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マミー再生

 大量発生は別として出現自体は珍しくないスケルトンと違い、マミーはめったに確認されることはなく、そして非常に強いとされている。

 

 さらには個体差が大きいことも知られていて、石ランク冒険者のパーティがあっさり勝ったとか、金ランクの英雄が壮絶な剣戟の末に相打ちになったとか、戦闘例自体が多くないこともあってはっきりしたことがわかっていない。

 

 そして今回の様な杖持ちも、例にもれず個体差があるわけだけれど、強い場合の被害が戦士タイプとは雲泥の差であることが厄介だ。

 

 万が一、コイツが大規模魔法まで使いこなすような強力なマミーで、それがソルベまで到達してしまった場合は、考えたくもない事態が起こってしまうことになる。

 

 「何かのきっかけで埋葬されていた古代魔法使いのミイラがマミーとしてモンスター化して、そいつがさらにそこら中にある骨からスケルトンを生み出していた・・・?」

 「そんなことって、あるもんなのか?」

 

 ぼくが全くの推論で言うと、ノブおじさんは一旦近くまで戻って体勢を立て直していたゴラノルエスさんに視線をやりながら聞いた。

 

 「このマミーがスケルトンの発生源ってのは、そうだろうな。そこら中に魔力を注ぎまくって大量発生を引き起こしてたってことだろう。けどな、そうなるとこのマミーを発生させるだけの魔力はどこからだ?自然にっていうなら、マミーの前にこの遺跡はスケルトンだらけのはずだ。」

 

 何か局所的に魔力を発生させるような、古代のマジックアイテムでも埋まっていたのだろうか。

 

 ぼくらが話している間にマミーはその姿を完全に現して、残るスケルトン達の向こう側でこちらを睥睨している。戦力を推し測っているような雰囲気にも見えて、すごく不気味だ。

 

 「ゴラは残りのスケルトンを何とかしてくれ。それでバッソはあいつが魔法を使えないようにかく乱とかできそうか?」

 

 ノブおじさんが聞いてきたけれど、かく乱だけならマミー相手でもなんとかなりそうではある。

 

 「あいつの強さにもよるけど、たぶん大丈夫。」

 「俺も早めにスケルトンをなんとかするから、抑えてくれれば無理はしなくていいぞ。」

 

 ゴラノルエスさんはここにきてもやはり頼もしい。それにノブおじさんも気負いはなさそうだ。

 

 「まあ人型だしなんとかなるって。怖いのは魔法をばらまかれることだからそういうのだけ防いでくれりゃあいい。」

 

 なるほど、無差別広範囲攻撃ができそうな大規模魔法が使えないようにすればいいのか。

 

 「わかったよ。」

 

 ぼくが頷くと、ノブおじさんとゴラノルエスさんもそれぞれ頷きあうと、弾かれたように飛び出していった。

 

 すぐにスケルトンの群れまで到達したゴラノルエスさんは先ほどと同じように暴れまわり、正に鎧袖一触の様相だ。

 

 そして、そのゴラノルエスさんの影にうまくまぎれるようにして、ノブおじさんが急速にマミーへの距離を詰めていくのが見えた。

 

 おそらくマミーもノブおじさんの接近に気付いたのだろう、どこを見ているのかわからないけれど、杖を構えて魔法を準備しだしたようだ。

 

 妨害する程度なら火属性でも小規模で十分だから使えるかな。“火”“分散”“絡む”と準備してマミーの周囲へと意識を集中する。

 

 「“火の粉よ漂って”」

 ブ、ブァァァッ!

 

 空中に浮き出るように発生した火の粉が、意思を持つようにマミーへと絡みつくと、乾いた体のあちらこちらがほんの小さく炎上した。大した攻撃力のないただの火の粉ではあるけれど、アンデッド系モンスターの本能のようなものなのか、マミーはくぐもった呻き声をあげて取り乱したように大げさに振り払おうとしている。

 

 「よし、うまくいった。」

 

 マミーの持つ杖へと先ほどまで集中し始めていた魔力が拡散したのを確認して、ぼくは小さく喜んだ。狙い通りだ。

 

 そしてその隙に、スケルトン達の隙間を縫ってノブおじさんがマミーへと到達していた。

 

 「よし、いいぞバッソ。」

 

 言いながら最後の一歩を加速したノブおじさんは、ロングソードで斬り上げながら、マミーの横を通り過ぎて行った。

 

 グゥア

 きんっ!

 

 ここでマミーは想像以上の反応を見せてきた。緩急をつけて不意に斬りかかったノブおじさんの攻撃に対して杖を振り上げて、すれ違いながらの斬りつけをその杖で受けたようだった。

 

 そして、その杖に魔力を集中させていく。急激に大量の魔力を溜めるその様子は不穏というか危険な感じ、おそらく周囲一帯を吹き飛ばすような魔法だ。

 

 タイミングを窺いながら準備していた構成は、“雷”“収束”“飛ぶ”、ちょうどこの場に最適の魔法だ。杖をまっすぐマミーへ向けて、さらに集中力を高める。

 

 「“雷よ貫いて!”」

 ばぢっ

 

 声に力が入って、力んでしまいそうになったけれど、ギリギリのところで冷静さを保って集中できた。

 

 放った魔法は細い閃光となって、スケルトン達の間を走り抜け、狙い違わずにマミーの頭を打ちぬいた。

 

 ブゥァ

 

 それはマミーにとって大きなダメージではなかったようで、今度は杖に集まっている魔力を散らすまではいかなかった。けれど頭を雷に打たれたマミーは一歩ぐらつき、一瞬だけその動きを止めた。

 

 「頼もしいねぇ。」

 

 すでにマミーへと振り返っていたノブおじさんは、ぐらつくマミーのすぐ手前で両足を踏みしめ、ロングソードを両手で横倒しに持ち上げると、左から右へと横一線に振りぬいた。

 

 次の魔法を準備しつつも、手に汗を滲ませながら様子を見ていると、ぐらりとマミーの頭だけが傾き、そのまま地面へと落ちきる前に胴体も崩れ落ちていった。

 

 アンデッド系モンスターは素体となる体があるために、倒しても消え去らない。だから他のモンスターと違ってちゃんと倒せたかの確認には注意が必要だけど、スケルトンでもマミーでも頭を落とせば仕留めることができる。

 

 だからといって普通は狙ってぽんぽん落とせるものでもないのだけれど。

 

 「でぁぁぁ!」

 

 そしてもう一人のぽんぽん落とす人、ゴラノルエスさんが雄叫びを伴ってノブおじさんの近くへと走りこんできて、周囲のスケルトンを一斉に吹き飛ばした。一応補足すると、やはり頭と胴体は別々に。

 

 そして見渡すと、なんとあれだけいたスケルトンは一体残らず動かなくなっていた。

 

 マミーが出てきたときはどうなることかと焦ったけれど、何とか切り抜けることができたようだった。

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