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非日常へ至る日常

 エストさんが王都へと帰っていき数日後、ぼくとノブおじさんは朝から冒険者ギルドへとやってきた。

 

 「どんな依頼がいいかな?」

 「討伐系のついでにフタバとか採取しとけば、魔法ギルドに行ったときノルストに売れるんじゃぁないか?」

 

 確かに、緊急性の高いものがなければそれがよさそうかも。

 

 「あれ?セリエスさんだ。」

 

 入ってすぐの場所でノブおじさんと相談していると、奥の談話スペースでセリエスさんがこちらに手を振っていた。

 

 「おはよう、セリエスさん。」

 「おはよ、バッソ君、ノブさん。」

 

 近づいて少し話を聞いてみると、別に用事とかではなく、単に話をしようとしただけみたいだ。冒険者はギルドに所属しているとはいえ基本個人活動だから、こういった横の繋がりは大切で、実際今も談話スペースにはそこそこの人数がいて色々な格好の冒険者たちが和やかに会話をしている。

 

 「それにしてもエストさんはすごかったね。元冒険者とは前に聞いたけど、まさか銀ランクの英雄だったなんて。」

 「いやー、身内を褒められると照れるね。」

 

 セリエスさんは後ろ頭を掻いて、頬を少し赤くしているけど、嬉しそうだ。エストさんのことを誇りに思っているのがこれだけで伝わってくる。

 

 「しかし、銀ランクで英雄級に強いっていうと金ランクってのはどれほどなんだ?」

 「さあ?」

 

 ノブおじさんがよく知らないのは当然だけど、セリエスさんも即答でわからないと表明しているのはどういうことだろうか。まあ確かに金ランク冒険者なんて気軽に会える存在でもないし、実際ぼくも師匠から教わったことくらいしかわからないからあまり偉そうにはいえないのだけど。

 

 「ランクは冒険者ギルドのシステムなので金ランクというのは冒険者しかいませんが、金クラスの実力者というもの自体が一国に数人しかいない最上位の英雄となりますね。」

 

 不意に声を掛けられて振り向くと、きれいなお姉さん受付嬢ことマキリさんが背筋をすっとのばして立っていた。

 

 「大魔法使いアークゼスト様、ですよね。」

 「この国、カンバー王国で最も有名で、最もお強いのがそうですね。」

 

 ぼくがつい前のめり気味に言うと、マキリさんは苦笑して補足してくれた。

 

 「普通はある程度規模のある国であれば五、六人は金クラスがいるものなのですが、この国ではほかに魔法ギルドのデルゲンビスト様、そして王国騎士団長のダイモン様、このお三方しかいないのですよ。」

 

 仮に国同士の大規模な戦争になった場合でも、金クラスの魔法使いがいると一般兵が何人いても関係なく吹き飛ばされてしまう。だからこそそんな魔法使いが前へでると、金クラスの戦士職が差し向けられて、封じ込めあるいは倒されてしまう。

 

 つまり金クラスの英雄が最低限居さえすれば、そこは動かせずに一般戦力での消耗戦となり、国力が上の相手には勝てないし、下の相手に勝ったとして大きく消耗することになってしまう。

 

 こうした事情で金クラスの英雄というのは存在そのものが貴重なのだけれど、ぼくらが今いるカンバー王国は国力の大きさの割りにはその英雄の数が少ない、ということらしい。

 

 「お三方が金クラスとしてもさらに上位の、伝説的といえるほどの実力者なのでそれでも他国から戦争を仕掛けられるような心配はないのですが、だからこそお三方に対して良からぬ策を企んでいる周辺国もあるという噂は絶えませんね。」

 「そんな強いならそうそう手は出せないだろうが、逆に何か手段があるなら手を出す価値はあるってことか。強いからこそ挑むってのならともかく、謀略で排除しようってのは気に入らんなぁ。」

 

 ノブおじさんの感想はともかく、噂だとしても本当にそんなことになったら、それは他国からこの国が戦争を仕掛けられるということだからあってはならないことだと思う。

 

 「でもあれだけ常識はずれな母さんでも元銀ランクなんだから、金クラスだなんてそれこそ同格をつっこませるくらいしかありえないですよね。」

 「そうですね。現実的には各国世代交代で苦労するのが実情です。それが正に今の我が国の抱える不安要素なのですが。」

 

 デルゲンビスト様もご高齢だからなあ、だからこそニトさんが周囲から期待されているということにもつながるのだろう。

 

 

 

 その後もしばらく話をしていて、少し時間が経ってしまった。そろそろ切り上げてマキリさんに依頼を紹介してもらおうとしたところで、入り口からローブを着た背の低い金髪の女の子が入ってくるのが見えた。

 

 そしてその子、ニトさんがきょろきょろと首を振って見回すと、すぐにぼくと目があった。

 

 「バッソさん!ちょっとお願いがあって来ましたわ!」

 

 ニトさんのよく通る声は抜群に人目をひくようだ。つまり恥ずかしい・・・。

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