赤髪の母娘
デルゲンビスト様から斬新なロックシュートを教わった後、次の日も魔法ギルドへ行ってニトさんと共に修行に励んだ。
そしてその後の数日は、薬草やモンスターの素材回収で小銭稼ぎはしつつも依頼は受けずに、基本ぼくの鍛錬時間とさせてもらった。一回目はたまたまうまくいったものの新しいロックシュートは見た目の豪快さのわりにすごく繊細な技術が必要で、ちゃんと身に着けるのにはそのくらいの時間はかかってしまったのだった。
そうして、何日かぶりに冒険者ギルドへとやってきた。
「あれ?あのセリエスさんと話している人・・・。」
奥の方の談話スペースでセリエスさんが、赤い髪の女性と話し込んでいる。気になったのはその雰囲気だ。
長さは短いが髪色はセリエスさんと同じ赤。装備もセリエスさんと同じような鈍色の金属鎧で、背中にロングソードを背負っている。
しかしそのロングソードはセリエスさんの分厚い剣よりもさらに、特徴的で目を引くものだ。セリエスさんのものは厚みが普通の倍ほどで重厚さがあるけれど、この短い赤髪の女性は厚みに加えて刀身の幅も倍ほどある剣を背負っている。もはや完全に鉄塊でしかない。
しかし、そういった装備品が似ている、ということではなく、纏う雰囲気というか一つ一つの動作や表情が似ているように感じたのだった。
「あ!あの二人だよ。あの二人がバッソ君とノブさんだよ、母さん。」
母親だったらしい。三十代くらいに見えるから似ているけど親子とは思わなかったよ。
「あ、えと、はじめまして。冒険者で魔法使いのバッソ・トルナータです。石ランクです。」
「その使い魔でノブです。」
「ああ!うん、今散々聞かされたよ。私はエスト、この子の母親で元冒険者だよ。」
なんというかすごく快活で気持ちのいい雰囲気の人だ。セリエスさんの母親と聞いてものすごくしっくりとくる。
「いや、それにしても、私も冒険者でそれなりやってたけど、完全な人間型の使い魔なんて初めてだよ。それに身体能力が一般人並みなのに剣士として強いだなんて、私の現役時代の元相棒みたいだね。」
「母さん・・・。」
エストさんは懐かしむような、寂しいような、何ともいえない微笑だったけれど、その言葉を聞いたセリエスさんは沈鬱そのものといった顔をしている。何かあった、ということなんだろうな。
「それで、エストさんは今日はどうしたんです?この町に住んでるわけではないようですが。」
「うん?私は娘の様子を見に来ただけだよ。普段は王都で夫と二人で雑貨屋をやってるのだけどね。」
「こうして母さんはたまに私の近況を見に来てくれるんだ。っていっても冒険者の近況だからさ、一緒に依頼か討伐に行くから母さんもこの格好なんだよね。」
うまく会話を進めてくれたノブおじさんのおかげで、重い空気は払しょくできた。
「よかったら、二人も一緒にどうだい?使い魔さんの剣技も見てみたいし。」
「あ、それいいね。よかったらどうかな?」
こちらとしては特に断る理由はないかな。目線をノブおじさんに向けると、一瞬目があってすぐに外れた。思うようにしろ、ということだ。
「うん、よろしくお願いします。」
「よし、じゃあばしばしいくよ。私も引退して長いとはいえ元銀ランクだし見る目は厳しいよ。まだ駆け出しとはいってもバッソ君が生半可な実力だったら、うちのセリエスは嫁にはやらないからね!」
「母さんっ!?急に何言ってるの!」
エストさんの嫁発言に、セリエスさんが取り乱して慌てている。顔を真っ赤にしてわたわたするセリエスさんは大変かわいらしい。
いや、そういうことじゃなくて、元銀ランクって言った?
このエストさん、元とはいえ紛れもない英雄クラスの実力者じゃないか。




