわっ!」


 ……わ、たしを…気に入った…?


「えぇえええッ?!!」

「あら、嫌だったかしら?」


 子供のようにぷくぅっと頬を膨らませ、女神様が顔を覗きこんでくる。

 …でも、私の頭の中はぐちゃぐちゃになって、苦しくって、止めどなく涙が溢れては女神様の服を濡らしていく。



 今まで誰にも……実の両親や兄と妹にでさえ、求められた事などなかった。


 厳格な父と、家訓を重んじる母。


『お前の存在は私の人生での唯一の汚点だ』

『我が家に相応しく無い者を身内、ましてや娘だとは認めません』


 どんな事でもそつなく熟し、私を空気に作り変えた兄。


『金輪際、俺の周りに近づくな』


 蝶よ花よと両親の愛を注がれて育った、無邪気な妹。


『どうしてお姉様は出来損ないなの?』


 成人を待たずして、何も告げずに家を出た。

 どうせ出ていくと言っても誰も困ることはないのだから。


 社会人になっても、自分への誹謗中傷は変わらず、仕事だけに集中していた。


 女の癖に昇進して生意気だと、男性社員の先輩に言われた。

 どうせ体を売ったのだと、通りざまに足を掛けられ転ばされた。


 いっその事、死んでしまおうか。

 何度もそう思ったが、私には勇気も信念もプライドも無かった。


 そして、この何でも中途半端に熟す自分を憎んだ。

 そんなお世辞にもいい子ではない私を、女神様は認めて下さった。



「今まで、よく耐え抜いたわね」

「私は、駄目な、悪い子で…」

「頑張った自分を否定しないで」


 そっと、女神様を抱き締め返す。

 女神様はより一層強く、優しく、抱き締めてくれた。


「私の可愛いラン。もう大丈夫よ」

「はい…女神様……」


私は高校以来初めて、涙を人前で流す事ができた。

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