転生①
初投稿です。
完全に趣味なので拙い文章だと思いますが、生暖かい目で見ていただけると幸いです。
子供の頃は、好きな仕事になんでも就けるって思っていたんだ。
いずれは世界に名を残すなんて思っていたんだ。
世界の中心に立つ、特別な存在だなんて思っていたんだ。
でも、現実は確実に、そして残酷に真実を告げる。
好きな仕事より、今就ける仕事に。
不確かな未来の名声より、今の生活に。
中心ではなく、集団に。
魔法なんて存在しない。
魔王も、勇者も存在しない。
今を生きるために、夢は壊されてゆく。
* * *
夜の街を歩く。
最寄駅の改札を出て、すでに明かりを失った建物が静かに見守る中、家へ帰る。
俺の名前は神崎 静。
普通の会社員だ。
……いや、オタクだから普通とは言えないか。
理数系の学校を出たけれど、元々パソコンは好きでも数学は苦手だったので、専攻と関係のない職場に就職をした26歳だ。
彼女なし。家族とはもう連絡を取っていない。名前の通り、とにかく静かに過ごしている。
今日も特になんの変哲もなく1日が終わった。
明日は休みなので、眠くなるまでラノベでも読もう。
昔から妄想癖というか、ファンタジー世界に自分がいたらどうかなーとか思っていたので、最近の異世界転移とか転生系のラノベって面白いと思う。
こんな感じだから彼女も作る気が起きないんだけどね、ええ。
SNSを見れば、懐かしい友人が異性と撮った写真を載せている。
同級生がどんどんと結婚していく中、俺は独り身。
……無念。
何も変わらない街、変わらない光景、変わらない生活。
異世界なんてない。空から女の子は降ってこない。だれか這い寄ってくるわけでもない。
どこか諦念にも似た感情で見渡す。
また明日も、明後日も、1年後も変わらないんだろうな。
ーーそんなことを考えていたら、凄まじい衝撃とともに、俺の意識は消えた。
最後に見たのは走場灯ーー
……ではなく、哀しげで、そして少し嬉しそうなーー女性の顔だった。
* * *
「ーーください」
何だろう。誰かが「自分」を呼んでいる。
「ーーきてください」
どこに来いと?
「起きろって言っているんですっ!」
「はいっ!おはようございます!」
……布団の上から思いっきり叩かれた。
目の前には少女の顔。
彼女の名前はミリアリア。愛称ミリィだ。今年で確か12歳だったはず。
彼女は我が家のメイドの中で最も若く、自分が生まれた頃から専属になっている娘である。
フリル付きのメイド服を着ており,ぽわぽわの栗色の髪の毛は彼女のトロンとした垂れ目と相まって,柔らかな印象を与える。さっき自分を叩き起こしたとは考えられない。
「早く起きてくださいよレオン様?起きてくださらないとワタシが怒られてしまいます。そうなれば腹いせにレオン様をいぢめちゃいます」
……このメイドめ、いつもこれだ。
もちろん子供相手なので手加減しているのだろうが、ひたすら擽りまくるというのは絵面が悪いだろう。
でも、両親ともにそれを咎めない。
これ以上彼女からお小言をもらうと、両親に話が言ってしまうので素直に従う。
すでに朝日が昇り、窓から見えるのは素晴らしいほどに晴れ渡った空だ。
軽くストレッチをしてから、ベッドを降りる。
すでにミリィはクローゼットから服を出して、着替えの準備をしてくれていた。
「も〜。せっかくの誕生日なんですから、早くご両親に挨拶に行ってくださいよ?」
そう言って、急かしてきた。
「わかったわかった。顔洗って準備したらすぐに降りるよ。だから先に行っておいて」
そう返す自分を見て、彼女はお小言を止めて、「食堂で待ってますからね」と言って退出してくれた。
さて、彼女も出て言ったことだし。
「なんで転生してんのーーーー!?」
部屋に自分の絶叫が響いた。
日本人である「自分」こと「神崎 静」は。
「レオンハルト・フォン・ライプニッツ」として、異世界に転生してしまったようです。
まめなタイプではないのですが、定期的に掲載したいと思います。少なくとも月1回は。
感想などございましたら、よろしくお願いいたします。
なろうの皆様って、かなりの文字数書かれていますよね……
あんなに書ける気がしないのですが、頑張ります。