反省会
「お見事でしたわ。」
言葉とは違い、ニトさんは非常に不満そうな表情だし、こちらを見ていない。
「話に聞いていた以上じゃのう。相手が派手な魔法を準備している間にけん制と止めの二手で詰みとは。」
ボードゲーム用語で非常に戦略的であったかのように褒められたけれど、実際そんなことはないように思う。
「ノブおじさんがニトさんの使い魔を完璧に抑えてくれていたので、あとはもう発動スピードの勝負でしかなかったですよ。」
「その思い切りの良さが正に冒険者的思考ですね。それに補助動作も詠唱もなしに速く正確な魔法を構成するなど、もはや熟練魔法使いの域でした。」
「いや、始めにスパークを放つときに補助はしておったな。しかしあれこそがまさに実戦的じゃった。補助動作無しに拘る者もおるが、必要に応じて使い分けることこそ技術じゃな。」
ノルストさんとデルゲンビスト様に好意的な論評をされて、照れくさいけれど誇らしい気分だ。師匠の下での八年間の修行は魔法ギルド長から褒められるほどのものとなっていたようだ。さすが師匠教え上手。
これ二回目だな。
「あたしと変わらない年頃に見えますのに、なんですの!」
この状況にやはりイラついていたらしいニトさんが声を大きくして睨みつけてきている。
「ニトさんはまだ修行中みたいだし、使い魔召喚が許可されているだけでもすごいですよ。」
「それを今バッソさんに言われても嫌味だわ。四年も頑張ってきて、同年代では圧倒的だと言われてますのに・・・。」
驚いた。修行中とは思っていたけれどぼくの半分の修行歴だったなんて。
「ぼくは八年修行してやっと使い魔や戦闘魔法も許可されたわけだし、戦闘の駆け引きに関してはぼくは、ほら冒険者だし。」
「ニトよ、この町で圧倒的だと言われておってもバッソ君のような者は世界中におる。自分が優れていると思った時点で成長は止まり、結果劣ってしまうのじゃよ。」
「まあ、普通は十年かけてやっと見習いを脱するのだから、四年でそこまで辿り着いているニトは実際すごいよ。八年で基礎が熟練の域にあるバッソ君も驚異的だし、私からするともうどちらもすごいとしか。」
三人から諭されたり褒められたりしたニトさんは、どう反応すればいいのかわからないといった表情で、口許をもごもごさせている。
「おぉ、よしよし、おまえ良いやつだな。」
ナァァ♪
そして横目で見るとノブおじさんはニトさんの使い魔である白いトラと打ち解けている。お互い満更でもなさそうだ。
「トラマル・・・。」
半分泣きそうな声でニトさんが言うと、ノブおじさんと戯れていた使い魔、トラマルはニトさんを慰めるようにすり寄った。いや、取り繕っただけ、かな?
「・・・っぐす。けれど、お師匠様がバッソさんを呼んだ理由はわかりましたわ。あたしの心は傲慢さで曇っていたようですし、それを抜きにしても学ぶことは多いようです。」
「うむうむ。自らの増長を認めることができるのは立派なことじゃ。もう少し実戦的な魔法の使い方を覚えたら、バッソ君に付いて冒険者の仕事を手伝うといい。」
「へぇ!?聞いてませんけど!」
突然言われても困る。ぼくは駆け出しで誰かの面倒を見るような余裕はないし、責任を持てない。
「もちろんニトが自力で冒険者登録を出来るほどになってからの話じゃ。迷惑を掛けるような内はわしが許可せんしの。」
「まあ、確かに冒険者になってということなら、ぼくがどうこう言えたことでもないですけど・・・。」
そう言って、ノルストさんを見ると無表情で頷いていた。賛成ではないけれど、別に反対もしない、といった感じだ。
「デルゲンビスト様が提案なされて、この妹が自分で決めるのなら私が何か言える訳もないでしょう。」
訳もないんだ・・・。
「あの・・・、バッソさん。あたし頑張って魔法も冒険者のことも勉強しますわ。ちゃんとうまくなってから追いかけますから、その・・・。」
「あぁー、うん。わかったよ。その時は一緒に行こう。」
なんか、負けてむくれてから反省してしおらしくなるニトさんが、どんどん幼く見えてきた。そのせいでいつの間にかぼくとニトさんの口調が逆転してしまっているし。
こうして、冒険者になれたらという条件付きではあるけれどニトさんとパーティを組むことを約束してしまったのだった。




