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悪意の倉庫

 「町中のモンスターも増えてきてるね。」

 

 セリエスさんがグラスウルフを切り倒しながら言ったように、徐々にではあるけれどさっきよりもモンスターが現れる頻度が上がってきているように感じる。

 

 今、ぼくらは冒険者ギルドを出て二番倉庫のアジトであるという場所まで向かっている。それは商店の倉庫などが立ち並ぶ倉庫区の端、貧民区と隣接するあたりにあるそうだ。

 

 メンバーはぼくとノブおじさん、そしてゴラノルエスさんとセリエスさんだ。冒険者たちのほとんどは町中でのモンスター対処にあたっていて、衛兵たちは門前でモンスターの大群へ対処している。これが二番倉庫へすぐに向かうことのできる最大戦力なのだった。

 

 「セリエスさんもさっき考え込んでたようだけど、何か二番倉庫とは因縁が?」

 「あ、違うの・・・」

 

 ぼくが聞くとセリエスさんは気まずそうにしている。聞かない方がいいことだったのだろうか。

 

 「二番倉庫のことは不可侵の犯罪組織だってことくらいしか知らないよ。そうじゃなくて黒装束の剣士っていうのがね。」

 「そっちに心当たりがあった?」

 

 セリエスさんは歩きながら小さく頷いた。単に知っているとかそういう雰囲気ではなさそうだ。

 

 「小柄で色白の銀髪。それでノブさんにも匹敵するような身のこなしのサーベル使い。」

 「そうだね、その特徴で間違いないよ。」

 

 セリエスさんが改めて確認するように並べた黒装束の剣士の特徴に、ぼくも一つずつ思い出しながら頷いた。

 

 「母さんの元相棒、剣聖カイさんは子どもに間違われるほど小柄な銀髪の女性で、サーベルを使うスラッシャーだった。後は額に大きな傷跡があったそうだけど・・・」

 「顔は、黒い仮面をつけていたから全く見えなかったよ。」

 

 あの不気味な仮面を思い出して身震いしながら言うと、セリエスさんは少し残念そうに苦笑いをした。

 

 「うん、犯罪者になっていて欲しくはないけど、やっぱり母さんに会わせてあげたい気持ちはあってね。」

 「そんなの、捕まえてから仮面引っ剥がして確認すればいいだろ。」

 

 乱暴だけど、正論ではあるノブおじさんの言い方に、セリエスさんはきょとんとして面食らったようだった。

 

 「ふふっ、そうだよね。この状況を解決して、犯人を捕まえて、それから確認すればいいんだよね。」

 

 セリエスさんはそれで吹っ切れたようで、さっきよりも足取りが軽くなったようだった。

 

 

 

 そうして何度もモンスターを倒しながら、ぼくらは周りの建物より少し大きいだけのその倉庫へと辿り着いた。

 

 ひとつ他と違うのは、倉庫の前に何人もの危なげな雰囲気の男女が立っていることだった。その半数以上は以前捕まえたエゲゼ達のようないかにも柄の悪い風体で、残りはどちらかというと身なりのいい人がナイフや剣など物騒なものを持っていた。

 

 「見るからにごろつきなのが、三番倉庫。油断はだめだがまあ雑魚だ。気をつけるのは普通の町人みたいな連中、あいつらが二番倉庫だ。」

 

 ゴラノルエスさんが小声で忠告をしてきた。なるほど怖い人ほど普通の格好をしているわけだ。

 

 「冒険者のゴラノルエスさんですね。若い人たちを引き連れて、一体何の用でしょうか?」

 「白々しい。お前らも分かってるから歓迎の準備をしてんだろうが。」

 

 奥の方にいた普通の町人風の若い女が声をかけてきた。けれど両手にはそれぞれナイフを持っているから笑顔が怖いよ。

 

 けれどゴラノルエスさんに一喝されて、こちらには交渉や説得などする気はないということが伝わったようだ。三番倉庫の連中は色めき立ってがなり立て、二番倉庫の連中は静かに武器を構えた。

 

 「時間が惜しい。俺が入り口までの道を何とかするから、お前らで突入してくれ。」

 「え? けど・・・」

 

 ゴラノルエスさんの無茶な提案にぼくが難色を示したけれど、ノブおじさんに腕をつかまれた。振り向くと黙って首を振っている。

 

 ここは、それしかない、ということか。確かにこの人数を突破した上で足止めできるようなのはゴラノルエスさんしかいないかもしれないけれど・・・。

 

 「入り口までは後ろについてこい。っおらあああぁぁ!」

 

 ゴラノルエスさんは空気が割れるほどの雄叫びと共に、バトルアックスを振り回しながら突撃を始めた。

 

 その迫力にほとんどのごろつき達は二の足を踏んで近づけず、勇敢にあるいはうかつにも近づいた者は吹き飛ばされていった。一応、側面を当てて吹き飛ばしただけで殺してはいないようだ。

 

 「行こう、バッソ君!」

 「バッソ!」

 「・・・うん!」

 

 セリエスさんとノブおじさんから促されて、ぼくもゴラノルエスさんが作り出した道を追従し、あっという間に通用口のようなところまで辿り着いた。

 

 「なんだ! こいつ、やけにでもなってるのか? ・・・ってああ! 入り口にっ!」

 

 こちらに話しかけてきていた二番倉庫のメンバーらしき女も、突然突っ込んできたゴラノルエスさんの行動が一瞬理解できなかったようだ。

 

 けれど、ぼくらが通用口から中へと入りこみ、ゴラノルエスさんだけがその場に残って扉前に陣取った所で行動の意図に気付いたようだった。

 

 「ゴラさん。」

 「私たちは任せられたことに全力を尽くそう。」

 

 ぼくがなおも心配していると、セリエスさんから発破をかけられた。そうだ、ぼくがゴラノルエスさんの心配をするよりも、今は信じて前を向くべきだ。

 

 そうして、ぼくらは激しい戦闘音が漏れ聞こえる通用口に背を向けて、二番倉庫のアジトである倉庫内へと足を踏み入れていった。

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