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剣豪エスト

 受けた依頼は町の近場の草原でのモンスター討伐で、特に数や種類の指定はなく、町の安全確保のために定期で出る依頼だった。

 

 草原に来るまでに少し話を聞いたけれど、このエストさん、セリエスさんが“恐ろしく”と形容するほどに高い身体能力を誇り、圧倒的な力で敵をねじ伏せるスタイルから“剣豪”と称される冒険者だったらしい。

 

 「よっしゃ、じゃあやろうか。」

 

 エストさんは分厚く幅広な鉄塊剣を片手で軽々と持ち、少し離れたところにいた狼型モンスター、グラスウルフを睨みつけている。

 

 ちなみにグラスウルフは草原にいる狼のモンスターで、森にいるフォレストウルフとの違いは草原にいること。つまり大体同じだ。

 

 「待ってよ、母さん、私も・・・。」

 「待たないね!うっらああぁぁぁ!!」

 

 雄叫びを上げてエストさんが跳躍した。砂煙が吹きあがってぼくもセリエスさんも咽てしまっている。ノブおじさんは一歩離れて難を逃れているけど・・・。

 

 ガァッ

 

 宙を飛んで突っ込んでくるエストさんへグラスウルフが吠え掛かる。

 

 エストさんは空中で剣を振り下ろし始め、そのまま着地、砂塵が爆発的に巻き起こった。

 

 噴き上がった砂が落ちると、剣を振り下ろした姿勢でエストさんが見え、当然というかグラスウルフの姿はなかった。なんて豪快な・・・。

 

 「こっちも来たな。」

 

 ノブおじさんは気負いなく言うと、こちらへ走りこんできていたグラスウルフ二体の間を、上半身を揺らすようにしながらすり抜けるようにして、駆け抜けた。

 

 そして、そのままグラスウルフは駆けながら消滅し、ぼくの足元に牙が二つ落ちて転がった。いつ斬ったかよく見えなかった、すごい。

 

 向こうの方でエストさんが立ち上がってノブおじさんを凝視している。目が怖い、あれは雑貨屋さんの迫力ではないと思う。

 

 

 

 しばらく四人で討伐を続けて、結構な数を倒せた。この依頼の時は成功報酬はなく、モンスターの落とす素材を割高で引き取ってもらえるのだけど、これならなかなかの収入になりそうだ。

 

 「いや、すごいね。ノブさんの方はギルドで見た時からなんとなく分かってたけど、バッソ君もやるじゃない。杖で石をがんがん叩いて飛ばすなんて、どっかの化け物じじいみたいだよ。」

 「ばけ・・?ロックシュートの応用は魔法ギルドのデルゲンビスト様に教わったんです。」

 「うげ、ホントにあれの教え子だったのか。」

 

 言いようはひどいけれど、何というか親しみがこもっているように感じる。

 

 「お知り合いなんですか?」

 「現役時代に、何度もね。」

 

 そうなんだ。けど考えてみたら、現魔法ギルド長と元銀ランク冒険者だ。拠点とする町が違っても接点があるのは不思議でもない。

 

 「しっかし、ノブさん、あんた何者?全く打ち合わずにひらひら避けて、斬りつけるなんて。一般人並みの身体能力とは聞いてたけど、例えじゃなくてホントにそれで戦うんだね。」

 「まあなぁ。身体強化は教わって試してみたことはあるんだけどな。俺が変わり種の使い魔だからか、強化しようとするとバッソの方にとんでもない負荷がかかるみたいでなぁ。」

 「え?そうだったんだ。そもそもできないんだと思ってたよ。」

 

 あれはかっこわるかったから、セリエスさんには言ってはいなかった。一度ノブおじさんの身体強化を試そうとしたときは、しようとしただけでぼくの全身の魔力が一気に消費しつくされてしまい、何の結果も得られずにただぼくが気絶しただけだった。

 

 ノブおじさんのケガを直したりだと、それなりに疲れる、くらいの消費でできるから、まだ一度もないけど、もしノブおじさんが戦いに敗れて消滅させられても、おそらくぼくの全魔力の半分ほどで再召喚できるはずだ。強化だけそうなるのは不可解なのだけど、試したうえでそうなのだからどうしようもない。

 

 ちなみに直したケガというのは、戦闘でついたものではなくノブおじさんが張り切って料理をしようとして失敗した時のことだったりする。

 

 「じゃあ、将来的にバッソ君が成長すればできる可能性があるってことかい?」

 「無理ですね。これは魔法使いとしての直感なんですけど、ノブおじさんはこの状態で完成され過ぎているから、上にも下にも現実的な魔力量では動かしようがないというか。」

 「じゃあ、現実的じゃない魔力量があればできそうってこと?」

 

 エストさんの質問に答えていると、セリエスさんから突拍子もないことを言われた。けれどこの突拍子のなさは面白いかも。

 

 「考えたこともなかったけれど・・・、そうだね、古代のマジックアイテムで常識外れの魔力を内包した物もあるって聞いたことはあるし、そういう伝説級のアイテムを補助に使い捨てればできるかも。」

 「それはそれで、見てみたいねぇ。」

 

 仮説を言っていると、エストさんが剣呑な目つきでノブおじさんを見ていた。

 

 「この状態でも面白そうだし、ちょっとだけ試してみるかい?」

 「「は?」」

 

 聞いたのはエストさん、呆けたのはぼくとセリエスさんだ。誘われた当のノブおじさんはげんなりしている。なんか展開がノルストさんのときと似ている気もするな。

 

 「無駄だろうに・・・。」

 「やってみて初めて分かることもあるって。」

 

 なんか、するすると二人が離れたところへ移動していった。もう手合わせすることに決まっているようだ。

 

 「ねぇ、バッソ君。なんなのこれ?」

 「さあ・・・。」

 

 ぼくとセリエスさんはただ見守るだけだ。何なんだろうこれ。

 

 でも無駄って言ってたし、さすがのノブおじさんでも分が悪いのだろうか。

 

 「じゃあ、いくよ!」

 「いつでも。」

 

 エストさんは両手で鉄塊剣を握りしめ、いかにも全身に力が満ちている様子だ。対してノブおじさんはいつものだらっとした構え、自然体といえばいいのだろうか。

 

 「っれあああぁぁぁぁつ!!」

 

 裂ぱくの気合いを発して、エストさんの足元の地面が爆ぜ、それ程の勢いをもってノブおじさんの方へと文字通りに飛んでいく。

 

 と、ノブおじさんが剣をゆっくりと振り上げながら、おもむろに後方へと、とんっとバックステップをした。

 

 「っちぃ!」

 

 舌打ちを発したエストさんは下がりながら振り下ろされるノブおじさんの剣のすぐ前で、地面を削りながら急停止した。

 

 「な?」

 「だねぇ、こうなるね。」

 

 二人とも、納得ずくというか、分かりきったことを確認したという風だ。

 

 「どうだったの?引き分け?」

 「いや、私の負けだね、多分何回やっても勝てないね。相性が悪すぎる。」

 

 エストさんはあっさり、完璧に負けを認めていた。けれど、どうもそれだけの話ではなさそうで、続けてノブおじさんも近づいてきながら口を開いた。

 

 「まぁ、手合わせとなるとな。本気となるとわからん、斬られる覚悟で突っ込んでくるこのエストさんを俺が一撃で殺しきれるか、とかそういう非常に殺伐とした話になる。」

 「お願いだから、しないでね。」

 

 冗談で返したけど、セリエスさんもエストさんに向かって頷いている。なんとなくこの二人は面白半分で殺し合いに発展しそうな怖さがあるよ。

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