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意外な謝罪

 しばらく待つと、ノルストさんが一人でやってきた。相変わらず立派なローブを着ている。

 

 「この間は迷惑をかけました。」

 「おう、そうだな。」

 

 ノブおじさんのあんまりなリアクションに、ノルストさんは頭を下げたまま止まっている。

 

 「あ、いや、それはもうよくて。今日はフタバやミツバを買い取ってもらいたくて。」

 

 慌てて間に入って言うと、ノルストさんは頭を上げて、眼鏡の位置を直しながら目を瞬いている。

 

 「それは、正直助かりますが・・・。フタバは三シルバー、ミツバは十五シルバーでどうですか?」

 「え?そんなに高く・・・。どっちも十株ずつですけど大丈夫ですか?」

 

 思ったより高い値段だ。前回のことで気を使われているなら次から売りに来づらいな。

 

 「中間の店を通さず直接売りに来てもらえるなら、こんなものです。あと数はそれで問題ないので大丈夫です。」

 

 というか、ぼくは商家の息子なのにこういうことを知らなすぎる気がしてきた。両親の好意に甘えて魔法修行ばかりしてきたからなあ・・・。

 

 「さて、そちらの用が済んだところで、お願いがあるのですがよろしいですか?」

 「うえ?」

 「あぁ、魔法ギルド長殿が言ってた件か。」

 

 急に言われて変な声が出てしまったけど、ノブおじさんは覚えていたようだ。ぼくは言われて思い出した、正式な謝罪がどうとかいうやつだ。

 

 「そうです。お二人がよければ今からお願いしたいのですが・・・。」

 「バッソ?」

 「えと、じゃあ今から行きます。」

 

 ノブおじさんはこちらをみて確認するように呼び掛けてきたから、ぼくの方で判断しろということだと思う。

 

 

 

 了承したということで、すぐにノルストさんは先導して歩き出した。さっきノルストさんが来たのとは逆、左手側の扉だ。

 

 開けると通路の突き辺りには窓が見えて、意外と明るい。そして通路内に二つある扉のうち、奥側の前に立つとノルストさんはノックをした。

 

 「デルゲンビスト様、今よろしいでしょうか?」

 「どうぞ。」

 

 中からはすぐに、張りのある声が返ってきた。

 

 「失礼します、冒険者のバッソ君と使い魔ノブさんをお連れしました。」

 「おお!そちらから来てくれたんじゃな。すまんのぉ。」

 

 中では重厚な木造りのデスクで、デルゲンビスト様が分厚い本を読んでいたようだ。

 

 こちらを確認すると本を置いて、手前の応接スペース、テーブルを挟んで向かい合うソファ、をぼくらへ勧めてデルゲンビスト様自身も奥側のソファへと座った。

 

 「今日は薬草類を売ろうと思って来ていたんです。」

 「そうか、ノルストはそういったツテが乏しいからのう。ぜひともひいきにしてやってくれ。」

 「デルゲンビスト様・・・。」

 

 デルゲンビスト様の座るソファの隣に立ったノルストさんは、複雑な表情だ。同じようなことをさっきも言われたばかりだからなあ。

 

 「さて、まずは改めて謝罪しよう。バッソ君、それからノブ君、我が魔法ギルドから出向いたギルド員が迷惑をかけたことについて、申し訳なかった。これは魔法ギルドとしての謝罪と受け取ってくれてかまわん。」

 

 ノルストさんも、黙って頭を下げている。今日は突然薬草を売りに来たというのにちゃんと対応してくれたし、この人は冷静であればまともな人のようだ。

 

 「はい、お受けしました。ぼくらとしてはこれでもう問題ないです。」

 

 言いながらちらとノブおじさんを見ると、小さく頷いてくれた。

 

 「いや、待って欲しい。実は言葉だけではなくもう一つあってな。」

 「?」

 

 なんだろう、お金とか物とかは恐縮してしまって困るんだけどな。

 

 「こう言っては少し傲慢かもしれんがな、魔法ギルド長であるわしがバッソ君に稽古をつけようかと思うておる。どうじゃな?」

 「えぇえ!?直々にですか?ぼくは魔法使いとして冒険者登録されたばかりですよ。」

 

 デルゲンビスト様は傲慢と言ったけど、とんでもないことだ。この方は支部長ではなく歴とした魔法ギルド長、この国の魔法使い組織の頂点だ。

 

 「ふむ、こちらの都合も少しあってな。わしの弟子というのは数多いが独り立ち前の修行中の者は、実は今一人だけでの。」

 「あぁ、なるほど。」

 

 ノブおじさんが声に出して頷いている。ぼくも何となく予想はついてきた。

 

 「そちらの予想通り、同年代の“使える”魔法使いを見せておきたいのじゃよ。才能が有って努力もするがどうも驕ってきておるようでのう。」

 

 魔法ギルド長の現状唯一の弟子、そしてその魔法ギルド長から認められるほど才能もあるとなると、そうなってしまうのは当然なんだろう。

 

 ぼくなんかを見ても逆に増長してしまうかもしれないけれど、ノブおじさんもいるし、ぼくだって少ないながら冒険者として実戦も経験している。何か感じさせることはできるのかもしれない。

 

 「あの、ありがたい話なのでぜひ受けさせてください。」

 

 ぼくが言うとデルゲンビスト様は目を細めて満足そうに頷いていた。

 

 しかしノルストさんは微妙に苦い表情だ。うらやましい?いや少し不安そうな、どういうことなんだろうか。

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